|
カテゴリ:ばくばく冒険小説
ロジカルなホラー作品で有名な貴志祐介の中編サスペンスを読んだ。
○ストーリー 作家・安斎が目を覚ますと,彼は吹雪の別荘に取り残されていた。来た時に利用した車は,一緒にいた妻とともに姿がなく,電話も部分的に壊されていたため外部に発信は出来ない状態だった。困惑する安斎は別荘の中にスズメバチがいることに気付き驚愕する。彼は一度ハチに刺されていて,もう一度刺されるとショック死をする可能性があるのだった。果たして安斎は,この罠から逃れることは出来るのか? --------- 作品タイトルと裏表紙の紹介で,主人公がスズメバチと戦うサスペンスであることは分かる。これはじわじわと敵が迫ってくるのかと思っていたら,冒頭数ページでもうハチが登場する。 そこからはスズメバチ来る,主人公倒す,主人公油断する,スズメバチ来る・・・の繰り返しが続く。いつもの貴志祐介作品だと,”主人公油断する”のシークエンスが無いのだが,これがあるので読んでいて呆れてしまう。もちろん自分がこの立場に陥ったら,ここまで精力的に動けるとは思えないけれど。 細切れで挿入される回想シーンでも安斎はあまり良い性格だとは思えないし,”油断をする”ことでピンチになるので,もう1つ主人公に共感出来ないまま,物語は進む。 --------- 子供のいない夫婦とは思えないほど大量に小物があり,それを利用してスズメバチに反撃を試みるのはひじょうにワクワクする展開だった。不自然に捨てていないものがあり,それらを組み合わせて主人公は戦うのだ。 ただし,ほとんどが空振りに終わるのと,スズメバチの総数が分からないので,珍しく効果があっても勝敗のバランスが最後まで見えてこないので,どうも盛り上がりに欠ける気がした。 --------- そして一番の欠点は,唐突などんでん返しだろう。えっ?これまでの緊張感は何?と混乱をしたまま,ずるずると物語は終わってしまう。 物語の設定は面白いのだが,それを上手く活かし切れないまま進み,その焦りからか結末をヘンにひねってしまった,とそんな気がする作品だった。 --------- 貴志祐介の作品はすべて読んでいるが,これままで間違いなくワーストな作品だ。 次回作に期待だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.01.09 16:06:30
コメント(0) | コメントを書く
[ばくばく冒険小説] カテゴリの最新記事
|