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カテゴリ:きらきらポストモダン推理
木下半太のホラー〈GPSシリーズ〉の第2作を読んだ。
○ストーリー 鎌倉へ出張することになった京都市役所心霊相談課(GPS)の石松凛花と柳楽大吉は,鎌倉市役所GPSと協力して連続している不審な事故の調査にとりかかる。だが開始の翌日,鎌倉GPSの担当は交通事故で入院する羽目になる。凜花と大吉は,京都から駆け付けた長坂の協力を得ながら,鎌倉に巣食う鬼を退治することになる。だが? ---------------- このシリーズは,木下半太作品としてはひじょうに異質な印象を受ける。 舞台劇的な掛け合いの面白さ,そして意外性に満ちた展開のサスペンス,これが木下半太の魅力だと思う。それなのに,この作品にはどちらも欠けている。 主人公の石松凜花と柳楽大吉の2人には,コンビ的な相性の良さはあるはずなのだが,大吉は凜花に片思いをしていて,凜花には長坂という同棲相手がいる,という設定のおかげで,この2人の関係はどこかギクシャクしている。おかげで会話が転がっていかない。 また幽霊,鬼,超能力者と,超常現象が平気で続き,またその現象をロジカルに説明することがされないので,フツーの意味のサスペンス要素が消えてしまう。ピンチに陥っても,読者は主人公と一緒にハラハラすることはない,良く分からない現象で救われるか,救われないかなので,共感する部分がないのだ。 まるで木下半太の名前を借りて別人が書いているような,そんな違和感を感じる。 ---------------- シリーズ第1作の「GPS: 京都市役所 魔性の花嫁」を読んでから1年が経過していたので,あまり内容を覚えていなかった。それなのに,京都のバーや,謎の宗教集団が,解説もなしに登場するので,ひどく混乱してしまった。 その不親切の上に,今回の物語は大吉たちの鎌倉市役所への協力,鎌倉の鬼退治一族の少女の冒険,謎の宗教集団の暗躍と,複数のストーリーラインが交互に語られ,物語が分断されるので,物語世界への集中力が途切れ,共感が生まれない。 さらに鎌倉市役所GPSは崩壊,鬼退治少女は家族を失う,宗教集団は謎のまま,と,スッキリするポイントが1つもないので,読んでいて喜びは感じられなかった。 何を目指している作品なのだろう?まるで同人誌作品だ。 ---------------- せめて表紙が普通なら救われるのだけれど,「ちゃお」のような作風のアニメ的なイラスト。 木下半太ファンの信念を試そうというかのような,良いところが1つもない作品だ。ある意味スゴイ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.07.27 22:04:39
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