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カテゴリ:きらきらポストモダン推理
木下半太のホラー〈GPSシリーズ〉の第3作を読んだ。
○ストーリー 移住を前提に沖縄に行った京都市役所心霊相談課(GPS)の石松凜花は,ゆれる気持ちのまま鎌倉で出会った少女・奈々を発見する。一緒に〈玄心教〉を倒すために,凜花と奈々は協力体制を取る。その一方で連続殺人犯が沖縄で発見され,状況は騒然とするのだが? ---------------- 鎌倉を舞台にしたシリーズ第2作でも,様々な人とカネの流れが出てきたが,`そうしてもきちんと把握出来ない。京都,鎌倉と,心霊現象が多そうな土地を舞台にしてきたが,リゾート地・沖縄でも同じノリで進められても違和感がある。 これまでの2作と同じように,シリーズを通じての敵の存在がはっきりしないので,全編を通じて必然性がモヤモヤしたまま終わってしまった。 ---------------- 主人公・柳楽大吉は,仕事を辞めて沖縄に移住をしたはずの先輩・石松凜花に乞われて沖縄へと飛ぶ。明らかにベタ惚れなのだが,凜花側は全く気付かないという,小説らしい設定となっている。 知力・体力も無い大吉の唯一の利点は,高い霊感の高さで,行く先々で幽霊と意思の疎通が出来ることだ。この作品でも,サッカーのエースだった少年を味方につけて,事件へと進む。 これまでのシリーズの流れは進展しているのだが,この短編で登場したサッカー少年の幽霊の視点で語れるパートが半分以上のため,見えてくる展開はひじょうに少なくてイライラする。 このままのペースでシリーズが進むようでは打ち切りを含めて,悪いことばかり起きるような気がしてならない。 ---------------- 作品の後半は,京都府警の刑事たちの化かし合いが語られる。悪人同士の騙し合いとなり,木下半太ファンとしては切れ味のある流れに,待ってしましたと喜んでしまう。けれども一方で,シリーズの進展と違うところでページが費やされる不満感は隠せない。 騙し合いでは生き生きとしていた筆が,シリーズの流れを描く際にはさっぱりと冴えなくなるのは,先の展開を準備できていないからだろう。 縛りがあると作品が上手く書けないのは,プロとしては失格だけれど,ファンとしては応援したい気持ちが強くなる。 ---------------- 相変わらず,木下半太ファンの気持ちを試すような,自爆上等な作品だが,これまでと同じ仕様で発刊されている。 早いところ,大量の未解決の伏線をきちんと回収してもらいたいものだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017.08.16 22:54:52
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