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国土交通省が熊本県相良村に建設を計画している川辺川ダムについて,蒲島郁夫県知事は9月11日,県議会冒頭で「現行のダム計画を白紙撤回し,ダムによらない治水計画を追求すべきだ」と建設反対を表明しました。
ダムは国土交通省が計画しているもので,知事の同意が必ずしも必要ではありませんが,河川整備計画策定では知事からの意見聴取が定められています。 今回,多方面から意見を聞き判断した知事の発言は重いものがあり,ダム中止へ向けた大きな一歩が開かれることになります。 知事は「人吉・球磨地域に生きる人びとにとっては,球磨川そのものがかけがえのない財産であり,守るべき『宝』」だと強調。「住民独自の価値観を尊重することによって,人や地域は輝き,真に豊かな社会が形作られる」としました。 国土交通省には,ダム建設については熱心に研究・開発する一方,「『ダムによらない治水』の努力を極限までおこなっていない」と批判しました。 また,ダム問題に翻弄されてきた水没予定地の五木村については,知事自身が本部長となって「夢のある新たな五木村振興計画策定」に取り組む決意を表明しました。 この知事表明について,川辺川利水訴訟弁護団長の板井優弁護士は「ダムによらない治水を国に求めたもので県民,流域住民の声そのもの。国もこの意見を重視すべきである」と語っています。 無駄な公共事業の典型として,全国的な注目を浴びてきた熊本県川辺川ダム建設問題。 今年3月にダム建設について「中立」の立場で初当選した蒲島郁夫熊本県知事。 知事就任後に設置した専門家や学者などでつくる有識者会議は8月に,「ダムはもっとも有力な選択肢」とする一方,「ダムをつくらずに対応する方法もありうる」と,両論併記型の見解を発表し,知事見解が注目されてきました。 今回,県議会で傍聴した「子守唄の里・五木を育む清流川辺川を守る県民の会」の中島康代表は「国にダムなしの治水の要求をしているのは全国的にも例がないのではないか。住民,漁民の力があったから,この決断になったと思う」と語ったように,日本一の清流を孫子まで残したいという県民の声が知事に決断をさせたものといえます。 また,建設予定地の相良村の徳田正臣村長が8月29日にダム反対を表明し,「最大受益地」といわれる人吉市の田中信孝市長が9月2日「白紙撤回を」と相次いでダム反対を表明したことも,知事表明を後押しした「世論」になったといえます。 もともと,川辺川ダムは1966年に治水を目的に建設省(現国土交通省)が計画を発表したもの。川辺川ダムの水を利用する農林水産省の利水事業は,2003年5月福岡高裁で農民が勝訴,判決が確定。農林水産省は2007年1月,利水事業からの撤退を表明。 同年6月発電の電源開発も撤退を表明,多目的ダムとしての計画は頓挫しています。 しかし,国土交通省だけはあくまでダム建設を捨てていません。この時代遅れの発想を断念させるまで,たたかい続ける必要があるのです。 【参考】川辺川ダム計画 1966年に建設省(現国土交通省)が球磨川最大支流の川辺川(熊本県相良村)への建設計画を発表したもの。1976年には,治水,利水,発電などの多目的ダムとして総事業費350億円で出発しましたが,利水,発電ともに事業者は撤退を決めています。 今年8月に国土交通省が発表した総事業費は3,400億円へと,約10倍に膨れ上がっています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年10月24日 23時39分25秒
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