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2005.10.09
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カテゴリ:連載小説
黒沢さんの家に新しい住人が増えた。犬でも猫でもない。学生の下宿人を置くことにしたのだ。下宿人を置くのは初めての事である。春風書房のおばあちゃんが、親戚の子が学生寮をでたいといっているので、目の届く近くに下宿させたいのだがと黒沢さんに話したのだった。春風書房のおばあちゃんは黒沢さんの家は部屋数があるのに、一人暮らしなのを知っていた。年頃が近いので近頃とみに親しくしていた。黒沢さんは少し迷ったが、下宿人を置けば、夜のうちに捨て猫や捨て犬をする人も減るだろうとおもった。近頃、捨て犬や捨て猫をされることが多くなって、全部飼う事は到底できなくなっていた。今にも死にそうな病気の犬や猫に限って引き取ることにして、あとは役場に引き取って貰っている。役場に引き取られた動物がどのような運命を辿るのかは黒沢さんも知っている。結局殺生の責任を押しつけられいるのだった。心が痛むのは自分一人だ。捨てた飼い主は黒沢さんに預けたのだから殺生したことにならない、と思うだろう。もし仏罰が下りるとしたら黒沢さんに下りるのだ。黒沢さんは宗教をもっていない。信念をもって生きていれば神や仏の助けはいらないと思うからだ。しかし、信念があっても犬取りにひきづられていくのを見るのはとても辛い。Bを引き取ったのも偽善かもしれない。と時々思う。一人暮らしの家に他人を置くのは気詰まりかもしれない。だが、下宿というのは金銭の介在した一種の取引、契約であり、情がからまず、気楽かもしれない。それに猫や犬より、人の方が話もできて、楽しいかもしれない。下宿人の依田時雄が九月になって黒沢さんの家に来た。黒沢さんは玄関の横の客間を時雄に開け渡した。トランク一つと白いビニールのギターケースを持って身軽な引っ越しだった。後の時雄の荷物は、本が少々、布団包み一つ、柳行李が一つ。それはチッキで駅につき、リヤカーを借りて運べば終わりだった。黒沢さんは客間に小さな本棚と勉強机代わりの座り机を置いた。時雄は格別喜ぶでもなく、「どうも」と一言言った。その時の時雄は白いシャツに白いズボン、白ソックスに白い革靴を履いていた。テレビに良く顔を出す学生服を着た若い歌謡曲の歌手に似ていた。時雄はぶっきらぼうに見えるが、清潔感はあった。まあ、今時の若者はこんな物だろうというのが、黒沢さんの第一印象であった。

 黒沢さんの家は東西に伸びた細い路地の北側に面している。日当たりは悪いが門と玄関のあいだにほんの五十坪程の庭があり、椿や青木などの緑用樹、大きなヒマラヤ杉等の庭木が植えられている。その間に雑然と紫色の花の咲く草木が植えられている。日の当たらない大きな木の下は緑の苔がビロードのように生えていた。門から玄関まで飛び石がS字様に続き、朝と夕に二度日があたるのでそこだけが乾いている。玄関の右横に出窓のついた部屋があり、その出窓から時雄の新しい住まいが覗ける。日当たりが悪くてすまないわね。でもここが一番いい部屋だからと黒沢さんが言うと、時雄はきょろきょろと辺りを見渡し、はあと言った。とにかく口数が少ない。話し相手になると思ったのは間違いかもしれなかった。





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Last updated  2005.10.09 07:41:24
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