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私:今月の佐伯氏の「異論のススメ」は、日銀の黒田東彦総裁の続投による「異次元的」な超金融緩和の続行問題にふれている。
アベノミクスは、GDPは40兆円以上増加し、求人倍率は26年ぶりの高水準で、企業業績は好調、株価も上昇、戦後2番目の長期的好景気が続いていて、外国人観光客は急増し、大都市にはホテルが続々建設されている。
表面的にみれば大成功であると佐伯氏はいう。
A氏:しかし、かつてないこれほど大規模な経済政策をうってもこの程度しか経済が浮上しないともいえると佐伯氏はいう。
マネタリーベースを2年で2倍に増やし、マイナス金利まで導入するという超金融緩和を行い、100兆円に及ぶ財政政策をおこなっている。
しかも、国債を買い支えることで、事実上、日銀が政府の財政をファイナンスするという「禁じ手」に近い政策までとっている。
それにもかかわらず、この程度しか経済が浮上しない。
デフレは脱却しつつあるが、当初の2年で2%のインフレ目標はとても達成されず、成長率も期待されたほどではない。
賃金もさして上がっていないし、地方経済も必ずしもよくはなっていない。
佐伯氏は、そもそも今日、経済政策は本当に有効なのだろうか、何かもっと重要なことがその背後にあるのではないのだろうかと疑念を提起している。
私:日銀のいわゆるゼロ金利政策はもう20年ほど続いているが、その間、量的緩和政策もあって、明らかにオカネは市中に流れている。
そして、たとえば、家計の保有する金融資産はこの20年間で1・5倍になり、今日おおよそ1800兆円の資産が積み上げられており、しかも、その約半分が、現金か銀行預金で保有されている。
それは、いかに市中にオカネが流れ込んでも、人々は、それを将来にそなえて貯蓄してしまうので、消費はさして伸びないし、背景に人口減少・高齢化社会の進行がある。
こうなれば、将来の市場の拡張は期待できないから、企業も積極的な投資を控える。
つまり、どれだけ金融緩和を行っても、オカネはなかなか企業の投資には結びつかず、結果として、そのカネは、金融市場へ流れ込んで、一部は国債に向かい、一部は投機的に使われ、これほどの財政赤字なのに国債価格は維持されており、株式市場はバブル的様相を示している。
この事態から言えることは、少々の異次元的な経済政策によってさえも、経済を成長させることは難しいということだと佐々木氏は指摘する。
ゼロ金利が20年も続くということは、いかに資金需要が低下しているかを示しており、それは、将来へ向けての企業の投資の見通しが悪いということであり、今後の大きな経済成長が期待できない、ということになる。
A氏;佐伯氏は、戦後の先進国の経済成長率は、明らかに傾向的な低下を示しており、とりわけ日本の場合、1960年代の10%ほどの高度成長から、2000年代以降のほとんどゼロに近い水準まで傾向的に低下しておる、今日の人口減少を考慮すれば、多少の変動はあっても、この成長率が大きく跳ね上がるとは思えないという。
私:しかし、そのことは決して悲観することではないと佐伯氏はいう。
60年代とは、明らかに社会の構造も消費者の欲求も違い、今日、モノは溢れていて、われわれは物質的に豊かになり、経済は成熟した。
ただ、それで、われわれの生活が真の意味で快適になったのか、というとそうではない。
A氏:今日、われわれは、市場や金銭の尺度では測れない、生活の質の向上、長期的に安定した仕事の場所、文化的な生活、教育、医療、介護、それに、人々の間の信頼できる関係であり、それを可能とする社交の場や多様な地域の維持、家族や友人と過ごす時間や場所なども求めていると佐々木氏は指摘する。
私:これほどモノが豊かになった社会では、金融緩和によって消費を喚起するのは難しく、人々が求めているのは、公共的で社会的な次元での豊かさであると佐伯氏は強調する。
それは容易にGDPの成長に反映されるものではない。
それは、ひとつの価値としての経済成長主義はもはや限界だということである。
「その次」の価値観が求められていると佐伯氏は指摘する。
こないだ、入水自殺した佐々木氏の盟友の西部邁氏は、金利ゼロということは、資本主義が崩壊していることだとも言っていたね。
金利低下問題は4年前のブログ「資本主義の終焉と歴史の危機」水野和夫著でとりあげたが、この本の最後で、水野氏は「おそらく資本主義を前提につくられた近代経済学の住人からすれば、私は『変人』にしか見えないでしょう。しかし、『変人』には資本主義終焉を告げる鐘の音がはっきり聞こえています」 と言っている。
しかし、残念ながら水野氏は、その後にきたるべき社会の展望にはふれていない。
佐伯氏の「『その次』の価値観」も資本主義終焉後の価値観だろうか。
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Last updated
2018.03.03 14:40:07
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