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私:今世紀初頭まで、欧州の人々はさまざまな面で米国人より暮らし向きが良く、皆保険制度があり、それに伴って平均寿命も長く、貧困率はずっと低く、実際、働き盛りの時期に実入りのいい仕事につける可能性も米国人より高かった。
しかしと、クルーグマン氏は言う。
今、欧州は大きな困難に陥っていて、米国も同じだが、とりわけ、大西洋を挟んだ両岸で民主主義が苦しい状況にあり、もし自由の崩壊が起こるとすれば、おそらく米国が先になるだろうという。
それでも、米国が抱えるトランプ大統領の悪夢からいったん離れて、欧州の苦悩に目を向ける価値はあり、すべてではないが、米国の苦悩と重なる部分もあるとして、このコラムでは、焦点を欧州にむけている。
A氏:まず、クルーグマン氏は、欧州が抱える問題の多くは、単一通貨・ユーロの導入という、1世代前のひどい決定に端を発しているという。
ユーロの誕生によって一時的に高揚感が高まり、スペインやギリシャといった国々に巨額のお金が流れ込み、バブルは崩壊。
自国通貨を維持していたアイスランドのような国々が通貨を切り下げて早々に競争力を回復した一方、ユーロ圏の国々は支出を抑えるのに苦労するなか、不況は長引き、失業率は極めて高くなった。
私:この不況を悪化させたのは、欧州の問題の根本的原因が支出調整の誤りでなく財政の浪費にあるとし、厳しい緊縮財政で解決しようとしたエリート層の見解で、この緊縮財政が状況をさらに悪化させた。
スペインのように何とか競争力を取り戻すことができた国もあるが、ギリシャは今も災難の渦中。
EUに残る3大経済国の一つイタリアは、今まさに「失われた20年」のただ中にいて、1人当たりの国内総生産(GDP)は2000年の水準に及ばないのが現状。
A氏:だから、今年3月にイタリアで行われた総選挙で、反EUを掲げるポピュリスト政党「五つ星運動」と極右政党「同盟」が大勝したことは、それほど驚くようなことではなく、むしろ、それがもっと早く起きなかったことの方が不思議なくらいだと、クルーグマン氏は指摘する。
このコラム欄の記事が書かれた後、総選挙後の「政治空白」が続いていたイタリアで、EUに懐疑的な「五つ星運動」と右派「同盟」の2党による連立政権が発足することになったね。
クルーグマン氏は、連立政権がどんな政策を取るかはまだ定かではないが、さまざまな面で他の欧州諸国とは別の道を進む内容が含まれるのは間違いなく、財政の引き締め緩和からユーロ圏離脱に至る可能性は大いにあるし、移民や難民の締め出しも強まるだろうと予測する。
欧州の他国の事情を見ると、いくつかの恐ろしい先例があり、ハンガリーは事実上、一党独裁国家となり、民族主義的イデオロギーに支配されているし、ポーランドは、一度もユーロ圏に加わらず、ほぼ無傷で経済危機を乗り越えたが、同じように民主主義が崩壊しつつある。
私:クルーグマン氏は、失敗の背後には、さらに根深い話が潜んでいるのではないかとして、欧州には常に闇の勢力が存在しているという。
その闇の勢力を抑え込んでいたのは、民主主義の価値観に専心する欧州のエリート層の威信だったが、その威信はずさんな管理運営によって失われてしまったという。
A氏:ここで、クルーグマン氏は、米国に視点を変え、米国の事情との類似点がみられるとして、米国の「中道派」エリートの判断の誤りは欧州のそれに匹敵すると指摘。
2010年から11年にかけて米国が大量失業にあえいでいたころ、ワシントンの「大まじめな人たち」の大半は社会保障制度改革のことで頭がいっぱいだったことを思い出しほしいという。
一方で米国の中道派は、多くの報道機関と一緒になって、共和党の急進化を何年も否定し続け、ほとんど病的なあしきバランス主義にはまり込んでいて、そして今、米国は、ハンガリーの与党に負けず劣らず、民主的な規範や法の支配をほとんど尊重しない政党によって統治されているとクルーグマン氏は、指摘する。
私:そして、クルーグマン氏は最後に「要するに、欧州の失敗は、奥深いところでは米国の失敗と同じだということだ。そして、どちらの状況も、回復への道のりは非常に厳しいだろう」という。
きわめて、悲観的な予測だが、日本も文藝春秋6月号で「『政と官』の劣化が止まらない」の特集を組んでいるように、似たような状況になっているようだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2018.06.03 12:45:10
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