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私:現政権において、「イノベーション」は非常に重視されており、「第三の矢」とされる「成長戦略」においては、中心的な役割が与えられてきた。
「イノベーション」の過程やメカニズムについての学術的研究もなされてきたが、その結果、「イノベーション」を管理するための知識も、ある程度は蓄積されてきたが、社会に強いインパクトを与えるような「イノベーション」の多くは不連続的な現象であって、事前の計画や設計ができる類いのものではないことも分かってきた。
A氏:真に影響力の大きい「イノベーション」は少数のパイオニア、時には狂信的ともいえるような情熱を持った人たちが、世間の冷たい視線にもめげず努力を続け、そしてついに成果を世に示す日が来る。
人々は驚愕し、世界が変わるというストーリーは当然、計画や設計にはなじまない。
私:ところが、そんな「イノベーション」を日本政府が計画や設計をし、促進していることで、神里達博氏は視点を政府の政策を分析している。
政府は、90年代半ばから5年ごとに「科学技術基本計画」を策定し、科学技術政策を長期的視野で進める仕組みを設けている。
その4期目にあたる2011年の「基本計画」では、「自然科学のみならず、人文科学や社会科学の視点も取り入れ、科学技術政策に加えて、関連する『イノベーション』政策も幅広く対象に含めて、その一体的な推進を図っていくことが不可欠」とし、これを「科学技術イノベーション政策」と位置づけた。
本来、科学技術政策と産業政策は別ものだが、最近は産業政策、特に「イノベーション」政策の手段のように科学技術政策が位置づけられる。
実際、政府の科学技術政策の司令塔「総合科学技術会議」(CSTP)」は、14年の内閣府設置法改正により「総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)」に名称変更。
A氏:加えて、閣議決定で設置された「日本経済再生本部」のもとに置かれた「産業競争力会議」の、さらにその中のワーキング・グループが、CSTIに対して「宿題」を出し、CSTIが対応するという、不思議な現象も起きているという。
これを「官邸主導」と呼べば聞こえはいいが、国会の議決に基づく、法的根拠のある行政組織が、閣議決定を根拠とする組織の「手足」のごとく走り回っているとすれば、問題ではないかと神里氏は、指摘する。
私:かつての通産省は、石炭から石油へのエネルギー革命に対処すべく、石炭対策特別会計を設け、石炭産業を安定化させ、離職者の生活を守ることにも気を配った。
神里氏は、このように、行政の本来の仕事は、「イノベーション」を加速することよりも、その結果起こるさまざまな社会経済的なゆがみに対処することではないだろうかといい、結局のところ、政府は「イノベーション」という難題に、どのように、どこまで関わるべきなのか、いま一度、落ち着いて見つめ直すべき時だろうという。
しかし、神里氏は、ブログ「日本の科学、未来は」で述べたように、日本の科学力の現場での低下、理系で修士課程から企業に就職する大学院生が増え博士課程への進学者が激減、物理学の分野では企業の論文数は96年ごろをピークに減少に転じたこと、などの現実に視点をおいていない。
博士号を得た研究者が一人前になるのに通常6~7年かかるが、博士減少というボディーブローが、科学力の衰えとして表面化。
「ほかの研究者からの引用数が世界トップ10%」に入る論文数で、日本は5千本台で4位と横ばいなのに、1位の米国は4万本、中国は06年に日本を追い越し、急成長で15年には2.5万本と第2位。
こういう日本の「イノベーション」の根底が弱体化し「イノベーション」力が低下しているのに、政府が机上論で「イノベーション」促進を唱えている矛盾を、専門家の神里氏には突いてほしかったね。
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Last updated
2018.06.15 19:49:08
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