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ヘーゲル『大論理学』35 マルクスのアドバイス 前回、ヘーゲルの『大論理学』を学習していて感じている点を紹介しました。 一つは、日本社会には、現在においても、戦後を75年余過ぎた今でも、戦前の思想を引きずっている部分があるし、他方では思想弾圧による「空白」の期間により、その後遺症がいろいろなところに、このヘーゲルを学習する上でも感じられるということでした。 もう一つは、ヘーゲルの弁証法哲学というものをエンゲルスが『空想から科学へ』第2章で紹介していますが。そこで「形而上学的思考と弁証法的思考のちがい」を明らかにしていますが、そこにはヘーゲルの『小論理学』「序論」の「客観性に対する三つの態度」から、その中の第一のカント以前の哲学(ヴォルフなど)批判の、悟性的思考の特徴の三点が批判されていることを紹介しました。 それは、エンゲルスの書評「カール・マルクス『経済学批判』」(1859年 国民文庫)です。
1つは、1859年8月6日付「ダス・フォルク」です。『経済学批判』の「序言」を紹介する形で、『経済学批判』の基本思想となっている唯物史観を紹介しています。 2つは、1859年8月20日付ですが、これが今回紹介したかったものです。 (「ダス・フォルク」というのは、1859年5月7日から8月20日まで、ロンドンで発行されていたドイツ語の週刊紙とのことですが) だいたい、この書評は、マルクスの『資本論』を学習する人たちにとっては、そこでつかわれている方法を理解する上で、大事な論文だと思っているんですが。 今日にあれば、『資本論』を知る人は大勢いるし、その本をもっている人もかなりいると思います。しかし、苦労して読んでいる人はその内にどれくらいでしょう。やはり一番大事なことは、その中身を理解・広げることが肝心なことですよね。 マルクスは、この社会観と経済学の新たな開拓が黙殺されないようにと、 『マルクス・エンゲルス全集』の第29巻(書簡集)ですが、そのころのマルクスとエンゲルスとのやりとりが残っていました。 先にも紹介したように、マルクス『経済学批判』は、1859年6月11日には刊行されたんです。 1、1859年7月19日付でマルクスはエンゲルスに、この本の書評を書いてくれるように頼むんですね。 2、7月22日付でマルクスは、重ねて書評を書くことを頼みます。その際には次の2点は必ず入れてほしいとの注文も付けているんです。 3、これに対して、7月25日付でエンゲルスが返事してます。 4、8月1日付のマルクスのエンゲルスへの手紙です。 5、8月3日付のエンゲルスですが。第1回目の論評の原稿をマルクスにおくったようです。 「よく目を通して、もし全体として気に入らなければ、破いてしまって、君の意見を僕に教えてくれたまえ。僕が練習不足から、こういうたぐいの書き物をすっかり忘れてしまっているものだから。君の方で何とか手をくわえられるものなら、そうしたまえ。唯物論的見方についての的確な例が、二、三あげられるとよいのだが」と、マルクスに依頼する。
6、8月10日付エンゲルスのマルクスへの手紙です。「第二論説を書こうとしたが、邪魔が入って来週までかけない」。 7、8月13日付マルクスのエンゲルスへの手紙です。「君の論説を水曜日にはこちらに届くように手配してもらえないだろうか」 こうして、1859年8月20日付の第二論説が「ダス・フォルク」に掲載されたわけです。 ようするに、この論評は、公式にはエンゲルス執筆となっていますが、その実はマルクスの主導によるエンゲルスとの共作だったんですね。 「ヘーゲルの死以来、ある学問をそれ自身の内的関連において展開しようとする試みは、ほとんどなされていない」、これが第二論文のはじめ、書き出し部分です。 マルクスのヘーゲル弁証法にたいする批判としては、よく『資本論』の「2版のあとがき」(1873年1月24日付)が紹介されますよね、確かにそれは大事ものだと思うんです。しかし、この「カール・マルクス経済学批判(書評)」(1859年8月20日付)もまた、ヘーゲルの弁証法にどの様に向き合うのか、『経済学批判』の「序言」とともに、かなり詳しくまとめられています。これが最初にまとまつた形でヘーゲルの弁証法を批判したものなんですね。実際の論文で確かめていただきたいんですが。 五、問題は、ヘーゲルが初めて提起した弁証法をどの様に学ぶか、ですが。 こうした事情もあり、もともと難解な表現のヘーゲルの著作ですから、 中には、あれこれの教科書的説明くらいで、済ましている状況も見られるじゃないですか。 そうした事情が、私などでも、たとえ素人であっても、 さて、ゴールまで、あと少しです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2021年09月27日 01時37分20秒
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