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テーマ:お勧めの本(7220)
カテゴリ:小説
人一人の一生なぞそういろんな経験が
できるものではない。 自分の人生の他に違った人生を生きてみるには 映画や物語の世界に入って 「その人」の人生を自分のもののように感じるしか ないのだろう。 僕はもともとカタルシス無くして 物語は確立しないと思っている節がある。 中年になるにしたがってその傾向は 顕著に表れ出した。 映画における「水上 勉」の世界は 以前にも少し触れた『飢餓海峡』や『雁の寺』 がある。 また、実際あった「金閣寺炎上」をテーマにした 三島由紀夫の『金閣寺』と並ぶ 誰もが一度は耳にしたことのある『五番町夕霧楼』。 他にも『はなれ瞽女(ごぜ)おりん』や『越後つついし親不知』 など氏の原作は日本映画を盛り上げてきたことは 間違いない。 映画の水上 勉についてはよく知っているつもりであったが 小説として手に取ったことは殆どなかった。 そして最近氏の文学にとても興味が沸き 町の図書館で全集を借りて読み漁っているのである。 氏の書くテーマは「貧困と女」である。 貧しい農村の子として生まれてきた女、 生きるために親兄弟のために自分の身を 堕としてまでも・・・。 しかし、女の末路は幸せというものではない。 何故、彼女は死を選んだのか。 さまざまな作品の中に生きる女の姿は 皆一様に暗く悲哀に満ちている。 貧困という背景は今の日本には見る影はないのだろう。 水上 勉の小説は終戦前の日本が よく描かれている。 氏の幼少時代、京都の禅宗の寺に修行に出された 経験もあるせいか 京都が舞台になるものが少なくない。 京言葉が頻繁に使われ、読んでいて楽しい。 氏の小説に『高瀬川』という小品がある。 京女を東男からの視点で書かれているところがある。 京都の女性の言葉について言及している 場面などもある。 まさにこれが『高瀬川』の物語の核といえるだろう。 たまたま『高瀬川』という作品を挙げてはみたが 氏の小説それも小品がなかなか面白い。 全集の中には当然有名な作品の他に 短篇なども収録されているわけだ。 それらの作品すべてがいいのである。 まだしばらく「水上 勉」にどっぷり浸かっている事であろう。
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最終更新日
2011年03月10日 06時50分46秒
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