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カテゴリ:心
■気になる本 - さらば、哀しみのドラッグ 増補版 -
------------------------------------------------------------ ドラッグ【drug】とは、「学研パーソナル現代国語辞典」に よると、 「薬。特に麻薬。」 とでています。 しかし、過去に紹介した本、「へんな毒すごい毒」では、 科学的にみると、毒と薬の明確な違いはないといいます。 (参考)へんな毒すごい毒 例えば、アルコールですが、体重60kgの人は、 8000 mg/kg * 60 kg = 480mg となりますから、ビール大瓶で7本、ウィスキーなら 1本を飲めば、急性アルコール中毒になって死亡する 可能性があります。 (この8000 mg/kgは、アルコールのLD50です) 同じように煙草も、そして、塩も。ようは、 ある量を摂取すると、人間の機能に異常をきたすのは 毒であるのです。(最悪、死亡することになりますが) 但し、麻薬、覚醒剤等のドラックは別です。 身体の耐性が強まり、より以上の量を摂取しなくては ならなくなるからです。 今回の著者も、煙草も酒もドラックであるといいます。 だから法律で利用できる年齢を規制しているとも いいます。しかも、ドラックは、利用も所持も栽培も 禁止されているのです。 ドラックは、二つの顔をもつ と著者はいいます。 一つは、天使の顔をもつと。ドラックをやると充実感や 万能感、陶酔感や快感を得るといいます。 二つめの顔は、不気味に笑う死に神の顔だといいます。 ドラックの乱用を行えば、心の死を迎え(人格喪失、 不信、殺人までも)、そして身体の死を迎えるといいます。 いま、このドラックが、若年者(少年少女)や ストレスを受けた大人も、ものすごい勢いで飲み込まれて いると著者はいいます。 いま、「さらば、哀しみのドラッグ 増補版」 (著者 水谷修、出版社 株式会社高文研、 発行年月 2007年10月)を、読みました。 その直前には「夜回り先生」を読んでおります。 著者のプロフィールは、カバーから紹介します。 ------------------------------------ 水谷 修(みずたに おきむ)氏。 1956年、神奈川県横浜市生まれ。 上智大学文学部哲学科を卒業。 1983年に横浜市立高校教諭となる。 1992年から同市立定時制高校に勤務、 2004年9月に高校教諭を辞職。 高校在職中から、青少年の非行問題、薬物問題に取り組み、 「夜回り」と呼ばれる深夜の繁華街におけるパトロールを 続けてきた。高校教諭辞職後も、全国の子どもたちから 寄せられるメール・電話相談に答えながら、講演活動で 全国各地をまわっている。 ------------------------------------------ 著者が、信念と熱い情熱で悩んでいる少年少女と 対峙し、「おっせっかい」と言われながらも心に 響く言葉で、相手の生きる力を奮い立たせるのには 感動しましたし、尊敬します。 両方の本にも紹介されていますが、福島県いわき市 出身の母親とシンナーを乱用した少年。著者の力不足 が、少年を自殺に追いやったと述べています。 (どうもこの事件が著者の行動の原点とも思える のです。) その時の医者の言葉が読者の心を刺します。 「水谷先生、彼を殺したのは君だよ。 いいかい、シンナーや覚醒剤などの薬物を止めること はできないというのは、依存症という病気なんだよ。 あなたはその病気を愛の力で治そうとした。 しかし、病気が愛の力や罰の力で治せるものですか。 (中略)その病気を治すために、私たち医師がいる のでしょう。無理をしましたね。」 著者が、経験からドラックを乱用した人に対して 3つの救いの方法を教えるといいます。 ■1 自分の力で覚醒剤を絶つこと ■2 著者や専門の病院、自助グループの力を借りて 覚醒剤を絶つこと。 ■3 このまま使い続けて、警察のお世話になるか、 死に至るまで使用するか。 でも、悲しいかな、■1の方は、著者は経験できて いないというのです。覚醒剤の乱用は、脳や神経系を 破壊し、同じ量では耐性が形成されてより以上の量で 満足するようになり、それがエスカレートしていくと いうのです。そして、ドラックなしでは生きていけなく なってしまうといいます。 そして著者によると、現在は汚染が拡大していると いうのです。第6次薬物汚染期だ!というのです。 但し、警察発表の汚染期とは違います。 その著者の考えによる分類を引用します。 --------------------------------- ■第1次薬物汚染期 薬局で覚醒剤が買えた時代 (1945~1956) 第二次世界大戦中に、日本国は自ら覚醒剤を 生産し、兵士や労働者に。これが戦後、ヒロポン等へ。 ■第2次薬物汚染期 暴力団がドラックを資金源に (1960~1964) 戦後の混乱で暴力団が勢力を伸ばし、覚醒剤取締法 によって、より地下に潜っていきます。ヘロイン=ヤク。 ■第3次薬物汚染期 シンナーでラリることが流行に (1967~現在) 有機溶剤であるシンナー、ボンド、トルエンを利用、 法が改正され規制の対象に。 ■第4次薬物汚染期 一般市民に覚醒剤の魔の手が (1970~現在) 暴力団による覚醒剤の組織的密売が復活。乱用者の 骨までしゃぶるから「シャブ」。一部の主婦までも。 ■第5次薬物汚染期 遊ぶ道具としての若者たちの乱用 (1994~現在) 覚醒剤や大麻は、「S」、「スピード」、「アイス」 「ヤセ薬」、「ハッパ」、「チョコ」と名前を変えて 高校生へ。 ■第6次薬物汚染期 ドラッグに救いを求める若者たち (2006~現在) 褒められない、注目されていない若者は、ストレス が蓄積して、クスリやリストカット等に流れると いいます。その原因は大人の社会であるのに。 --------------------------------------- 著者の慟哭(どうこく)と慷慨(こうがい)を 感じます。慷慨の相手は、私たち大人ですが。 著者の一文を引用します。 ----------------------- 私にとっては非常に悲しい薬物乱用です。なぜなら、 乱用する子どもたちを作り出した原因、責任は、 私たち大人にあるからです。この攻撃的な社会が その背景にあるからです。でも、ドラックに救いは ないのです。一回一回の乱用が君たち若者の明日を 滅ぼしていくのです。 --------------------------- 著者は、若者と対峙したときは、絶対に子どもたちを 叱らないといいます。 私が思うには、子どもにはもう逃げる場所がないからだ と思います。大人でさえ、こんな経済状勢、偽装社会、 低賃金、サービス残業、等、いやなことがありますが、 それを晴らす方法をもっています。でも、子どもには 何も方法がないのです。だから、著者が受け止めて いると思っているのですが・・・。 さて、後半の章には、「ドラッグのウソ、ホント」、 「薬物問題が起きたらどうするか」という、学校では 教えてくれないことが掲載されております。 そうそう、「はじめに」では、この本を執筆しようか どうかで、少し葛藤をしたことが書いてあります。 そして、全ての情報を曝け出し、受け取る読者の生きる 力に期待した著者に喝采を送りたいものです。 そうです。鉛筆を削るナイフも、社会に浸透した 自動車も、ようはその使い方で犯罪の道具にもなって しまうのです。こういう知識、知慧は、若い人の 生きる力の素として活用してほしいものです。 尚、著者が参加していた掲示板「春不遠」 (はるとおからじ)は、新規の書き込みはできませんが、 過去の記録を参照することができます。 (参考)掲示板「春不遠」(はるとおからじ) (追伸)著者は、今年の4月から京都の花園大学の 客員教授になっているようです。同大学のプロフィール には、何も情報は入っておりません。 ただ、この私学の大学は、「建学の精神と禅的人間教育」 を狙いとしていようです。 (7月12日) ![]() さらば、哀しみのドラッグ増補版 ![]() 夜回り先生 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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