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カテゴリ:物書き
土色の更地と化した町にやっと綻んだ桜。 昼間は暖かくとも夜になれば まだまだ寒い。 小さいながらも春を告げる桜は 風に揺れながら人々の心の中にも 希望の花を咲かせてくれる。 青く澄んだ北の空に桜が咲く。 大きな空を見上げながら 何を失ったのか一つ一つを思い出せないままに 人々は茫然と立ち尽くしていたこの一ヶ月あまり‥ いつまで、どこまで続いてゆくのだろう。 この切ない日々の連続は 今日もまた気落ちしそうな想いを ぐっと堪えながら ほの暗い朧月夜に咲く桜を見上げながら 幾人もの人たちが複雑で混沌とした夜を過ごす。 もうすぐ、燕がこの町に戻って来る。 戻ってくる燕に懐かしい家並みは残っていない。 爽やかなそよ風が吹く季節になれば 今のこの町は砂埃にまみれ 前に向かうことの難しさを突きつけて来る。 それでも、私たちは明日について 身を寄せ合って語り合う。 判っていることは今の此処に執着するのではなく 以前の明るさを一日でもはやく 己の手の中に取り戻すことだ。 人々は自分に言い聞かせ この理不尽な現実を決して忘れずに 新たなる教訓として学び 塩水に浸かっても咲く桜のように 「希望の花」となるように 努めてゆかなければならない 「人は本当に泣いた分だけ優しい人に成れる」 深い悲しみの時間をくぐり抜けて私たちは 明日に向かって歩いて行こう。 先が見えなくとも前に歩いて行こう。 何故なら 過去には戻れないのだから お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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