テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:ピアノ
昨日まで聴いていたホジャイノフ(20歳)の2.5倍、54歳になるエルバシャの高貴なリサイタル。 この気品あふれる素晴らしいリサイタルの後には、大勢でシャンパンを空けて興奮を口にするのではなく、一人水割りをあおりながら余韻に浸るだけである。 全ての音楽、音符が生きている。 瑞々しく精錬されたサウンド。 エルバシャの完璧な舞台があった。 2012年10月16日(火) 19時開演 紀尾井ホール(1列センター左寄り) ピアノ:べヒシュタイン モーツァルト:ピアノ・ソナタ第6番「デュルニツ」二長調K.284 ラヴェル:夜のガスパール「水の精」 「絞首台」 「スカルボ」 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第26番変ホ長調「告別」Op.81a ショパン:ピアノ・ソナタ第2番変ロ短調「葬送」Op.35 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - (アンコール) ショパン:ノクターン嬰ハ短調遺作 シューベルト:即興曲Op.90-2 エル=バシャ:スザンヌのために ■レビュー■ 素晴らしいコンサートの後は書くのがめんどくさくなる。 今夜は冒頭に記載した5行が全て。 モーツァルト、ベートーヴェンはこれ以上望めない最高レベルの演奏。 音が瑞々しく生きていて、模範的演奏というには失礼なほどの気高さ。 中東のエスプリと呼ばれるように、演奏スタイル(安定感・余計なことをしない・脱力が半端無い)、音の出し方(透明かつ煌びやか)がいかにも高貴で洗練されている。 かなり大きな音も出ていたはずだが、音量や興奮ばかりが全てではないといわんばかりの冷静さ。 決して青筋を立てるタイプのピアニストではないと思っていたが、一切汗を拭かない演奏なのである。 前半後半とも舞台袖には戻らず演奏を続ける。 ショパンのソナタも文句無し。上記の通り。 ただショパンの一部とラヴェルで「もうちょっと!」と思ったのはボルテージ。 途中から感じたのだが、当夜のベヒシュタインは1列目の私の頭上を抜けていっているようだった。 中間の座席の方々が大きな音が出ていたね、と話していたのが悔しい(笑) 葬送行進曲の中間部、2小節分をペダル踏みっぱなしであわや昇天しそうな美しい世界観。参った。 ラヴェルはスカルボに焦点を合わせていたのか、オンディーヌ・絞首台とも抑えに抑えた演奏。 私の座席位置と合わせても、オンディーヌはもうちょとボルテージ上げてもよかったか。また絞首台の鐘の音が清潔すぎた感がある。 しかし難曲スカルボでさえ一切演奏に危機感がない。ここはご想像の通りクライマックスに向けて一山二山ボルテージを上げる。 アンコールではシューベルト。 運指巧みに絶品の即興曲。あまりに音楽が生き生きと瑞々しいため天国が見えた。昇天寸前だった・・・。 言葉では書ききれないし、書く尽くすつもりになれない素晴らしい高潔で気品溢れるコンサートだった。 サイン会、聖書から抜け出た預言者エルバシャの雰囲気。やはり本人そのものも高貴なのである。 ブラヴォー、とお声がけしたところ、しっかり私の目を見つめながらThank you very much と微笑んでくださった。 本厄も晴れて明日からいいことがありそうだ(笑) 、 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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