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営業マンの備忘録

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2012年10月19日
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カテゴリ:ピアノ
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ハオチェン・チャンの名前を始めて聞いたのは半年前。
既にファンである友人からだった。
ヴァン・クライバーン国際コンクールで辻井さんと同時優勝(実はそのことも知らなかった・・・勉強不足)。
カーティス音楽院でゲイリー・グラフマンに学ぶ。
となると、同門はランラン、ユジャワン。
初めて聴くハオチェン、これは期待できるのではないか。

(余談)
ゲイリー・グラフマン。久しぶりに胸にぐっとくる名前を聞いた。
「退屈したんで弟子をとったんだ。私の生徒として認めるのは、バイロン・ジャニス、ロナルド・トゥリーニ、ゲイリー・グラフマンだけだ。誰かほかの者が私の弟子だといっても、それは本当じゃない。私の前で演奏した者はほかにもいる。でも進歩しないんで教えるのをやめたんだ。彼らは私のいうことに従わなかったか、従えなかったんだ」
そう語るのは、ヴラディーミル・ホロヴィッツ。

ホロヴィッツとグラフマンの出会いは1948年、ホロヴィッツが心身ともに病みコンサートピアニストとして活動を休止するに至った1953年からレッスンを始めた。
グラフマンはそれまでの先生からいわゆる教室でのピアノ演奏を教わってきたが、ホロヴィッツからはカーネギーホールでどう響かせるかを教わってきたという。
たとえばホロヴィッツの教えるペダリングは居間で聴いたらひどく濁って聴こえるが、カーネギーホールで演奏する場合、楽句がぶつからず、音色に豊かさ、音質にきらめきがでたという。
病的な指導で精神的に追い詰めてしまったバイロン・ジャニスではなく、生徒というより友達として扱われたグラフマン。
いまやグラフマンが先生となり、ランラン、ユジャワンに次ぎ、ハオチェンという若者を送り出してきたことが嬉しい。
(実はハオチェンがグラフマン門下ということも昨夜知った・・・勉強不足)。

=====
ハオチェン・チャン ピアノリサイタル
2012年10月19日(金)すみだトリフォニーホール(大ホール) センターブロック真ん中よりやや前の席

<プログラム>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 Op.27-2「 月光」
シューマン:謝肉祭 Op. 9
---
ショパン:アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
ドビュッシー:前奏曲集 第1巻より
 『雪の上の足跡』、『音と香りは夕暮れの大気に漂う』
 『アナカプリの丘』、『沈める寺』
バラキレフ:イスラメイ(東洋風幻想曲)
(アンコール)
ショパンとドビュッシーのショートピースを2曲
全国演奏活動中につき記載しません。当日をお楽しみに。

===

余談続きだが、当夜のプログラムは何の脈絡もないように思われたのだが、ハオチェンが「多種多様なプログラム」というのは黄金時代のピアニストに師事した師匠の影響がありそうである。
(そう思うと、彼のピアニストらが「第三部」としてアンコール合戦を繰り広げたプログラム構成も期待できたのだな。次回は充実したアンコールを是非お願いしたい)

当ホール、ほぼ満員である。
また誰と約束した訳ではないが、10人ほどの知った顔を拝見した。
それだけ注目を浴びているピアニスト。

月光1楽章は座席位置から音に耳が慣れない。弱音がホールの壁にあたって回り込む音ではっきりしない(耳がなれていない)。
いつもチッコリーニを聴いているもうちょい後ろ(20列目以降)でよかったかなと思う。
歌いこむというより一定テンポ。やや速めか。左手のバスが効いている印象。
2楽章から明晰な音が飛び始める。
うーん、なんだろこの感じ。右手の旋律に左手のバスが絡んでくる。時には聴きなれない内声を副旋律としたり面白い取り組み。
(ホロヴィッツが得意だったんだよな、とすいませんホロファンなもので)
3楽章、彼のメカがあらわになる。インテンポで難所も速め一定リズムで突っ走る。苦手な箇所なんてありません~とでもいわんばかり。
フォルテでアクセントを付けるところはスタインウェイサウンドが金属的に鳴り響く。物凄い鉄拳。
ホジャイノフの項で記載したけど、最近のコンクールで勝っている人の弾き方。
最後3つの和音で頭をぶん殴られたような衝撃をうけた。

謝肉祭はシューマンの躁と鬱、陽と陰みたいな、人気曲であるが個人的にはまどろっこしいと思っている曲なのだが、彼の場合は全編ハオチェン。
テクと勢いと若さゆえの爽やかな謝肉祭とでもいおうか。
2曲目ピエロの運指の凄いこと凄いこと。もう超特急ですよ。凄いなあ。
艶やかに続く高貴なワルツ、続くオイゼビウスはもうちょっと色っぽく鬱っぽくいってほしいところがそうならないのはランランと一緒(ショパンの短調ノクターンを根明に弾いちゃうあたり)。
と代表的なところを記載し、胸に迫ったのは終曲のペリシテ人と戦うダヴィド同盟の行進。
堂々たる、若々しく錚々たる演奏がなんとも爽快。
感想としては1曲1曲の特性をもっとアピールしてもよいかと思うものの、現在彼が表現できる謝肉祭としては全編ハオチェン色も面白いか。
(なにせまどろっこしい曲と思っているので)

お辞儀をし、顔が上がったところで更にうんうんと頷くところ。ユンディと似ている。かわいい笑顔。
前半の感想。爽快な速度。、オクターブ、重度の和音も一切スピードを緩めることのないテクと鉄拳。
強烈なフォルテ(ぶっ放すところでは頭が痛くなるほど)。

アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズはスタイルが変わり歌いこんできた。
アンコールのショパンでもそう思ったのだが、ハオチェン編が多い中、ショパンはじっくり歌っているのだ。
そして左手が内声を出してきて主旋律と絡み合う。
これはきっと次のコンクールを狙っているね。
弱音のコントロールに神経をつかい、強音をぶっ放さない。
そしてボルテージが上がる山の手前であえて脱力。そこまでこの曲には必要ないですよ、みたいな。
うーん、後半は意外な一面が。

ドビュッシーもまたハオチェン編ではなくドビュッシーを素晴らしく体現。
テクで魅せる曲ではなく、こうした楽曲こそ得意なのではないか?と思わせる。
アナカプリの丘などでは畳み掛けるクライマックスに向けて手に汗握っていた。
(余談だが、前述しているダンタイソンのドビュッシーがあまりに素晴らしく、まだアプローチする余地はあると思える)

期待のイスラメイ。
わずかに椅子を上げ、手首・首元を緩め難曲に備える。
手元の時計で7分40秒ほどで弾ききってしまったと思うのだが・・・。
これまで最速と言われるベレゾフスキーやガブリーロフより速いのではないか?
ちなみにランランの若いころのCDはトラックで9:10.
旋律は普通に歌うのだが、途中に紛れ込むオクターブ・和音の連打があまりにも速いのだ。
この席からは百烈拳が残像になってみえる。なんて人だ。あわわ。
幻想曲だけあり歌うところは歌い、音量も抜群。
欲をいうとその有り余るテクをもっと難しそうに弾いてほしい。
もっと速度をおとしてもいいから難しそうに聴かせてほしい。
そうすると、前半終了!でパラパラ拍手が沸き起こるはずなのだ。
たまにNHKで放映されるガブリリュク、そして顔を真っ赤にして弾いたブロンフマンのときのように。
後半も同様の演奏スタイル。クライマックスに入るところ、弱音で入ったのは面白い取り組み。
あいかわらず、旋律以外の難箇所をまったくひるむことのないテクニック。
畳み掛けるべきラスト、ちょっと弾き急いじゃったか。
超特急ではなく快速くらいの速度ながら「難しそうに聴かせる」。それでいいんじゃないかな(笑)

サイン会は長蛇の列というほどではないが、そもそもCDがコンクールCDしかないので新譜を期待したい。
みなハオチェンに声をかけたり、写真を一緒にとったり、はにかむような爽やかな笑顔と人柄に触れていた。
私にはハオチェンの音はバイロン・ジャニスの音に感じられた。特にテクニックが必要とされるフォルテ、そして鉄拳の箇所だ。そういえばグラフマンの演奏は聴いたことがない。
そんな全編ハオチェン版の演奏会、脈々と受け継がれる黄金時代のピアニズムに浸る一夜だった。
(それを知ったのは昨夜だったけどね)





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最終更新日  2012年10月20日 22時50分40秒
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