テーマ:好きなクラシック(2282)
カテゴリ:ピアノ
NHKで放映された熱演に目を疑った。 リスト・ロ短調ソナタ、ラフマニノフ・ピアノ協奏曲第三番。 クレオパトラ(見たことないが)のような美貌、スタイルの持ち主ながら、バネの効いた手首が圧倒的インテンポの超絶演奏を奏でている。 彫りの深い顔立ちにメーク。グルジア人の妖艶でエキゾチックな美女。そのアンニュイな表情と圧巻のテクニックのミスマッチがたまらなく思えたものだ。 早くもチームアルゲリッチの一員で、海外音楽祭にも引っ張りだこ。 ヴェルビエだか、音楽祭でのユジャワンとの協演では、ユジャワンが小物に見えるほどの存在感。 震災後は来日をキャンセルせざるを得なかったが、クレーメルとの一連のツアーの中でようやくソロリサイタルを断行。 ・・・おっとっと、いいこと書くのはこの辺まで。そろそろ本題に。 残念ながら、耳の肥えた東京の聴衆はそんなに甘くない。 こんな演奏をしてたら、次はお客さん集まらないと思うリサイタルとなった。 2012年11月6日(火) 19:00 カティア・ブニアティシヴィリ ピアノ・リサイタル 浜離宮朝日ホール 真ん中辺の左ブロック ショパン:ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 op.35「葬送」、 バラード 第4番 ヘ短調 op.52 リスト:メフィスト・ワルツ 第1番「村の居酒屋での踊り」 --- シューベルト(リスト編曲):3つの歌曲 セレナード、糸を紡ぐグレートヒュン、魔王 ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章 (アンコール) リスト:愛の夢 第三番 ショパン:前奏曲 嬰ハ短調 カティア編曲:グルジア民謡よりVa giorquoma 昨日のアリス紗良さんほどではないが、聴衆に男性が多い。 ただ昨日とは異なり、CDがあまり売れていない。サイン会が無いためだろうか。 いや前半を聴いて、休憩時間になっても結果的に買わない人が多かったのではないだろうか。 黒のタイトドレスで登場。手、肩、背中がまるっと空いたセクシーな衣装。 横を向いては、若干はみ乳。なんてこった。 ショパン、1楽章2楽章ともオクターブやスケールを奏でる圧巻のスピード感。 これがYoutubeを席巻しているブニアティシヴィリと思わせる素晴らしさ。 しかしそのボルテージも長く続かず、次に訪れる緩叙部分で極端な弱音でゆったりとした旋律を奏でる。 ここでメロディーラインが際立たず埋もれてしまう。 また内声の出し方も得意ではないようで、左右の手が奏でるメロディーがまったく絡んでこない。 そして再びクレッシェンドをかけてボルテージを注ぎ込むテクニカルパート。 今日は概ねそのパターンの繰り返し。終演までには疲れてしまっていた。 3楽章。行進曲ながら妙なルバートを入れて歩く。テンポが足並み揃わず。 中間部の美はやはり弱音で表現。再現部は極弱音で丁寧は丁寧なのだが相変わらず主旋律が引き立たない。 そして再び行進曲。雄大に演奏したいのだろうがのめりこむには至らず。 4楽章は中間音域もしくはそれ未満の音量、ペダルをたっぷり使って響きを楽しんだが、なんとなく終わってしまった。 バラード4番はそんな感じでパッとせず。 出だしから弱音の間延びしたテンポで技巧的パートもあっという間に過ぎ去るため、再び間延びした弱音。 正直、この曲は彼女に合わないと思った。2番の方がいいのではないかな。 メフィストワルツや魔王、ペトルーシュカの出だしが彼女の得意なところ。インテンポで突っ込む突っ込む。 メフィスト、元気の良い出だし!なのだが思いの他そのあとが続かない。突っ込んでこない。意外にも冒頭は爆音も無し。 また、また~りとした緩叙部分を過ぎて中間以降のボルテージは楽しむことができた。ここは若干他のところよりボルテージが続くじゃないですか。 ただこのあたりから音が汚くなってきた感。 「いまいちみんなのってこないじゃない?もうちょっと音出すけどどう?」 聴衆に対して戸惑いのような雰囲気も感じられた。 休憩中、帰ろうかなという友人あり・・・。 シューベルトは、歌えていない。失礼ながら彼女に歌わせたら歌がうまくないのかもしれない。 歌心が無く、旋律も浮き立たず。 セレナードは甘い歌声ではなくピロートーク。枕元でささやく静かな歌声。ただ後半、やはり二人が絡まない。 魔王の出だし、彼女の専売特許。ただ良いと思えたのも出だしだけ。 歌心を感じずこの歌の鬼気迫り揺れ動く感情が表現できていない。 中間部やはり弱音を使うものの美しくないのは旋律が浮き出ていないためだろう。 期待のペトルーシュカ。時間とともに壊滅的に。 出だしこそオクターブの連続で彼女の強みをアピールするのだが意外と鳴らさずグリッサンドも効果的に響かず。 2楽章、3楽章と進むにつれボルテージが上がっているのだが、当夜のパフォーマンスを聴いてきた聴衆は冷めたもの。 また弱音か、次は強音かと展開が読めてしまうのである。 それを上まらんとする彼女は轟音と超快速にうってでるのだが、ひどく汚い強音とミスタッチで自壊気味の演奏で終わってしまったのである。 アンコールは吹っ切れて良かったと思うのだが、彼女編曲のグルジア民謡が一番心に染み入り良かった。 彼女も祖国の音楽を日本で演奏でき、誇らしげな顔をしていた。 当夜の演奏は終始このスタイルで良かったのではないかと思う。無理をし過ぎたのだと思う。 聴衆との駆け引きがライブの醍醐味でもあり怖さでもある。 当夜は聴衆がのってこないという、その怖さを味わってしまったのではないか。 期待に応えようとすればするほど深みにはまる恐ろしさ。 また、この程度の演奏ならば次は無いよと足早に会場をあとにする人が後を立たなかったのも印象的だった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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