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2006年07月24日
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カテゴリ:海外ミステリ

この作品は、先日紹介した「毒入りチョコレート事件」(感想)の作者、アントニイ ・バークリー の探偵小説処女作ですが、77年経ってやっと日本で発刊されました。

この種の驚きも何回か繰り返すと、日本における海外ミステリの扱いは、結構偏っていたに違いないと確信しますね。

ただ、最近では、国書刊行会から世界探偵小説全集が出され、黄金期のミステリがどんどん紹介されています。本書もその中の一冊です。
2500円しますが……。それでも読むことができるんですから、幸せです。図書館もありますし(笑)

ジーブスのシリーズが二種類の出版社から同時に出されたり、論創社海外ミステリ・シリーズにおいては、翻訳されてこなかった名作の掘り起こしがなされたりと、ようやく日本が遅れを取っていた部分が挽回されるのではないかと期待しています。


ある夏の日の朝、レイトン・コートの主人スタンワース氏の額を撃ち抜かれた死体が、書斎で発見されます。
現場は密室状況にあり、遺書も発見されたことから、警察の見解は自殺に傾いていましたが、不可解な死体の状態や滞在客の不審な行動を目にとめた作家のロジャー・シェリンガムは、自殺説に疑問を感じ、素人探偵の名乗りをあげます。
気の進まない友人アレックをワトスン役に指名し、自信満々で調査に取りかかったロジャーでしたが…。


この作品は当初 “?” 名義で発表されたそうです。
シェリンガム2作目の「ウィッチフォード毒殺事件」では、 “『レイトン・コートの謎』の著書による” という匿名で発表したそうですが、何とも人を食った名前ですね。

ホームズを追いかけるように登場した名探偵の多くが、エキセントリックな性格の人間離れした能力を持つものになって行ったのに反して、バークリーは、ごく普通の人間を探偵役に持ってきたかったようです。
それは父親に宛てた序文にも書かれています。
(探偵小説好きな父にささげるこの素直な文が、バークリーらしくないと言われているようです。どうも、後にはかなりひねくれた人だという評価になるらしいのですが……。)

ロジャー・シェリンガムは三十代半ばの人気小説家です。
並外れた好奇心を持ち、快活で、とにかくおしゃべり。

趣味が犯罪学で頭の回転も速いのですが、ごく普通の人間だから失敗もあります。
次々に推理を繰り出しては、突進し、迷走するというユーモラスな展開です。
余りのドタバタぶりに笑ってしまうくらい、おかしい場面もありました。

終盤には解決できるのだろうかと危ぶんでいたら、おっとこれは、呆然とする結末へ。

時代を感じさせず、非常に面白く読むことができました。

この事件に自信を得たシェリンガムは、以後積極的に探偵仕事に乗り出していくそうな。
後期になるほど、ユーモアだけでなく皮肉もしっかりきいてくるらしいのですが、迷走探偵ぶりがどうなっていくのか見てみたい気がします。


レイトン・コートの謎 レイトン・コートの謎 :アントニイ ・バークリー








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最終更新日  2006年07月24日 16時27分52秒
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