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カテゴリ:戦争ゲーム
![]() ↑ちょっと気合いが入ってきました。がんばります! 大国アメリカが没落した後の世界を想像しています…… その御伽噺第267話です。 「何をするつもりですか?」 と、加藤が天皇にたずねた。総理のときの感覚が戻ってきた。あの時は自衛隊の最高司令官だったのだ。つい艦長役をしている天皇が自分の部下のような錯覚に陥った。報告を求めるような口調になっている。加藤が総理大臣の時は軍人たちに常に報告を求めた。そうすることでシビリアンコントロールを維持しようとしたのだ。もっとも軍人たちは陰で勝手なことばかりしていたが……。潜水ポッドに特殊部隊を搭載して何をするのか。たった8人の隊員で敵の潜水艦を乗っ取るつもりなのだろうか。 「乗っ取ります」 と、天皇はあっさりいった。驚いた加藤の口が半開きになった。キムジョンナムは嬉しそうにうなずいている。天皇が、 「そのために訓練しています。潜水ポッドは潜水艦の船体に密着しハッチから中に進入します。救助の要領です」 と、いうと加藤は途方もない話だと、首を振った。そして、 「潜水艦なんか乗っ取ってどうします、連れて帰るのですか?」 と、いった。あまりにも危険すぎる。 「潜水艦は情報の宝庫なんです。中にあるすべての情報を収集、解析します。撃沈するのはもったいないのです」 あきれ顔の加藤に向かって天皇が微笑みながらいった。 一方、潜水ポッドでは橘一郎自らが操縦桿を握っていた。音は勿論、水温や海流、それに磁気の変化をどうキャッチするかがポイントだった。橘自身が考案した海中探査システムが稼働し敵の潜水艦を探す。 「私なら右後方から忍び寄るだろう」 そういいながら橘大佐は操縦桿をゆっくり右に倒す。ポッドにはスクリューの他に磁気推進装置が装備されていた。磁力の力で海水を後方に押しやる、いわば海中のジェットエンジンである。だが、スクリューのようなキャビテーションといわれる規則的な音を立てることがなかった。よほど注意しないと海中生物との区別が全くつかないのである。つまり潜水ポッドはその隠密性が優れているのだ。 「いた…」 と、右にあるモニターを眺めていた橘大佐が鋭くいった。すぐ後にいる特殊部隊の男が「しっ」と人差し指を口の前に立てる。残りの隊員たちが黙ってうなずく。人為的な物音は御法度なのだ。敵はすぐ目の前である。橘はサーチライトを照らした。水中では光がうまく進まないがやはり最後は目で確かめるのが一番である。探知システムの情報をもとに橘は慎重に潜水ポッドを操った。 「あれか」 橘大佐がいった。目の前に黒々とした潜水艦の船体が浮かび上がってきた。橘大佐は全く自分の予想通りにことが進んでいるので気持ちがよかった。回転しているスクリューが見えた。わずかな水流がくる。そのとき潜水ポッドががくっと揺れた。磁気推進装置から送り出される水の噴射が乱れたのだ。潜水艦からの水流の性だった。水流が乱れて磁気がうまく調節できない。橘大佐は落ち着いてスイッチを2つ3つカチカチと入れた。 「スクリューに変換する」 と、小声でいう。ポッドは潜水艦の後方から忍び寄り、ハッチの上にやってきた。この位置なら相手にもスクリュー音が聞こえるかもしれない。だが、相手がすぐにこの状況を飲み込むことはできないだろう。まさか、深海で海賊のように船を乗っ取りにきたなどと想像するものは潜水艦の乗組員ならまずいない。 橘大佐はモニターを見ながら潜水ポッドを相手の潜水艦のハッチの上に導いた。 「よし、接続する、シーケンス開始」 橘は小声でそう号令すると、赤いレバーをガチガチとギアチェンジのように2段階で前へ倒した。 潜水ポッドから赤いレーザービームが照射されポッドの下部にあるドッキング用の筒が、潜水艦のハッチに覆いかぶさった。軽い衝撃があった後、赤と黄色が点滅していた操縦パネルのライトが緑一色に変わった。 「侵入開始」 橘が号令した。 続く。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年02月08日 09時49分38秒
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