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倖和(サチナゴム)の妄想小説・・・

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2008年02月29日
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カテゴリ:戦争ゲーム
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↑ちょっと気合いが入ってきました。がんばります!

大国アメリカが没落した後の世界を想像しています……
その御伽噺第283話です。

食事の時間になった。

全員黙っていた。金縛りのお陰で心まで凍ってしまったようである。

ハリス大佐は鼻をすすりながら慣れない箸をかちかちと動かしている。彼はジョン、ジョンとぶつぶついっていた。朗らかだったキムジョンナムの顔からは笑顔が消えた。時々じっと目をつむっている。ほとんど食事に手をつけていない。

キム“教授”は黙々と食べていた。時々笑みを浮かべている。加藤はそれをみて、
「どうかしましたか」
 と、声をかけた。キム“教授”は加藤の方を向いた。

「あなたと初めて会ったときのことを覚えていますか」
 と、キム“教授”は頬張りながらいった。盛んに料理を口に運んでいる。
「ええ、覚えています」
 と、加藤はお茶をすすりながら答えた。

「通訳の女性を覚えておられますか」
 と、キム“教授”がいった。加藤はすぐに思い出した。すらりとした美人だった。
「彼女が私の前に現れました」
 と、キム“教授”はいう。ということは彼女は死んだのだろうか。キム“教授”は急に声を低くした。そして、

「裸でした」
 と、ささやくようにいった。予想外の答えに加藤はあごを引いた。幽霊が素っ裸で現れることがあるのだろうか。が、加藤は笑顔のキム“教授”の顔を改めて見て驚いた。頬がこけ目がくぼんでいる。何か生気を奪われているようだ。

キム“教授”によると、その女性とはソウルでの戦闘の最中にはぐれたらしい。美人だから中国兵士に見つかればおそらくただでは済まないだろう。それだけがキム“教授”の心配だった。彼は家族がありながらその女性と愛人関係にあったのだ。

「彼女は中国兵士に見つかった時、自決したようです。そのことを私に言いにきました」
 と、キム“教授”がいった。それが彼にとって彼女の自分に対する純愛の表現に感じたのだ。だが、彼の表情とは裏腹に彼は一度に年を取ったように思われた。加藤には、キム“教授”がその女性に命を吸われているような感じがした。

加藤はキム“教授”の様子に危険を感じた。このままでは本当に命を落としてしまうのではないだろうか。その女性に呪われているのではないだろうか。

そのとき、加藤の下腹に力が入った。この感覚は、と思っているとキム“教授”の後にその女性が立っている。加藤は心底恐怖を感じた。その彼女は血まみれで腑がはみだしている。その目はじっとキム“教授”の背中を見つめていた。




続く。












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最終更新日  2008年02月29日 08時56分38秒
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