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萬華鏡-まんげきょう-

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2006年08月29日
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カテゴリ:能狂言

第32回神遊「ろうそく能」
於:観世能楽堂

平成18年8月25日(金)午後7時00分開演



番組表(敬称略)



◆番組表◆(敬称略)

・解説 観世喜正
 
・狂言【内沙汰】(うちざた)
 シテ(右近)野村萬斎  アド(妻)石田幸雄  後見 竹山悠樹

・ろうそく能【恋重荷】(こいのおもに)
 前シテ(山科荘司)後シテ(荘司の亡霊) 観世喜正
 ツレ(女御)武田文志
 ワキ(侍臣)殿田謙吉
 アイ(御所の下人)野村万之介
 笛 一噌隆之 小鼓 観世新九郎  大鼓 柿原弘和  太鼓 観世元伯

 後見 観世喜之 弘田裕一
 地謡 岡 久廣 浅見重好 松木千俊 遠藤和久
    武田友志 坂井音雅 坂井音隆 坂井音晴

第32回 神遊ろうそく能「恋重荷」




和泉流狂言「内沙汰」

【感想】
※お詫び
以前、市川文化会館で行われた「市川狂言の夕べ」のレポートにて「留メ」(終わり方)の台詞部分を間違った解釈で思い込んでいましたので、今さらながら訂正・お詫び・・・(汗)

訂正後のあらすじはコチラ・・・狂言「内沙汰」

「内沙汰」という狂言は今年2度目の鑑賞です。
数年前まで萬斎さんはこの内沙汰のシテを1度しかしたことがない、と仰っていました。
ちょっと夫婦の痴話喧嘩というか、その内容も「色めいたものだけに、万作さんはあまり好まれなさそう?と思いきや、大蔵流の善竹弥五郎さんの名人芸として有名だった「右近左近」に興味を持たれて、お若いときにお父様である故・六世万蔵さんに「内沙汰」をやりたいから教えてほしい、と申し出たそうです。

上記にも書きましたが、肝心な終曲部で誤った解釈をしていたためにまたも考えさせられました(苦笑)

同曲として取り扱われる大蔵流の「右近左近おこさこ」では、訴訟の家庭内リハーサルで地頭に扮した妻があまりにも左近の肩を持つのでキレた右近が『お前、左近と浮気してるだろ。俺はずっと前から知ってたんだぞ』と責め立てます。すると妻は手を口元へ当て『はっ』とした態度を見せます。
明らかに「黒」です。

これに対して和泉流の「内沙汰」では同じような展開の後に妻が取る態度は大して大袈裟に慌てる風でもなく、驚くような型もありません。むしろ見所へ無表情のまま向かい、心の中は察することが出来ません。
より謎めいていて、「白なのか黒なのかよくわからない」のです。

とはいえ、「狂言三人三様(茂山千作の巻)」での万作さんのインタビュー箇所を読むと「コキュ(妻を寝取られた)された百姓の男の話」と書いてありますから、これは「黒」と見ていいのかもしれません(笑)

ここの部分の表現の仕方がより生々しく感じさせないように、和泉流ではサラっと流し、品を保っています。

留メ(終わり方)もまた和泉流と大蔵流では違ってきます。
大蔵流の右近左近では、客席に向かって『笑うなら笑え!笑え!』と自嘲気味、自虐的な台詞で終わります。これは観客を煽るような、そんな感じさえもしますね。
ここでドーっと笑いが起こるわけです。
どちらかというとクライマックスで笑わせる、感じが強い。
笑ってもらうことで、情けないうだつの上がらない男(シテ)は救われるのでしょうか。

和泉流の内沙汰は妻が消えた方向に向かって『左近とおのれは夫婦じゃわい、やーい』と半ばキレ気味に叫んだあと(?)すごすごと揚げ幕に入っていきます。他の狂言でも観るような、シン・・とした余韻とシテの背中に切ない男の哀愁漂う終わり方。
こちらのほうが、笑って済まされない今後の夫婦の行く末が気になってしまいます。

私が勘違いしていた『身共とおのれは夫婦じゃわい、やい』(どうしたら聞き違えるのだ?思い込みってオソロシイ・苦笑)の締めくくりのほうが断然ハッピーだと思うのですけれどね(苦笑)

どちらにしても「右近左近」のほうが、泥臭いイメージが強く、このような話は洗練された和泉流の「内沙汰」よりも安心して笑い飛ばせてしまう、そんな気がしますが、狂言らしい品格は和泉流のもつ構成なのかなぁ~。
右近左近は善竹家の(十郎さんのシテ)でしか拝見したことがないのですが、茂山家でもよく演じられるようですね。千作さんと千之丞さんと比較しても印象が違うとか・・・。

やはり狂言って演じる役者の雰囲気にもよるのかもしれません。
萬斎さんのように百姓にしては色の白い若々しい役者より、ひょっとしたらもう少し年齢を重ねられて「老いの侘しさ」が感じられる役者のほうがしっくり来てしまうのかもしれない(笑)
とはいえ、内沙汰には大蔵流にはない「訴訟リハーサルで左近の役回りを流暢に行う独壇場の演技」は見もので後半自らを演じる右近との対比がまた面白いので、甲乙はつけがたいですね。
万作家贔屓の私が観たいのは、万之介さんの右近、かな?絶対にかわいいと思う(笑)

※参考文献「狂言三人三様(茂山千作の巻)」
狂言三人三様(茂山千作の巻)




【1】レポ後記・・・

最初に観世喜正さんの解説付きでした。
恋重荷の解説だけではなく、流暢に狂言の解説もされるご様子に感激の眼差しを送っていました。
「えーっと」とか「あの」とか、そういう言葉の詰まりが全くない、頭の中でしっかりと言葉を組み立てしっかりと解説なさるので、とても分りやすかったです。

その解説の内容は、観世流能「恋重荷」のレポートとともに、後日まとめてみようかと思っています。

解説が終わって、切り戸口へ戻られるとき、ゆったりと優雅に歩かれていました。
あー、いいなぁー、所作が美しいなぁ・・・などと、まったり考えつつ、内沙汰は始まりました。

はい。この日の萬斎さん(おまたせー)

帰宅直後、掲示板にも書き散らしました。が、にほんごであそぼ「伊呂波」のように、きっかり七三分け(笑)
裕福でない百姓という設定の割りに、「おぼっちゃま風」で育ちのよさが隠せない、そんな感じ(笑)←不惑を迎えられた方に「おぼっちゃま」はないと思うのであるが・・・

後半に向け、額が付くほどに土下座をしまくり、髪を振り乱し、さっきまで綺麗にセットされていた御髪はどこへやら(笑)
「鬼太郎」もしくは「花形満(By 巨人の星)」

最後に怒った妻に投げ飛ばされてしまう右近@萬斎さんですが、本気で蹴躓いた?と思うほど「ドタッ」と見事な倒れっぷり(笑)

倒されたって奥に消えた妻を「指差し」
((_ヾ(≧血≦;)ノ_)) 「左近とおぬしは夫婦じゃわい、やーーーーい!! 」

ちょっと子どもじみた喧嘩のようでいて、憎めないながらも、狂言「鎌腹」を思わせる、へっぽこ夫は2度見てもたくさん笑えました♪

訴訟の部分など少し聞きなれない言葉が理解しにくいという声が他に多くあったようなので、パンフレットに語句解説などが付いていたらありがたいかも・・・狂言公演じゃなきゃ無理かな・・


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最終更新日  2006年09月08日 17時03分43秒
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 難しいなぁ   ルビコン さん
なんか、随分と余韻の違う曲なんですね。
大蔵流と和泉流の違いはその流派の狂言に対する接し方というか、考え方の違いがよく分かるものなんですね。

結局、妻は黒っぽいんだ。
そんな話をどう上品に(上品になるのか?)、尚且つ
夫をどう演じるのか非常に難しいんですね。
とても演じ手も見る側もその人の価値観とか経験が大きく左右して、
みんなが皆、同じ感想を持つという事のない難しい曲なんだなぁというと感じました。

なんだか感想がメチャクチャで読み辛いですね。
すみません。(苦笑)


次は「恋重荷」のご感想ですね♪
こちらは、「花よりも花の如く」で予習済みなので楽しみです。 (2006年08月29日 21時54分49秒)

 Re:【1】第32回神遊 ろうそく能より-和泉流狂言「内沙汰」-(08/29)   Arabesqu さん
観世喜正さんの解説は、2,3回お聞きしたことがあるのですが、いつも、きちんと整理された内容のお話で、とてもわかりやすいですね。それと、やはり、サラブレット的な育ちの良さを感じます。

そうか、正月に見た「内沙汰」に比べて、今回なんとなく違和感があったのは、髪の毛のせいかも~なあ。

私も、是非、万之介さんで拝見したいです。 (2006年08月30日 14時30分19秒)

 ルビコンさん   あめみこ さん
残す余韻は両派で違いますね~。
大蔵流のほうが「ざっくばらん」な感じではあるんですが、いかにも「黒」なので(苦笑)ちょっとお堅めの山本東次郎さんのお家ではどんな感じだろうとレポートを色々探してみたものの、あまりされてないようですね。殆ど茂山家か善竹家でした。

内容が内容なのに、下世話になりすぎず品格を保っているように思えるのは不思議です。
謎を投げかけてその余白を観客に考えてもらおうとするような狂言は、十人十色の感想が出てきますよね~。こうかな?って思っても他の方が違った解釈で書かれていたりすると、とっても面白いです。なるほどーって。
感想がメチャクチャだなんて、ルビコンさんの仰りたいこと、大きく頷きながら読みましたよ♪
ありがとうございます。 (2006年08月30日 20時27分51秒)

 Arabesquさん   あめみこ さん
Arabesquさん 

当日、どの辺りにいらしたのかなーなんて思っていました(笑)同じ公演を楽しめて嬉しいです。
すでに喜正さんの解説は何度かお聞きになってらっしゃるんですね。私はお初だったのでこれもまた楽しみにしていきました。公演の後に曲解説をしてくださるシテ方さんもいらっしゃって、こちらもいいのですが、上演前に分りやすく解説くださるのも嬉しいですね。
どっちもあったほうが・・・より嬉しいけれど(爆)

お正月と印象が違いましたか?私は先日の市川との違いはそれほど感じませんでしたが、まぁ、1ヶ月程度しか経過してないからかな(笑)
年初めよりまた違った解釈や想いをもたれたのでしょうか。気になりますね。 (2006年08月30日 20時31分22秒)

 深い。   しおり さん
最近笑える素直な冠者ものよりも、この手が好きですね。あめみこさんのブログは、本当に『復習』にももってこいです。それなりに知識やある程度の舞台(観劇)経験があると、知っている分、自分が書き込むならはしょりたくなる部分が沢山。
知ってるはずなのに「ああ、そうだったっけ??」と、思うことが多いのは結局忘れているのでしょう(苦笑)

(2006年08月31日 09時13分10秒)

 Re:【1】第32回神遊 ろうそく能より-和泉流狂言「内沙汰」-   袋♪ さん
面白そうです!
やっぱり私は訴訟リハーサルがみたいから和泉流かな。
終わり方の違い、どーにでもなれぇ的な大蔵流もスカッとしていいですが、和泉流のキィーっとなった後のしょぼーん。。。も悲しみの中の滑稽さがあって…この夫婦の後を考えおよんでしまう余韻が舞台の深みを出してるよーな気がします。
花形みつるの乱れ方も見てみたいわぁ( ̄▽ ̄) (2006年08月31日 14時08分17秒)

 やーいやーい   綾花 さん
大蔵流の「右近左近」のがわかりやすそうですね。
にしても最初「うおうさおう」と読むのかと思っていたおバカです
『笑うなら笑え!笑え!』、大蔵流ですね~でもなんだかその自嘲ぎみの哀しいおかしさっていい

万之介さんの右近に同感です!絶対巧い!

そうなんですよね、切り戸口へ戻るとき、後見として出る時、囃子方の退場の仕方なども見所は所作を見ている。
美しいなぁと思わせる人はもちろん本番も美しいわけで・・そうでない方はやはりと感じます。

萬斎さんの乱れ髪も貴重でした、素敵な時間は短いものですね。 (2006年09月01日 15時49分54秒)

 Re:【1】第32回神遊 ろうそく能より-和泉流狂言「内沙汰」-(08/29)   黒兎 さん
流派によっても、演者によっても、幾通りにも感じられる、それが狂言であり、良さなんですね。
単純に素直に笑える曲が狂言の真骨頂だと思いますが、こういう演目も色々考えさせられていいですね。

観世喜正さんの所作…美しいんでしょうね~、やはり「型」を習得されている方の動きは違う…。
娘達がお茶を習っているのですが、大きい生徒さんの所作はやっぱり全く違うなーと思います。
つくづく、「型」の習得というのは大事なんだと思わされますね。

PCからこちらに来るのは久しぶりなんですが、字が大きく見やすくなったんですねー!←年寄りか?
夏休みも終わって、またちょっとはPCに向えそうです( ̄m ̄*)


(2006年09月02日 00時06分48秒)

 しおりさん   あめみこ さん
しおりさん こんばんは。

もうただ笑えてスッキリな狂言ももちろん、絶対的に楽しいのですが、ちょっと考えさせられる、謎を残す、余韻を残す作品が好きになってきましたね。

復習。そう言って頂けると嬉しいですね。
私も自分自身の復習のためですね。
基本的に「書かないと」自分なりに解釈して記憶できないタイプ。ゆえに、ここを利用しています。
しおりさんのお役にも立てて、嬉しいな~。

でも、だから結構自分本位なレポになりがちなんですよ(苦笑)恋重荷もなかなか知識が浅いので、なかなか書けぬのです( ̄▽ ̄:) へへ

とはいえ、自分が過去に書いた日記を読み返して「ああ、そうだったっけ」と忘れていることも、盛りだくさん(汗)

追伸★RSSって、トップページを下に下ろしてきた時に表示されている「RSS」のことかな?はてなRSSリーダーは利用しているのですが、自分のところの設定はしたことがないので、これでいいのか・・(汗)

(2006年09月02日 22時16分09秒)

 袋さん   あめみこ さん
袋♪さん こんばんは。

そうですね、袋さんにはきっと和泉流の構成のほうがお好みなんじゃないかって思いますよ。
「ムキィーーーーーッ」となって「しょぼーーーん」その落差がまた面白くて、まさに「ムキィー」は止動方角のふくれっつら太郎冠者と似たものがあります(笑)
すっきり終わるのは止動方角で、好きなのもコッチですけれどね~♪
髪の乱れっぷりも、内沙汰は止動方角並み??!! (2006年09月02日 22時18分53秒)

 綾花さん   あめみこ さん
綾花さん

「うおうさおう」
右往左往・・・右近左近。

ぷー(笑)でも本当、あの右近はまさに「右往左往で目を回しちゃった感じ」ですもんね(笑)
狂言の演目名って(能もそうですが)読みづらいものってありますよね。結構知らずに口走って恥ずかしい思いをしそう・・文字だとバレませんがね←いつも読み間違えるワタシ(爆)

>万之介さんの右近に同感です!絶対巧い!

いいでしょー?!もっともっと泥臭くっていい感じじゃないかって思うんですよね。これは万作さんよりも万之介さんだと思いますね。

綾花さんもしっかりと、切戸口から退出される後ろ姿のチェックはされているのですね~。
はい、後見の方々も結構見ちゃいますね。はい、畏れながらまだお弟子さんのご身分の方が後見に出られるとき、身のこなしが少し雑に感じる方も・・いえ、普通の人と比べれば立派なものなのですが・・(苦笑)でもまだ役が与えられていないので、これからそんなところもグっと美しい所作になっていくの、かな?
いやはや能楽師の方々ってすごい・・・言うのは簡単なんですけれどね(苦笑)
単にお道具を持ってくる、帰っていく、その姿にさえも所作の美しさってにじみ出てしまうんですね。
萬斎さんも何気なく後ろを向いて去っていくときも美しい。喜正さんもすごーく美しい立ち居振る舞いでホレボレしちゃいました。

(2006年09月02日 22時27分38秒)

 黒兎さん   あめみこ さん
黒兎さん こんばんは。

>流派によっても、演者によっても、幾通りにも感じられる、それが狂言であり、良さなんですね。

そうなんですよね!だから同じ演目を何度か見ても面白い、というか・・・。数年後は同じ演者でも印象がまた違ってきたりするものでしょうし。能狂言って深いですよね!

観世喜正さん。物腰の柔らかいお話のされかたをするのはテレビでもよく拝見していますが、実際も本当に滑らかにお話になって。言葉遣いも美しく、そして切り戸口から出て行かれるとき(腰をかがめて)も優雅で美しくて・・・。

>娘達がお茶を習っているのですが、大きい生徒さんの所作はやっぱり全く違うなーと思います。
>つくづく、「型」の習得というのは大事なんだと思わされますね。

まぁ!お嬢様たちお二人とも茶道を??
初耳です。そして素晴らしい♪今から美しい身のこなしを身に着ければ自ずとその所作は出てきますよね。美しさは全て型にある、頷けます。

>字が大きく見やすくなったんですねー!

そうなんですよ。小さいほうが観た目は綺麗なんですよね、すっきりして。でも読みづらいので←自分でも(負けず年寄り臭い・苦笑)

>夏休みも終わって、またちょっとはPCに向えそうです( ̄m ̄*)

おめでとーございます(笑)
長かったですね~。これからは敦と狐もあるし、たっぷりとネットで色々と情報をゲット(笑)気分を盛り上げたいですね♪
(2006年09月02日 22時35分07秒)


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