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カテゴリ:作家別か行
ある一人の黄金の少年が僕を見つけたとき僕は野犬と変わりなかった。時は19世紀半ば。アルザスからいつの日かパリへ。反発しながら強く惹かれ合う二人の少年―。第17回太宰治賞受賞作。 ↑「BOOK」データベースより いつも本選びの参考にさせていただいているブログBIBLIO HOLIC様で知りまして。 トーマの心臓が大好きな私としては早速読まなければと! …でも新刊ではもう買えないんですね。 中古も値上がってしまっていて、今回は図書館で借りました。 読み終えてみて、これは絶対自分の本棚に欲しいので、買う事にしました。 高くても良い! まずはしがきにかえての部分からぐっと惹きこまれます。 或る一人の黄金の少年が、僕を見つけた時、僕は野犬と変わりなかった。 それから僕は、どんな者となったか。 恐らくは、拾われた野犬で在り続けた方が罪少なく生きられるだろう。 僕と彼を繋いでいる紐はなんだろう? それが分からないので、僕らは、完全な主従にも友人にも、兄弟にもなれずにいる。互いに異端である僕らを繋ぐものは、血縁や思想の類ではない。気まぐれや愛着を、縁であり愛であるというのなら、確かに、僕も彼も、互いを手放せやしない。 (本文よりの引用) ちょっとどうですか!! もう読みたくなったでしょ!! 貧しい暮らしをしながらも野心を持つ少年エーミールが、天使の様に美しい上に裕福だけれど身体の不自由なウジェーヌに出会う事により、違う世界へと飛び込んでいく事になる。 ここまでだとエーミールの下克上物語みたいな話かと思うけれど、そんな事はなく。 エーミール>ウジェーヌ かと思いきや ウジェーヌ>エーミール へと変貌していくのがこのお話の醍醐味かと。 いえ、経済的には常にウジェーヌが上だし、エーミールはウジェーヌの従者なんだけれども。 さらにはきっと互いを思う複雑な気持ちは エーミール=ウジェーヌ であるんだけれど。 二人は互いに離れられないんですよ。分かっているんだけれど、対等な形になれない。対等な形を作れないから、形と一緒に気持ちも歪んでいく。歪むほどにそれは強くなる。 あとは文章がとてもいい。 付箋付けまくって読みました。覚えていたくて。 いくつか印象深かった言葉を引用させていただくと 経典をなぞることが信仰か。---いや、自分が神の目の中にいることを意識した上でどう生きるか、それが人間の自由であり、生きにくさであるのだ。 自分の手足を見てみれば、藻掻けるように最初から形造られているということに、僕は神と呼ばれるそれの存在を見る。 君が女だったら、話はもっと簡単だったのにな。愛人をこしらえるのはたやすいことで、よくあることなのに、友人と友人でいるのは、どうしてこう困難なんだろう。 学校に入ったら、面白いと思える科目と、尊敬できる先生と、逃げ場所を見つけろって。好きな勉強があると楽しいでしょう?好きな先生がいると頑張りたくなるでしょう?それとね、嫌なことや怖いことがあっても、安心できる場所があれば、大丈夫だって。逃げ出したくなることがあったら、賢く逃げろって。そしたら恥でも負けでもないって。 もっとあるんですが、この辺で; 一番好きな言葉というか、ウジェーヌの気持ちの吐露にぐわーっとくるのが341ページから!すっごく好きです(*´д`*) ウジェーヌ、エーミールは当然の事。 フリードリヒ、リシャール、フランツ・ローテと好きな登場人物は沢山! 私はフリードリヒが一番好きだなぁ。 実は彼が一番に成長したのではないでしょうか。 少年期の輝きとも、友情とも、愛情とも、はたまた少年愛(ではないですけど)的な側面からも、全方位攻撃ですよ。 すごい本でした…。 すごい本でした…!!! 小島小陸さん、他には出していないのかなぁ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
こんばんは!
一滴の嵐良いですよね! ウジェーヌのエーミールに対する裡に秘めた情熱がね、もうもう! これは本当に名作だと思います。 小島小陸さんの他の著作もぜひ読んでみたかったなあ…残念。 (2012.09.22 02:21:00)
惺さま
コメントありがとうございます! 本当に!素敵な作品ですよね…! 二人の関係が素晴らしすぎる。 惺さまのおかげでこの作品に出会えたことを感謝しています。 他の作品も読んでみたかったので、本当に残念です(´・ω・`) (2012.09.22 20:51:31) |