テーマ:足下を掘れ(72)
カテゴリ:サッカーの話
鹿島アントラーズが優勝した。
サッカーのJリーグの話だ。 優勝したから言うわけではないが、僕はアントラーズのファンだ。 サッカー用語ではサポーターという。 でも、スタジアムへ行って、観戦したことはない。 テレビで応援しているだけ。 ゆえにチケットやグッズを購入して、アントラーズの経営に貢献しているわけではないので、サポーターといっていいかどうか、申し訳ない気がする。 もともとサッカーが好きだったわけではない。 むしろ、嫌いだった。 中学の頃、「赤き血のイレブン」という梶原一騎原作のマンガがあった。 サッカーをやっていた連中は、その影響が大きかった。 そして、どちらかというと、不良の集まりでもあった。 僕は、いじめられっこだったので、不良グループは“敵”であり、サッカーも遠ざけるべきものだった。 サッカー自体も、あの頃は面白いものではなかった。 オフサイドのルールがあったかどうか覚えてないが、敵が攻めれきたら、守りはすぐにコート外へけり出すのが使命だった。 僕はいつも、はじっこで守る係りだったので。 へただから守りに回され、へただから敵に抜かれて得点される。 前線にいる番長グループから罵倒され、あとでプロレスワザの洗礼を受ける。 面白いはずがない。 以来サッカーには忌まわしい思い出しかなく、距離を置くものとなった。 それから20数年後、仕事で鹿島市に行くことになった。 建築の仕事に移ったばかりのころ。 確か図書館か何かの新築工事だったと思う。 後によく通うことになる鹿島市に、その時初めて行った。 すごい田舎だった。 何もない平地を、一本道が続いているという感じだった。 そして、その平地のところどころに、看板が立っていた。 はっきり覚えているわけではないが、サッカーチームを誘致しよう、という内容だったと思う。 あれは何なのかと同僚に聞いたところ、日本にプロサッカーリーグを作る動きがあり、鹿島市も参加を申し出ているのだという。 ありえない。 そもそも人が住んでいないではないか。 確かにサッカー場はいくらでも創れるだろうが…。 プロサッカーリーグが日本で採算ベースに乗るのかがそもそも疑問でもあった。 たまたま同僚が少し情報を持っていたことから、プロサッカーリーグについて興味を抱くようになった。 サッカーに対してではなく、プロリーグを作ろうというプロジェクトに対して。 いろいろ判って来ると、川渕三郎という人物が浮かび上がり、その人の理念と言うものを知ることになる。 僕の頭では、プロ野球リーグのサッカー版という風にしか思っていなかったのだが、どうもそうではないらしい。 野球で言えば、企業が宣伝のためや、電鉄なら乗降客確保のためにチームを持つ。 ところがこちらは地域がチームを持つのだという。 サッカーチームが地域の発展につながり、誇りになる。 理念としては斬新で、成功すれば素晴らしいことだ。 このプロジェクトに賛同して、推進する人たちの理想に感動してしまった。 つまり、この田舎町の鹿島に生まれたサッカーチームが成功することが、このプロジェクトの成功を意味する。 僕はこの時から、鹿島に生まれるチームを応援しようと思った。 情報をもたらしてくれた同僚は読売のファンで、カズやラモスの名前も彼から教わった。 鹿島に関しては、リーグに参加するのは無理じゃないかという話もしていた。 でも、なんとか最後の1チームに滑り込みで認められ、僕の楽しみは広がった。 16年前の、あの驚きは忘れない。 日本に誕生したプロサッカーリーグ・Jリーグの鹿島アントラーズの第一戦。 久々にテレビで見たサッカーの試合は、僕の知っていたかったるいサッカーとは全然違うものだった。 スピード・パワー・テクニック全てが予想をはるかに超えているものだった。 ジーコという世界のスーパースターが放ったジャンピングヒールキックに仰天した。 あの日から、僕はJリーグに夢中。 アントラーズは強豪チームとして、初年より君臨し、今年も優勝。 あの、田舎のチームが…。 企業色がぬぐいきれない元読売のヴェルディは、J2に降格。 16年間色々ありました。 僕の仕事も変わり、心の持ちようも変わった。 建築の仕事は、都心も地方もあちこち行かせてもらい、ずいぶん視野を広げさせてもらった。 新たな技術も身につけ、自分の可能性に目覚めさせてくれた。 しかし一方、様々なストレスが心身を痛めつけた。 その経験で、さらに心の勉強ができたということもあり、辛かったけどありがたい経験だったのも確か。 アントラーズも浮き沈みがあったし、僕も浮揚感と脱落感の交差する期間でもあった。 これからもそうだろう。 人生はそういうものだ。 新しい扉の向こうには、新しい楽しみが待っている。 君もがんばれ、僕もがんばる。 そういえば、今年最後まで優勝を争ってのは、あの緒戦でアントラーズにぼこぼこにやっつけられた名古屋グランパスだった。 月日は巡る、敵も味方も。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年09月05日 08時14分32秒
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