テーマ:原発を考える(30)
カテゴリ:原発
シンガーソングライターの斉藤和義が、自らのヒット曲を替え歌にして、"反原発"の曲をYouTubeにアップした。 現在は削除されているが(たぶん著作権を持つレコード会社の意向)、コピーされたものがどっと広がっている。 画像と、歌詞おこしは以下の通り。
作詞作曲:斉藤和義 「ずっとウソだった」 この国を歩けば原発が54基 俺たちを騙して言い訳は「想定外」 ずっとウソだったんだぜやっぱバレてしまったな この街を離れてうまい水見つけたかい? ずっとクソだったんだぜ東電も北電も中電も九電ももう夢ばかり見てないけど ずっと嘘だったんだぜほんとクソだったんだ
斉藤和義は現在44歳なので、1986年のチェルノブイリ事故のときはまだ19歳、山梨学院の大学生だ。 多感な頃なので、事故とその後の反原発運動に影響されていれば、心に大きく刻まれていたはず。 少なくともミュージシャンであれば、忌野清志郎の存在は大きかっただろうし、広瀬隆も知っていたと思う。 誰かのツイッターで、あの頃の反原発運動は"ファッション"で、原発推進は"経済活動(利権)"だったので、勝てるわけがないと書いていた。 確かにあの頃の反原発運動は、ただの流行だったのかもしれない。 90年代にはすっかり影を潜めてしまった。 しかし、流行で訴えていた危険が、現実に起きてしまったではないか。 今考えてみると、“原発推進”の方こそ、むしろ世界の流行だったのではなかろうか。 冷静な判断をすれば、国も電力会社も、原発を持たない道を模索するべきだった。 広瀬隆の本を本屋(BOOK-OFF)で探して、『恐怖の放射性廃棄物(1999刊)』という文庫本を見つけた。 94年に発刊した『ドイツの森番たち』の、さし迫る問題に焦点を絞った文庫版だった。 ドイツで行われた原発撤退と、エネルギー革命のルポルタージュである。 前書きにこんなことが書いてある。
日本では、プルトニウムを取り出すため93年4月に青森県・六ヶ所村で再処理工場の建設がはじまり、さらに福井県・敦賀市の高速増殖炉"もんじゅ"が臨界(原子炉で原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で継続している状態)に達し、プルトニウムの連鎖反応がはじまる最大の山を迎えていた。 ところがこれと同じ計画を進めてきたドイツの原子力産業が、89年にヴァッカースドルフ再処理工場を断念し、続いて91年にカルカー高速増殖炉を断念して、"プルトニウムを放棄する政策"を実行に移したのである。さらにドイツニ大電力会社の社長が、コール首相あてに事実上の原発撤廃の提言を行った。 世界的潮流に、決定的なリーダーシップを発揮しはじめたのがドイツ人であった。「原発を止めると停電する」という言葉が、いかに事実とかけ離れた宣伝文句にすぎなかったかを、この国のあらゆる階層の人々が、生活の中で証明しはじめたのだ。「核時代」崩壊の震源地、それがドイツである。
世界中が原発推進のレースに挑んでいたのだと思っていたが、ドイツは20年前に核を捨てる道を選んでいた。 チェルノブイリ事故を起こしたウクライナ(当時はソ連)から距離が離れていない緊迫感もあっただろうし、森を愛したドイツ人のDNAによるところも大きい。 福島原発事故の報を受け、直ちにドイツ国内のすべての原発を停止させたメルケル首相の判断は、国民総意のものであったのだ。 ある程度の知識を持つ人たちにとって、福島原発事故の最悪のシナリオはチェルノブイリだったと思う。 それが、遅くなったとはいえとりあえず止めることができたので、最悪からは逃れられたとホッとしている。 あとはチェルノブイリのように、発電所すべてを"石棺"で塞ぐまでの道のりを行けばいいと。 しかし、この本には新たな最悪のシナリオが述べてある。
プルトニウムの臨界反応が起これば、地底で勝手に原爆が生まれ、すべてを吹き飛ばす恐怖がある。事実アメリカのハンフォード再処理工場では、高レベル廃棄物の液体が大量に漏れた時、砂漠の中でプルトニウムが原爆に変わる寸前に発見され、危機一髪で核爆発の大惨事をまぬがれた、歴史上に名高い1973年の漏洩事故がある。 ソ連では1957年にウラルで起こった核惨事が、その廃棄物の「プルトニウム原爆化」による大爆発と推定されている。人類が果てしなく生産し続けるプルトニウムを、臨界量未満のわずかずつに分けて処分するには、容器などに天文学的なコストがかかり、絶望的である。しかも容器がいずれボロボロになって消えることを地質学者が証言した現在、全世界の高レベル廃棄物処分場に待ち受けているのは、間違いなく起こる放射線汚染の問題、壮大なカタストロフィーである。 日本では六ヶ所村がその震源地の最有力候補である。 青森県は、何年後かに、間違いなく、この世から消えてなくなる。 その目の前にある北海道や、東北地方という地名は、原爆120万発分の放射能汚染によって人類が住めなくなり、「かつてこういう土地があった」と言われるようになるのだろうか。そうではない。日本が消えるのである。 日本では、現在、一年間に広島原爆4万発分以上のウランが核爆発している。原子炉の内部で。
本書は核廃棄物を再処理する計画の無謀に対して、警鐘を鳴らしている。 それを、福島原発を廃棄に当てはめると、大量のプルトニウムをいかに頑丈に包囲したとしても、新たな危険が生まれるということを語っている。 つまり、福島のプルトニウムをそのまま埋めてしまうと、地下で臨界に達し、原爆が生まれてしまう危険がある。 そうでなくても100年後には鉄板とコンクリートの壁を破り、プルトニウムは洩れ始める。 もれたプルトニウムが地下水に反応し、水蒸気爆発を起こす。 それに反応し、やはり原子爆発が引き起こされる。 福山雅治がタイムスリップして「あなたの玄孫です」と先祖に会いにくるTVコマーシャルがあるが、僕の玄孫はいない可能性が高い・・・。
最後にもう一曲、反原発の曲を。 1988年8月発売。
『警告どおり 計画どおり』作詞・作曲 佐野元春
歌詞からいうと、当然放送禁止なのだが、佐野元春の歌は何言ってんだか解らないのでセーフらしい。
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最終更新日
2015年03月10日 15時10分29秒
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