テーマ:伝えたいこと(98)
カテゴリ:原発
3・11以降、原発が頭を膠着させている。
30年前、原発は反対だと署名運動に参加していたのに、いつのまにか生活に追われ知らん振りをしていた。 あの頃言われていた危険が、現実になり、未だに進行しつつある。 今の時点では、事故の推移を見守るしかないが、当初から見せ付けられていることで疑問を抱くことに、原発に関わっている人間で(特に上層部に)、原発の知識をちゃんと把握している人間が少ないのではないかということだ。 東電の偉い人や、何とか委員会の人は、明らかに"天下り"の素人だし、専門家と称される学者は、みんな政府・電力会社に都合のいい御用学者だ。 30年前に僕が持っていた原発が危険であるという知識と、彼らの執っている行動には随分隔たりがあった。 そして、現在命をかけて作業している作業員も、長靴を履かずに水に浸かって被曝するなど、あまりにお粗末な認識しかない。 体育館で寝泊りして懸命の作業を続けている彼らに、どれだけ原発の知識があるのだろうか。 そんな疑問を抱きながら、原発について調べていると、興味深いレポートをネットで発見した。 著者の平井憲夫氏は、20年間原子力発電所の現場にいた、配管の現場監督だった。 自身は原発反対運動家ではないと但し書きをつけているが、原発側にいた者の内部告発である。 驚いたのはこれが書かれたのが、阪神大震災の翌年、15年前だったことである。 福島原発の事故を、この時点で予測している。 地震の翌日、神戸に行き、新幹線の線路が落下したり、高速道路が横倒しになっているのを見て、原発の現場の問題点との共通点を見出したと言う。
世間一般に、原発や新幹線、高速道路などは官庁検査によって、きびしい検査が行われていると思われています。しかし、新幹線の橋脚部のコンクリートの中には型枠の木片が入っていたし、高速道路の支柱の鉄骨の溶接は溶け込み不良でした。一見、溶接がされているように見えていても、溶接そのものがなされていなくて、溶接部が全部はずれてしまっていました。 なぜ、このような事が起きてしまったのでしょうか。その根本は、余りにも机上の設計ばかりに重点を置いていて、現場の施工、管理を怠ったためです。それが直接の原因ではなくても、このような事故が起きてしまうのです。 原発でも、原子炉の中に針金が入っていたり、配管の中に道具や工具を入れたまま配管をつないでしまったり、いわゆる人が間違える事故、ヒューマンエラーがあまりにも多すぎます。それは現場にブロの職人が少なく、いくら設計が立派でも、設計通りには造られていないからです。机上の設計の議論は、最高の技量を持った職人が施工することが絶対条件です。しかし、原発を造る人がどんな技量を持った人であるのか、現場がどうなっているのかという議論は1度もされたことがありません。 原発にしろ、建設現場にしろ、作業者から検査官まで総素人によって造られているのが現実ですから、原発や新幹線、高速道路がいつ大事故を起こしても、不思議ではないのです。 日本の原発の設計も優秀で、二重、三重に多重防護されていて、どこかで故障が起きるとちゃんと止まるようになっています。しかし、これは設計の段階までです。施工、造る段階でおかしくなってしまっているのです。
〔これは、僕も建築の現場にいた人間として良く分かる。仕上がった建物はきれいに見えるけど、一枚はがせば裏側はとんでもない事になっている例はいくらでもある。まさか原子力発電所のようなところではありえないだろうと思っていたが、実際に設計通りに行われていないこともあり、それが原因で事故も起こしているのだという。〕
ひとむかし前までは、現場作業には、棒心(ぼうしん)と呼ばれる職人、現場の若い監督以上の経験を積んだ職人が班長として必ずいました。職人は自分の仕事にプライドを持っていて、事故や手抜きは恥だと考えていましたし、事故の恐ろしさもよく知っていました。それが十年くらい前から、現場に職人がいなくなりました。全くの素人を経験不問という形で募集しています。素人の人は事故の怖さを知らない、なにが不正工事やら手抜きかも、全く知らないで作業しています。それが今の原発の実情です。 現場に職人が少なくなってから、素人でも造れるように、工事がマニュアル化されるようになりました。マニュアル化というのは図面を見て作るのではなく、工場である程度組み立てた物を持ってきて、現場で1番と1番、2番と2番というように、ただ積木を積み重ねるようにして合わせていくんです。そうすると、今、自分が何をしているのか、どれほど重要なことをしているのか、全く分からないままに造っていくことになるのです。こういうことも、事故や故障がひんぱんに起こるようになった原因のひとつです。 また、原発には放射能の被曝の問題があって後継者を育てることが出来ない職場なのです。原発の作業現場は暗くて暑いし、防護マスクも付けていて、互いに話をすることも出来ないような所ですから、身振り手振りなんです。これではちゃんとした技術を教えることができません。それに、いわゆる腕のいい人ほど、年問の許容線量を先に使ってしまって、中に入れなくなります。だから、よけいに素人でもいいということになってしまうんです
〔福島原発事故発生時からの対処法の、どたばた振りを見るにつけ、素人が集まって運営していたというのは頷ける。原発安全神話を吹聴するうちに、本来危険性を認識していた人たちも、本当に安全なものだと勘違いしてしまったのだろうか。〕
原発は一回動かすと、中は放射能、放射線でいっぱいになりますから、その中で人間が放射線を浴びながら働いているのです。そういう現場へ行くのには、自分の服を全部脱いで、防護服に着替えて入ります。防護服というと、放射能から体を守る服のように聞こえますが、そうではないんですよ。放射線の量を計るアラームメーターは防護服の中のチョッキに付けているんですから。つまり、防護服は放射能を外に持ち出さないための単なる作業着です。作業している人を放射能から守るものではないのです。だから、作業が終わって外に出る時には、パンツー枚になって、被曝していないかどうか検査をするんです。体の表面に放射能がついている、いわゆる外部被曝ですと、シャワーで洗うと大体流せますから、放射能がゼロになるまで徹底的に洗ってから、やっと出られます。
〔僕は以前アスベストの解体などもやらされていたが、けっこう厳重な注意を受けてから作業に及んだ。装備もマスクはもちろん、外気を完全遮断するものであった。それを思えば、福島の作業員は放射能が相手なのに、装備が軽すぎる印象だった。〕
原発の建屋の中は、全部の物が放射性物質に変わってきます。物がすべて放射性物質になって、放射線を出すようになるのです。どんなに厚い鉄でも放射線が突き抜けるからです。体の外から浴びる外部被曝も怖いですが、一番怖いのは内部被曝です。 ホコリ、どこにでもあるチリとかホコリ。原発の中ではこのホコリが放射能をあびて放射性物質となって飛んでいます。この放射能をおびたホコリが口や鼻から入ると、それが内部被曝になります。原発の作業では片付けや掃除で一番内部被曝をしますが、この体の中から放射線を浴びる内部被曝の方が外部被曝よりもずっと危険なのです。体の中から直接放射線を浴びるわけですから。 体の中に入った放射能は、通常は、三日くらいで汗や小便と一緒に出てしまいますが、三日なら三日、放射能を体の中に置いたままになります。また、体から出るといっても、人間が勝手に決めた基準ですから、決してゼロにはなりません。これが非常に怖いのです。どんなに微量でも、体の中に蓄積されていきますから。 私はその内部被曝を百回以上もして、癌になってしまいました。癌の宣告を受けたとき、本当に死ぬのが怖くて怖くてどうしようかと考えました。でも、私の母が何時も言っていたのですが、「死ぬより大きいことはないよ」と。じゃ死ぬ前になにかやろうと。原発のことで、私が知っていることをすべて明るみに出そうと思ったのです。
〔放射線などレントゲンを受けた数字よりも低いとか、飛行機に乗れば何倍もの被曝をするとかの論調もあるが、本当に恐れなくてはならないのは、放射線物質を吸い込んでしまった時の内部被曝だ。たとえチリ一つでも、体内に取り込んでしまえば、そこで被曝し続け、確実に遺伝子を断ち切り、その細胞はガン化する。〕
原発で初めて働く作業者に対し、放射線管理教育を約五時間かけて行います。この教育の最大の目的は、不安の解消のためです。原発が危険だとは一切教えません。国の被曝線量で管理しているので、絶対大丈夫なので安心して働きなさい、世間で原発反対の人たちが、放射能でガンや白血病に冒されると言っているが、あれは"マッカナ、オオウソ"である、国が決めたことを守っていれば絶対に大丈夫だと、五時間かけて洗脳します。 こういう「原発安全」の洗脳を、電力会社は地域の人にも行っています。有名人を呼んで講演会を開いたり、文化サークルで料理教室をしたり、カラー印刷の立派なチラシを新聞折り込みしたりして。だから、事故があって、ちょっと不安に思ったとしても、そういう安全宣伝にすぐに洗脳されてしまって、「原発がなくなったら、電気がなくなって困る」と思い込むようになるのです。 私自身が二〇年近く、現場の責任者として、働く人にオウムの麻原以上のマインド・コントロール、「洗脳教育」をやって来ました。何人殺したかわかりません。みなさんから現場で働く人は不安に思っていないのかとよく聞かれますが、放射能の危険や被曝のことは一切知らされていませんから、不安だとは大半の人は思っていません。体の具合が悪くなっても、それが原発のせいだとは全然考えもしないのです。作業者全員が毎日被曝をする。それをいかに本人や外部に知られないように処理するかが責任者の仕事です。本人や外部に被曝の問題が漏れるようでは、現場責任者は失格なのです。これが原発の現場です。
以上さわりの部分を抜粋で紹介したが、全文はこちら http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html 平井氏は翌年死去した。 ソフトバンクの孫正義氏がツイッターで、「すべての人に読んで欲しい。皆で世界中の言語に翻訳しませんか」と発信したところ、「デマの古典」だとか、「科学的証拠にかける」とか、一斉に非難を受けていた。 これには唖然とした。 実際に平井氏の予言したとおりに、事故が起き、被害が広まっているさなかで、デマだという話を信じている、“原発教原理主義派”のような輩が多数存在しているのだ。 広瀬隆がバッシングを受けた様子と同じである。 国民を洗脳していた、誰かの思惑が狂った未来を演出している。
さらに、平井氏の講演のビデオもある。 この人が、遺言として述べている言葉を、嘘と見るか真実と見るか、現実が目の前にある今では論を待たないと思うが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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