カテゴリ:サッカーの話
http://plaza.rakuten.co.jp/sontiti/diary/200812070000/
画像は対アレビレックス戦でのアントラーズ若き司令塔、柴崎岳くんの先制ゴールです。 このゴールがJリーグ4月期最優秀ゴールに選ばれました。 相手ゴールキーパーのミスにも見えますが、無回転シュートと呼ばれる不規則な動きをするボールで、ゴール正面から録った映像でわかるように、軌道の途中で二度曲がっています。 僕は息子のサッカー教室の流れで、お父さんチームでサッカーを経験したことがあり、ゴールキーパーが面白くてやっていましたが、チームの中にこの無回転シュートを蹴れる人がいました。 普通のシュートは回転の仕方によってどちらかに曲るのですが、無回転シュートは予測が出来ません。 しかも理由は分からないのですが、このように二度曲ることもあるのです。 ゴールキーパーは一度目の変化から瞬時に軌道を予測し、到達点に向けて体重移動を開始します。 その時二度目の変化が起きるともう対処が出来ません。 前回の南アフリカWカップのデンマーク戦で、本田圭佑が37メートルのフリーキックを無回転シュートで決めた姿は、日本人なら目にしているでしょう。 こんな素晴らしいシュートを決めた岳君でしたが、ゲーム後のインタビューでこんな答えをしていました。
「ボールを受けてからシュートを打つまでのプロセスはイメージ通りでした。 ゴールキーパーが出ていたのも見えていましたので思いきって狙いました。 ただ、何度も打てるシュートではないし、(無回転シュートを)意識して蹴ったわけでもありません。 決まったのは、偶然と言う部分もあります。」
自分の活躍で勝利した試合の直後で、こんな冷静沈着なコメントを残しています。 そんな柴崎岳くんは、本日5月28日が21歳の誕生日です。 アントラーズの先発メンバーは、黄金世代と呼ばれる98年入団組みが中心(曽ケ端・小笠原・中田・本山)33歳で、センターバックの岩正31歳、青木30歳、ブラジル人ジュニーニョ36歳、ダヴィ29歳、とJリーグの中にあっては高齢のチームです。 その中で昨日まで20歳だった岳くんが、ボランチ(ポルトガル語でハンドルの意味)というチームの要でプレーをしているのが特異でした。
その存在感をはっきり知らしめたのは昨年のナビスコ杯決勝・清水エスパルス戦でした。 常勝アントラーズは通算380勝210敗90分と、圧倒(でもないか)して勝ち続けているのですが、中には苦手なチームもあります。 去年昇格してきたサガン鳥栖に0勝1敗1分(これは去年だけのことだから)、川崎フロンターレに5勝8敗4分(これもたまたま)、アルビレックス新潟に5勝6敗7分(これもなにかのめぐりあわせ)、そして何故か清水エスパルスに19勝22敗5分と負け越しているのです。 意外にも2強時代と呼ばれた宿敵ジュビロ磐田には24勝13敗5分と鴨にしています。
その苦手なエスパルスが決勝の相手と決まったとき、アントラーズサポーターはいやーな気分になりました。 そのいやーな気分を払拭してくれたのが岳くんでした。 アントラーズの先制点となるPKを獲得した時、ペナルティースポットに立ったのは、みんなが思っていたチームリーダーの小笠原ではなく、岳くんでした。 そして冷静にゴールキーパーとは逆側にボールを流し込んでみせました。 試合を決したのも岳くんで、延長戦で攻め上がり、トラップを浮かせてディフェンダーふたりを置き去りにし、ゴールネットを揺らしてくれました。 リーグ戦不振だった2012年アントラーズの、唯一のタイトルを岳くんがもぎ取った瞬間でした。
岳くんは僕の息子と同い年で、しかもアントラーズなのでかなり感情移入して見守っていました。 アントラーズが岳くんと契約をしたのは、高校2年の時でした。 高校生Jリーガーは結構いて、2年生での契約もレッズの原口や元ガンバの宇佐美などもいますが、アントラーズとしては珍しいケースでした。 契約はしていても高校生活重視の方針で、岳くんの所属する青森山田高校は高校選手権で活躍をします。 その青森山田高校の10番を一環校の青森山田中学3年のときから背負っていたというから驚きです。 その時にはこんな言葉を残しています。
「正直、年齢とか気にしていません。 ピッチ上では平等だと思うし、出ている以上は自分がチームの一員として機能しないと意味がないし、遠慮していたらかえって迷惑になってしまいます」
中学生の言葉とは思えない。 またこんな言葉も。
「年齢が上がれば上がるほど、求められるものは多くなります。 それに応えなければいけないし、自分は常に自分が下になるような環境に居たいんです。 そうすればより上を目指そうという気持ちになるし、『自分が一番』という環境は好きではありません」
アントラーズでも小笠原を越えたら、次のステージに向かうということなのでしょうか。 頑張れ小笠原。 昨年のJリーグ表彰式で、ベストヤングプレーヤー賞を受賞した時のスピーチには驚きました。
「自分自身もベストヤングプレーヤー賞の投票用紙を見て違和感がありました。 他にも何人かが違和感があったでしょう。 この賞に値する選手は、今年は僕も含めてゼロ人でした。 世界的に見れば同世代には、ACミランのFWステファン・エル・シャーラウィ、レアル・マドリーのDFラファエル・バラーヌ、サントスのFWネイマール。彼らのような活躍ができた選手がいるかといえば、そうではありません。 彼らに一歩でも近づき、日本を代表する選手になっていかなければ世界と戦えないと思います」
視野は完全に海外へ向いています。 アントラーズにおいて、高卒のルーキーイヤーでポジションを獲得した選手は珍しく、ドイツのシャルケ04に移籍した内田篤人と柳澤敦ぐらいしか思い浮かびません。 どちらも日本代表で活躍していますから、岳くんもいずれは日の丸を背負うことになるでしょう。 日本代表についてはこんな発言をしています。
「日本代表は周りが評価してくれるもの。今はしっかりと自分の課題に向き合いながら、成長できるようにやっていきたい」
本人はそう言っていますが周りの目は"ポスト遠藤"として熱く見ています。 アントラーズの98年組みと同年代のベテラン遠藤は現在は日本のトッププレーヤーとして君臨していますが、現在過酷なJ2を闘い、怪我の心配もしなければなりません。 遠藤自身も岳くんのプレーが一番自分に似ていると評価しています。 アントラーズ前監督のジョルジーニョ(W杯アメリカ大会ブラジル代表)が「あれだけの選手にはなかなかめぐり合えない」と絶賛するほどの逸材、代表監督ザッケローニも招集のタイミングを見ている状態だろうと考えられます。
雑誌の取材で、プロを目指す中高生へのアドバイスは?という問いにこんな答えを出しています。
「本当にプロを目指しているのであれば、行動も習慣も変わると思います。 練習は積み重ねなので、常に何が足りないかを考えて行動することができると思います。 積み重ねることがとても難しいことだと考えていますし、それができない選手が多いとも感じています。 逆に言えば、それができればプレーも変わります。 監督やコーチには優秀な方がたくさんいるので、練習メニューを聞けば教えてくれると思いますし、あとは練習に取り組む中での自分の意識が大事です。 集中してやることが大切ですし、どれだけ続けられるかが本当に大事になる。 僕はそれをやってきたことで今の仕事に就けたので、そういう意味で、狙い通りだったと思います」
仕事と言うのは、何になるかとか、どんな実績を残すかよりも、どう取り組むかが大事です。 自分に与えられた人生の限られた時間の中で、多くの部分を使ってしまうところだからです。 環境に左右される要素の多いものですが、自分をいかに裏切らずに過ごせるかが、大切なポイントになります。 仕事で幸せを得られるなら、毎日充実して生きられるではないですか。 これから就活を開始する我が息子は、どこまで考えているのでしょうか。
岳くんが、10代の頃に取り組んでいたこと、考えていたことで、今にもつながっているものはありますか?という問いに対しての答え。
「今思えば、『サッカーだけではない』ということですかね。 サッカーの練習をすればうまくなるのは当然ですが、サッカー以外の面を伸ばしていくこともサッカーがうまくなるためのひとつの要素だと思います。 自分の考え方や、人とどう接するかという人間性の部分が非常に大事だと考えていますし、人として成長することがサッカー選手としての成長につながると思います」
うん、もっと勉強しなければと思い知るおじさんでした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2018年06月29日 11時21分30秒
コメント(0) | コメントを書く
[サッカーの話] カテゴリの最新記事
|
|