テーマ:原発を考える(30)
カテゴリ:原発
福島第一原子力発電所元所長の、吉田昌郎氏が9日に亡くなりました。 謹んでご冥福をお祈りします。 僕よりひとつ年上で、ほぼ同世代の戦死であります。
3.11の福島原発事故により、福島県周辺は大変な被害を受け、現在も30万人の避難者がいて、いつ帰れるか、または帰れないとハッキリするかわからない状況です。 被害に遭われた方には申し訳ないのですが、あの時の所長が吉田氏であったことは、不幸中の幸いでした。 福島が汚染されてしまったのは、地震によって壊れた原発が水素爆発を起こし、死の灰が周囲にまき散らかされたためでした。 その後、水を注入し冷却を続けなければならなかったのですが、東京電力本社から海水による注水にストップがかけられるという、不可解な命令が下されました。 僕はあの時『サンデーモーニング』を見ていたのですが、東京都市大学の涌井雅之教授が「水が無くなることが心配でしたが、海水を注入することが決まりましたので、このまま間断なく注水を続けて、冷却させることが今出来る唯一のことです」と解説していました。 ところがそのさなかに、「海水注入が中止になりました」と言うニュースが入り、「ホントですか?」と言ったきり教授の顔が凍ってしまいました。 これは本当にまずいことになったのだと感じました。 その心配もよそに、福島原発は大きな変化も無く(進展も無く)時間を経過したのですが、その後の調査で、海水注入の命令が内閣から発せられ、2次爆発の危険があったと、斑目原子力安全委員長が責められたりしていたのですが、実際は吉田所長の独断で海水注入は続けられていたと解りました。 このことは内緒で行われていたのですが、「これから注入中断を支持するが、絶対に注水を止めるな」と命じている画像が残されていました。 もしあの時、注水を止めていたら、二度目の臨界が起こり、さらに大きな爆発で、東京を含む半径250キロ県内が放射能で汚染されていたというのです。 正しい決断も、組織の中では背信を覚悟で行わなければならない時があります。 海水注入にストップをかけたのは、菅直人首相なのか東電役員なのかは藪の中ですが、命令は発せられ、吉田所長はこれに違反し東京を救いました。 その後病気療養のため、福島を離れますが、事実上は命令違反の更迭でした。
ここでおきたことのすべてが公表されたわけではないので、憶測で判断するしか今は出来ないのですが、これだけの大事故が想定を超えて現実になっても、自民党政権は原発推進に舵をきろうとしています。 いったい何の力がそうさせるのでしょうか。 吉田氏には、実際に行われたことを、もっと語ってほしかったと思います。 食道ガンのため死去となっていますが、正確には"食道ガンの治療"により亡くなってしまいました。 病院も良かれと思った判断なのでしょうが、結果は寿命を縮めて、大切な証言者を消してしまったのです。 吉田氏のすべてが正しかったとは言いませんが、死人にくちなしとばかりに責任を転嫁する動きもあります。 彼がヒーローになっては困るサイドがあるのでしょう。
このコラムでは、しばらく原発を取り上げませんでした。 知れば知るほど腹が立ってきて、このことを考えると健康に悪いと思ったからです。 (最後の記事 http://plaza.rakuten.co.jp/sontiti/diary/201209250000/ ) あの時とまったく考えは変わっていないし、世間の風潮もマスコミに対する圧力が弱まったのか、むしろ反原発のほうが強い感じがします。 なのに安倍晋三は"原発推進"を公言します。 この人は"改憲"以外はまったく興味が無く、"原発"も"TPP"も政治献金をする団体の言うがままに政策を進めています。 対外的な問題もあり、安倍政権は強く長くあってほしいということもあるのですが、意思表示はハッキリさせておきたいと考えます。 参議院選挙は"反原発"で選択します。
『2011年を振り返る』で、原発事故に触れました。 あの時と事態はまったく変わっていないし、僕の考えもそのまま動いていません。
12)福島第一原発事故で深刻な被害 前項の東日本大震災は、みんなで力を合わせてなんとか乗り切れる道筋はある。 が、こちらはまだ先が見えない。 みんなの力が一つにならないからだ。 正直なところ、原発マフィアの力がこんなにも大きく、深く社会に絡みついているとは知らなかった。 人気取りのためとはいえ、菅直人が孤軍奮闘、自分の首と引き換えに通した「再生可能エネルギー法」が風前の灯である。 買い取り価格算定委員5名の候補のうち3名が、この法案に反対だった人間だ。 経産省と原発マフィアの思惑は東電支配と、その利権の防衛。 買い取り価格を不当に抑えて、再生可能エネルギーの参入を阻もうとしている。 暗黒世界の結束力たるやすさまじいものを感じる。 大震災直後の被災地の日本人の態度は、世界中に感動を与えた。 しかし、福島原発事故の対処に関しては"犯罪国家日本"とまで呼ばれている。 事故の隠蔽。 放射性物質の海洋垂れ流し。 汚染区域地図スピーダの非公開。 汚染区域非難勧告不実行。 「ただちに影響はない」と今も嘘をつき続けている。 現在行われている「原子力損害賠償支援機構」は、東電をゾンビ企業として存続させ、賠償を税金で賄うというものだ。 東電役員、株主、銀行を守るために作られた。 何十兆円かかるかわからない賠償金は、国民の負担で支払われることがドサクサの中で公然と決まった。 いずれ税金で処理しなければならないものだが、まずしなければならないのは東電を破たん処理し、資産の売却、株の100%減資、銀行の債権放棄、送電設備の売却。 これら全てを行って、足らない部分を国費で補填するのが順序だ。 当然、役員の責任追及も含まれる。 "発送電分離"案と言うのは、電力会社は電力を送電するだけのものとし、発電はそれぞれの仕組みで民間が行い、それを定額で買い取ることで経営をする仕組みだ。 競争原理が導入されれば技術革新も進み、価格も安くなるはずだ。 しかもその技術を輸出することもできる。 技術立国日本の選ぶべき道であると思う。 政府はこの期に及んで原発を輸出する計画を進めている。 原発の桁外れの危険が認識された今は、武器や麻薬を他国に売るのと同等の"悪"である。 原発マフィアの元締めは、本物の悪魔ではないか。 どんなに日本の技術が先進的で、安全な原発を作ることができたとしても、核廃棄物の処理ができなければやってはいけないことなのだ。 "もんじゅ"の再稼動が不可能になった今は、全ての原発計画が見直されなくてはならない。 この課題に関しては、原発推進論者も一様に口をつぐんでいる。 戦後最大の犯罪はオウム真理教事件であった。 先日全ての裁判が結審し、13名の死刑が確定した。 だが、福島原発事故は、オウム事件(殺人29人負傷者6000人)よりさらに多くの犠牲者が生まれるであろう大事件である。 5年後には多くの地域で被曝による被害者が発生し始めるだろう。 将来にわたって、被曝が原因で何人死ぬか想像ができない。 なのに、誰も責任を問われていない。 東電役員は相変わらず高額の報酬を得ているし、官僚のボーナスもアップした。 麻原彰晃が何も語らなかったように、この事故の首謀者も知らん振りを決めている。 その首謀者の言いなりで原発を推進した信者は、まだ洗脳が解けぬまま、次の大事故に突き進もうとしている。
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最終更新日
2013年07月21日 08時24分51秒
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