テーマ:幸せとは?(14)
カテゴリ:幸福の話
まず、10月16日の「東京新聞・筆洗(コラム)」をご紹介します。
【 筆洗 】 <ひとつ、そこに山があっても、のぼりたくなかったら、のぼらない。> <ひとつ、夢のなかでは、仕事をしないこと。> <ひとつ、イエスかノーか迷ったら、ニャーと答えてみる。> <ひとつ、人にやさしく、自分にいちばんやさしく。> ▼ちょっと前のアパレルメーカーの広告である。題名は<シアワセのための23のことば>。本当に<シアワセ>に近づけるかどうかはさておき、読めば肩の力が抜け、気が楽になりそうである。女性のコピーライターによる作品と聞く ▼次の「ことば」もある広告関係の女性が書いた。<もう体も心もズタズタだ><眠りたい以外の感情を失った><こんなストレスフルな毎日を乗り越えた先に何が残るんだろうか><仕事も人生もとてもつらい><今までありがとう> ▼大手広告会社、電通の新入社員だった高橋まつりさん。昨年十二月二十五日、社宅から身を投げた。長時間労働を原因とする過労自殺である ▼<夢のなかでも仕事をし><自分にいちばんやさしくなれなかった>真面目な女性だったのだろう ▼交流サイト(SNS)に書き込まれた絶望の「ことば」をわれわれは深刻なメッセージとかみしめるべきだろう。過酷な労働、それを許してしまった社会が<仕事も人生もとてもつらい>と書かせてしまった。その年ごろの人に似合わなくてはならない、<シアワセ>ではなく。
東京大学文学部を卒業し電通に入社した1年目の女性社員、高橋まつりさん(当時24)が昨年12月に自殺した事件を、三田労働基準監督署が労働災害と認定したことについてのコラムです。 会社とハラスメントと自殺については、多くの識者が述べるように会社組織の"闇"であり、正されなくてはならない"悪"であります。 「電通」という会社がどういう会社なのかは、多少知識のある人は知っている、今流で言えば”ブラック企業”の側面を備えている会社です。 過去にも同じような新人の過労自殺事件を起こしています。 25年前になりますが、変わらない企業体質が悲劇を繰り返してしまいました。 (追記・3年前にもあったそうです。) しかしながら、ここで勝ち抜ければ並外れた収入を得ることができるということも事実です。 僕の知人にも、並外れた裕福な暮らしをしている電通社員がいます。 高収入=サクセスというゴールを目指す若者には、憧れの企業であるのかもしれません。 でも、うまくいかない人にとっては地獄なのです。
元電通社員から「電通鬼十則」というものがあると聞きました。
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
高度成長時代の遺物でしょうが、これを読んでワクワクする人もいるのが事実です。 僕も若い頃は、こんな企業戦士に憧れていた時もありました。 しかし、最近話題のブラック企業は皆この類のバイブルを使って若者を取り込みます。 若者のチャレンジ精神にうまく火をつけて利用します。
自分にそぐわないと察したのなら、迷わず違う道を選ぶべきです。 自分の命や健康を、会社の欺瞞風土の犠牲にするのは馬鹿げています。
しかし、解かっていながらそうできなかったことに問題の本質があります。 特殊な文化を持つ集団には、洗脳に近い価値観が存在するものです。 3対1で自分が責められれば、自分が悪いと思ってしまうでしょう。 集団の理論は深く検証されることなく、既存勢力に継承されます。 何も疑いなく正論をぶちまける集団に対し、反論の材料がありません。 新人には大きなカルチャーショックで、信仰を選択せざるを得ない状況に追い込まれてしまう。 耐えられない自分が弱いんだと思い込んでしまう。 同じような苦しみを抱えている若者は、今日も溢れています。 そして限界がきて、壊れてしまう。
この危険から身を守るには、洗脳に絡み取られる前に、自分の価値観をしっかり持つしかありません。 それには誰かの支えが必要でした。 彼女を助けてあげられなかった周りの人達も、辛い思いをしていることでしょう。 ハラスメントを受けている人に伝えたい。 辛かったら、環境を変えることがまず大切です。 人生の本当の喜び、幸せとは何かに気づきましょう。 『幸せな毎日を送ることが、最大の復讐である』
筆洗で一部紹介している、企業広告(ONWARD)のコピー「シアワセのための23のことば」を全部載せます。
シアワセのための23のことば
ひとつ、晴れを信じて、なるべく傘はもたないこと。
着替えよう。
23区ONWARD
作者のコピーライターは三井明子さん。 広告業界では有名な方で、ご夫婦でコピーライトをしています(”広告夫婦”で知られるご主人は元電通マン)。 広告では人のあるべき道を指し示せても、それを発信する広告会社が違う価値観に支配されているのは皮肉です。
1970年代に、天才CMディレクターが自殺したことがありました。 その遺書の言葉
ハッピーでないのにハッピーな世界など描けません。 夢がないのに 夢を売ることなどは……とても……嘘をついてもばれるものです』 に大きなショックを受けました(僕はまだ高校生)。 高度成長を邁進する日本。 その薔薇色の世界が、ウソなんだと警告してくれました。 しかし、日本はその警告に耳を貸さず、バブル景気に邁進します。 そのあとは・・・見ての通り。 あれから広告業界は変わったのでしょうか。 本当に大切なものを伝えてくれたのでしょうか。 悲劇は繰り返す。 もっとひどくなっているかもしれません。
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最終更新日
2016年10月21日 21時59分37秒
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