【515の放浪】 《第13話》 【札幌にて】 《第7章》
初日は、相手会社の担当者が出迎えてくれて、建物の入り口と外部フェンスの鍵を受け取った。 外部フェンスの入り口は、夜8時に閉めてくれとのこと。『あいつら』が来るとしたら夜中だろうから、早晩は解放していていいのだそうだ。 夕方6時から朝8時までの警備か。夜中2時から仮眠が4時間あるけど、いいのか。寝てる間に『あいつら』が来るかもしれないけどな。ま、オレは決められた警備をすればいいだけなんだけどね。 10時と2時と6時に工場内の巡回警備。あとは、待機と仮眠か。退屈な仕事だけど、『あいつら』の発見や通報に不手際があってはまずい。ちょっと緊張するが、未来に起こるトラブルは「なんとかする」と「なんとかなるだろう」を混ぜ合わせて対処すると、けっこううまくいくものだと考えていた。夜、巡回してみると、工場内は現在操業されている雰囲気はなかった。古いおおきな機械が何台かあったが、なにをどう加工するのか想像もできなかった。壁際に積まれた鉄製の材料なども、あまり見かけないもので、ここに忍び込んで物を盗んだとしても、あまり利益はないような気がするけど、『あいつら』は、何が目的で来るんだろうか。『不可解』な巡回警備をして、初日は何事もなく終わった。【送料無料】 東京タワーは曲がっていなかった / 豊島光夫 【単行本】価格:1,470円(税込、送料込)