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カテゴリ:歌紀行
ダッチャ。生年月日不明、本名・安達清康。 北海道の厚岸市出身で高校を中退して東京へ。新宿西口広場でフーテンをしながら歌を歌っていたとされる。 時期は不明だが、同じ北海道出身の和田博巳(のちに"はちみつぱい"入り)が68年に高円寺に開店したジャズ喫茶「ムーヴィン」(69年からはロック喫茶)のウエイターとなる。70年頃の事ではないかと推測している。 その後名古屋、大阪と流れている。 名古屋では路上で歌っていた友部正人・朝野由彦・竹内正美(のちにセンチメンタル・シティ・ロマンス結成に大きくかかわる人物で、センチのマネージャー・作詞を務めていく人)に会っている。 それからダッチャも友部正人も、それぞれ大阪へ流れていったようだ。 「1972 春一番」の福岡風太の解説によれば、ダッチャは71年のフォークジャンボリーから本格的に歌いだしたようだが、ジャンボリーのタイムテーブルにその名を見つける事は出来ない。とすると初日のアマチュアによるサブステージに出たのだろうか。 この時期は大阪市営地下鉄四ツ橋線・玉出あたりに居を持っていたようで、そこから国道26号線を歩いて北上して、難波のフォーク喫茶「ディラン」まで毎日歩いて通っていたという。駅にしたら4つだ。 その国道26号線を毎日歩きながら出来たのが、この「26号線」という曲だという。 これが夏の日溜まりを感じさせるような、実に素晴しい印象的な作品となっている。 とりとめもなく青空が広がり あの北の海の青さに似ている 26号線たたずむ君を 夏の風りんが耳をくすぐっているんです 26号線通り過ぎ行く風に 入りきれずボクはタバコに火をつけ すずしい風におしえられた夏の顔 そして今あの娘に会いに足ぶみを あの娘に会いに ほんの少しお話しを あの娘に会いに 26号線北に向って 昨日のお酒をメガネにかくして 26号線ただひたすら車が走る 何か一つ決まらないまま 頭をねじってみたくなってしまうんです 26号線通り過ぎ行く風に 入りきれずボクはタバコに火をつけ すずしい風におしえられた夏の顔 そして今あの娘に会いに足ぶみを あの娘に会いに ほんの少しお話しを あの娘に会いに 26号線北に向って (A-2「26号線」作詞・作曲/ダッチャ) 毎日国道を歩いて向った先は、伝説のフォーク喫茶「ディラン」。 69年8月にオープンしたこの店には、バーテンを務める大塚まさじをはじめ、西岡恭蔵・永井よう・中川イサト・中川五郎・加川良・友部正人らが入り浸り、福岡風太がこの店のピンク電話を窓口にすることによって、彼らシンガーたちの連絡先となっていく。 ダッチャは72年に結婚して、再び上京。風都市に所属して、風都市がトリオレコードに発足させたショーボートレーベルから73年シングル「26号線/君の空の下」、アルバム「26号線(あの娘に会いに)」(LPのライナーにはこう表記されている)を発売している。 ナイーブな印象を与えるか細い声でありながら、情感を込めてめいいっぱい歌い上げるダッチャ。 ダッチャ-山下成司-小山卓治と、僕はそういった声の持ち主がとても好きだ。 このアルバムは伝説のバンド、ココナツ・バンク(伊藤銀次・藤本雄志・上原裕・駒沢裕城)がバッキングを務めていることでも知られる。他にも武川雅寛・矢野誠・松田幸一・村上律・上村律夫といった豪華メンバーが脇を固めている。 この「26号線」だけは西海岸風な他の曲と違って、矢野誠の手によると思われる美しいストリングと、松田幸一の素晴しいブルースハープが見事だ。 ダッチャはその後映画俳優に転向したとされるが、詳細はよく解らない。 僕の手許にあるダッチャの音源は、「1972 春一番」の2曲、このアルバムの10曲、「1974 HOBO'S CONCERT」の2曲、そして「'75 春一番」の1曲。 そのどれもが、繊細で傷つきやすい若者像を漂わせている。いや、その声がそう思わせているのかも知れない。 特にこのアルバムの「26号線」「エミを浮べて」、「1974 HOBO'S CONCERT」収録の「街角」が個人的にはとても好きだ。 また「26号線」の冒頭に出て来る『あの北の海の青さに似ている』というフレーズや、北海道で16才だった頃を歌った「北海の満月」も味わい深い。 実は、僕が住んでいる近くに「26号線」と呼ばれている通りがあり、その道路表示を見る度に「あの娘に会いにー♪」と口ずさんでしまうのでありました。 蛇足になるけれど、このショーボートの3A-1000番台も、未だに僕には謎だ。 73年9月に発足したという3A-1000番台で、僕が確認できたのは5枚だけ。 3A-1004 吉田美奈子「扉の冬」 3A-1005 南佳孝「摩天楼のヒロイン」 3A-1007 ダッチャ「26号線」 3A-1013 かんせつかず「ひとりぼっちの音楽会」 3A-1014 オムニバス「1973.9.21 SHOWBOAT-素晴しき船出」 3A-1001とか存在するのだろうか・・・・うーん、謎だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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ダッチャに関するお話
興味深く読ませて頂きました。 数年前の春一番でのダッチャの復活の際に 少しお手伝いさせて頂き、またあの歌声をぜひ 聞きたいものだと思っています。 http://kent48.blog.ocn.ne.jp/blog/ (2011.08.26 10:24:40)
きのう、小学校の同窓会で私の旦那はダッチャっていって、昔高田渡らと一緒に歌ってたって初めて聞きました。ネットで探したらここにあたりました。ぜひダッチャさんの歌を聞いてみたいものです。
(2014.04.06 23:47:03)
ポンジゴルさん
>きのう、小学校の同窓会で私の旦那はダッチャっていって、昔高田渡らと一緒に歌ってたって初めて聞きました。ネットで探したらここにあたりました。ぜひダッチャさんの歌を聞いてみたいものです。 ----- ダッチャ=足立大輔なのですか? (2015.07.02 16:51:26)
素敵なブログ楽しませて頂きました。
現在 ダッチャさんは関西で 元気にお過ごしです。 十数年前には服部緑地で開催された 祝春一番コンサートに、大塚まさじさんや福岡風太さんに請われて ステージで26号線を披露されました! その頃に、私はダッチャさんと出会って久しぶりのステージで、しっくり来るギターが無いとお嘆きの彼に 私のオベーションをお貸しし ステージで使って頂きました。 それ以来、気にかけて頂いてます。 (2020.03.24 17:07:02)
kentさんへ
貴重な情報ありがとうございます。 今週はじめに、偶然「26号線」のLPを久しぶりに聴きました。 春の日だまりに良く似合うレコードですね。 (2020.03.27 07:38:47) |