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蓼科高原日記

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2023.09.24
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カテゴリ:カテゴリ未分類

 
静かな夜が明けて穏やかな朝がやってくる。
 
凛(りん)とした大気は上質のゼリーのようにやわらかな感触だ。
 
降りそそぐ朝日は優しさに満ちて、盛夏のあの凶暴さはみじんも感じられない。
 
森からは自然のたてる様々な音が聞こえてくる。
 
目を閉じれば様々ないのちの息吹が感じられる。
 
それは秋という季節の歌う歌だ。
 
さわさわからからと木の葉が鳴る。
 
それは森を吹く風の歌だ。
 
大地を踏みしめて空を見上げれば、そこにあるのは突き抜けるような天空。
 
この季節、大地と空とはくっきりとした境界を描く。
 
大気と同様に意識も澄み渡る。
 
いままで見えなかったものがしだいに見えてくる。
 
自分が追い求めていたものがじつは虚像だったことが見て取れる。
 
追い求めるものは、追うことをやめた時に初めて手にはいるのだと秋の空は語る。
 
真夏の逃げ水のように、追い続ける限りそれは逃げ続けるのだと。
 
両の手からこぼれ落ちすり抜けてゆく。
 
たとえばそれは僕の夢。
 
ささやかな幸福感。
 
いま思い知る、
 
なすべき事をなせばよいのだ、
 
いま行なうべきことをきちんと行なえばよいのだ。
 
僕の夢などどうでも良い、
 
なすべき事をなせばよいのだ。
 
秋はもの思う季節。
 
その気候がそうさせるのか、
 
この静けさがそういざなうのか。
 
澄み切った大気を胸いっぱい吸い込んで、
 
見えない未来に思いをはせることをやめ、
 
「いま」を見つめる。
  





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Last updated  2023.09.24 02:07:37
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