カテゴリ:薬科大学
さえ:
瀋陽薬科大学で仲良くしている先生の一人であるYS教授に誘われて、薬科大学の南校を見てきました。 薬科大学はぼくたちが来た2000年頃から郊外への移転の話があって、それも東北大学や中国医科大学と合併して移転するという話でした。それがなかなか実現しないうちに、その移転先も瀋陽の東の郊外だったり、北の外れだったり、やがては東北大学や医科大学からも振られて単独で、北の、今に地下鉄が延長するらしいという地点に移転するという話になったのが、もう5年くらい前のことでしょうか。瀋陽市北部への移転は、大学の新聞に鍬入れ式をする校長と書記の写真が載っていましたから、こんどはいよいよ本当かなと思ったものです。 それから一年もしないうちに、あの話は没になってこんどは本渓に移ることになったという噂が流れました。本渓は瀋陽から南に60Kmくらい行ったところで、今の瀋陽を中心とする大都市圏構想では、瀋陽を囲む7つの衛星外郭都市の一つです。古くから鉄鉱石採掘の町として発展していて、新中国ができたあと、地下大鍾乳洞が見つかったことで名高いところです。 移転のためには財源が必要で、そのためには今の敷地を売却するという噂でした。薬科大学は実にこじんまりとした敷地に建物がひっそりと、そしてびっしりと建っていますが、瀋陽の中心を十字に走る地下鉄沿線に沿っていて、今や繁華街の一部になりつつあると言っても過言ではないくらい便利なところですよね。高く売れるのは間違いありません。 前にもこのブログに書いたと思いますが、東京で都市の発展のために都心部から大学を郊外に移転させた多くの私立大学は、その結果として進学生の減少に苦しみ、バブル崩壊の後はふたたび都心復帰を目指しました。都心の拠点を少しでも残しておいた大学は、そこに高層の建物を建てて大学の復帰を果たし、学生の人気を呼び戻しましたが、都心に拠点を失った大学は悲惨なものでした。中国に先駆けて大学の都心から郊外移転を行った東京の現状は、よい教訓になるはずです。 それで大学の上層部に宛てて、日本の経験を教訓にすることで、本渓に大学の一部を移したとしても、全部が移ってしまうことはしないで、今の敷地の半分でも確保して置かないと瀋陽薬科大学の学問的地位も含めて将来危ないものになるだろうから、まだ検討の余地があるなら是非移転計画を再考して欲しいと書きました。 その後、これという反応もなかったのですよ。言ってみればよそものが、しかも何の地位も背景もない人間が何か言ったって聞く耳持たないってことかな、と思っていました。やがてそのころ大学の書記が交代して(書記が大学では最高の位で、学長の上ですよね)何とぼくの部屋に新任の挨拶に来られたのですよ(中国の慣習では考えられない話ですね)。そして、ぼくの出した意見書は至極もっともで、大学のほとんどを本渓に移すけれど、ここの敷地の半分近くは(つまり建物の半分くらいは)残すことにしたと言うことでした。ぼくの意見書が決め手になったとは思えませんけれど、移転積極派と移転慎重派の意見対立があったとしたら、慎重派に重心を移す役には立ったかも知れませんね。 ともかく本渓の地に大学は土地を得て建物を建て始めたのは2年前ですから、中国の建築の速さからするともう全部出来ていて良いわけです。しかし、まだ計画のうち1/3くらいの建物が出来ただけだそうです。 YS教授に誘われた日は瀋陽のPM2.5が200を超えて近くのビルも霞んでいて、まして遠くまでは見晴らせない空でした。10年前に本渓鍾乳洞に案内されたときは一般道路でしたので、車で4時間掛かりましたが、今は高速道路が出来ています。本渓に行っても空が霞んでいたら、この大気汚染は北京方面からやってきたに違いないといいつつ、YS教授は車でを走らせましたが、とうとう現地についても空は汚れたままでした。 本渓よりも手前のインターチェンジで降りると、この一帯が製薬事業の拠点として開発されていて、製薬会社、工場がずっと建ち並び、それを行くと新しい街の中心なのか、外れなのか判然としませんが、山あいに瀋陽薬科大学の本渓南校キャンパスが見えてきました。 今の薬科大学の敷地よりも広い場所に、現在の薬科大学にある建物と同じくらいの数の建物が既に建っていますが、まだこれでも計画の1/3にもなっていないそうです。いまは新入生を含めて3千人くらいの学生がここで生活しているとのことです。学部としては生産管理学部の建物が出来ているだけですが、ほとんどの教授は常駐していないと聞きました。建物の内外は新しくて綺麗ですが、なんだか元気が出ませんね。 米国ですと大学だけで成り立っている小さな街があって、学生は何の俗事にも患わされることなく勉学にいそしむ光景が普通にありますけれど、ぼくはシティーボーイの育ちですからね、ここで教育を受ける学生たちに同情してしまいます。 瀋陽の伝統ある瀋陽薬科大学に入ったのに、こんな山の中の学校で暮らすんじゃ話が違うんじゃない?と折角入った新入生が次の年にまた全国統一入学試験を受け直すためにどんどん辞めているんじゃないかな?と思わず口に出かかりました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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瀋陽薬科大学の殆どは、昨年度中に本渓に引っ越したみたいですね。学生だけでなく、先生たちもあのようなところに行きたがらないみたいだし、大学の将来は暗いのではないかと案じています。
(2018.02.21 10:30:54)
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