テーマ:今日のワイン(6005)
カテゴリ:Degustation
Vosne Romanee村にLa Croix Rameauという畑が有るが何故この畑がRomanee St. Vivantに含まれないか疑問に思っているちょっとしたブルゴーニュ通も多いだろう。実際私もLa Croix Rameauの畑はRSVに隣接していて間に大きな道もなく標高も同程度なので何故RSVに入らないのか不思議であった。今回Jean Francois Bazin(JFB)氏のLa Romanee Contiを読んでその辺の歴史的意味が分かったので軽く纏めておく。
端的に言うとフランス革命まではLa Croix RameauはRSVの一部で有り、実際にLavalle (1855)にはこの畑の名は現れてはない。しかしその数年後のボーヌ農業委員会の最初のアペラシオン策定(1860)、Camille Rodierの私的な格付け(これは後の1937-39のアペラシオン改訂の基礎となったものだが)には2級(現在の1級)としてRSVより峻別されている。この背景だが、JFB氏の書にはMarey MongeがRSVの畑の下部を劣った区画、La Planteとしてそれ以外とは区別して醸造していて、更に現在La Croix Rameauとされている畑(少なくとも一部)がLa Planteの一部で有ったことが記されている。そしてこのLa Croix RameauはMarey Mongeから別の人に売られている。1860の最初の制定の際にこの事が鑑みられたのはまず確かだろう。
その後1931年に土地台帳上でLa Croix Rameauのごく一部がRSVに編入され(Charle Noellat、今のLeroyの一部)、残りは一段落ちるLa Croix Rameauとして残る事になり、後のアペラシオン再設定の際にこれが固定された。
これは私も知らなかった事だがこの畑の3人の所有者の二人、今のCoudray-BizotとLamarcheの両氏が1984年に特級申請をして、Vosneでは1票差で申請が通ったものの(11票中6票)、その上のブルゴーニュ総会で1931年のINAOの判断を元に却下されている。
さて、前置きが長くなってしまったが、このワイン。決して悪くはないが全てに中庸。特に伸びやかさや深みもある訳でない。決して黒くはなく、村名を超えた軽やかさは有るが、優れたRSVの持つ繊細でデリケートさにはほど遠いような気がする。まあ、普通に良く出来たVR1級という感じか。中庸な作り手、中庸なクリマの結論だろう。
そう言えば、先の特級申請に何故か3人の所有者のうちの最後、この作り手が参加していなかったとJFBに書かれていた。更に「多分Jacque Cacheuxは(申請に)興味なかったのだろう」とも。ひょっとしてこの作り手、実はすごく実直なのかもしれない。
最後に余談になるが、何故DRCがRSVの約4分の1を自分で詰めずにネゴスに売るのかと言うことが自分の長年の謎だったのがこれが解けた気がする。端的に言って先に述べたMarey-MongeがLa Planteと名付けた劣った区画の葡萄を売っているのだろうと想像できる。Marey-Mongeから畑を買収したにも関わらず彼の考察を歴史的に尊重し敢えてアッサンブラージュをせずに自社で瓶詰めをせずネゴスに売ると考えると辻褄が合う。
まあ、どうでも良いけど1本のワインにも結構歴史が詰っていてあれこれ空想に浸れるのがブルゴーニュワインの所以だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022/11/08 03:39:18 PM
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