カテゴリ:Degustation
人もワインも永遠の命がない」という事を実感する時はやはり還暦を過ぎた頃だろう。 20代から40代は未熟さを若さの力で補い少し仕事も覚え、家庭を持ち順風満帆で自信を覚え、社会的にも中核になり責任も重くなり達成感を覚えた50代と怒涛のように進んで来る。その傍にはワインがいつも有る。セラーにあるワインは自分を困難な時には自分を鼓舞しその困難な局面を乗り越えた時に大切な人と分かち合う美酒になる。人生はこの繰り返し、それが永遠に続くと思っていた。 その繰り返しはある時唐突に終わる。家族は巣立ち、社会的にも段々とmarginalizeされ、気力、体力、そしてアルコール分解能は落ち、かつての飲み仲間は一人また一人と悟りの道へ消え、あるいは傷病退職。そして昔買ったセラーのワインは持ち主同様既にピークを過ぎて下り坂。そしていつか自分の番が来る。 このワインも多分そういうプロセスを辿っているように感じる。熟成が進みノワゼットが前面に出る。くたびれたワインだが10年ほど前は力も漲りクリマ的にもはち切れんばかりの素晴らしさだったのだろう。ただ最後3分の1を過ぎた頃から一瞬果実の煌めきを感じる。白色矮星の新星爆発のようだ。そしてゆっくりと心肺停止へ。 冒頭の言葉だが「ワインも人も命あるうちに楽しむべし」と読みかえるべきなのだろう。そしてエピローグとも言えるこれからの人生はその都度ごと大切に思える人と自分が大切にしてきたワインを開けて行くのが最高の大団円なのでだろう。 星は最期の瞬間を迎える直前に銀河全体にも匹敵する煌めきを見せるという。超新星爆発だ。 自分も爆発するかな。と言ってもテロじゃないけどね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023/10/19 08:38:30 PM
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