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カテゴリ:医療
ずうーっと前から、これだけ話題になっているのに、振り込め詐欺の被害が後を絶たない。おそらくは毎日スーパーのチラシとにらめっこして少しでも家計を浮かせようと努力している奥様方が、簡単に数百万円もの金を振り込んでしまうのだ。冷静な第三者として記事を読めば、バカだなあと思う。でも、これだけ被害が続くのであれば、バカでは片づけられないものがあるのだろう。 bambooの所属する県医師会で、振り込め詐欺に注意するようにと言う講演があった。その講師が家に帰ったまさにその時、電話が鳴った。迫真の演技に我を忘れる講師。つい今し方まで、自分が注意を呼びかけていた術中に見事にはまってしまった。途中で気がついて、被害はなかったものの、人間というのはいかに騙されやすいか実感したそうな。この件は県医師会雑誌で読んだ。照れくさそうだった。 TBSアナウンサーの外山惠理氏の母上は、自分の目の前に息子本人が居るにもかかわらず、息子だと名乗る電話にすっかり騙された。本人が「俺はここにいる」と何度も言っているにもかかわらず、しばらく騙され続けて曰く「だって、貴方からの電話なのよ」。これはラジオで外山惠理氏が言っていたのを聞いた。 いつもと違うただならぬ様子の電話が来ると、ついパニックに陥ることがあるのだろう。その様な経験がなければ、自分は大丈夫だと思っているだろうが、実際にその場になってみなければ判らない。明日の被害者は貴方かも知れないのだ。医療の現場でパニックに陥るとどうなるのか、次の記事が参考になるだろうか。 【2007年3月10日】 麻酔科医にとって、気管挿管は基本中の基本である。もちろん難しい症例もあって、食道挿管をすることはある。でも、その様な場合は食道挿管かも知れないと言う意識があるものだ。この件の麻酔科医は30代とのことなので、通常であれば5年以上の経験があったであろう。だとすれば、困難な症例で食道挿管したのであれば、すぐに気がついたと思われる。おそらく、自分では普通に挿管したつもりだったのに食道挿管してしまったのだろう。だからこそ、呼吸不全となったときに食道挿管の可能性に思いが至らず、患者の全身状態の悪化に伴ってパニックに陥り、麻酔科医としての正常な判断が出来なかったのではないかと推察する。 第三者の麻酔科医として見れば、この麻酔科医を非難することはたやすい。でも、このような事故が起こった以上、再発防止が計られるべきであろうと思う。振り込め詐欺と同様、場合によって、人間は馬鹿なことをすることがあるという観点が必要なのだ。当事者を処罰して終わりにするより、処罰を断念してでも原因の解明が必要なのだ。実はこのようなことは安全管理の講習の初歩中の初歩なのだ。 安全管理の観点から原因を追及する場合、事故の原因を5個くらい挙げる。そして、それぞれの原因の原因を更に5個くらい挙げる。それを繰り返して何層も深く掘り返し、奥に潜む原因を明らかにする。そうすることで、費用対効果に優れた対処が可能になるのだ。 麻酔科医個人の問題だけに絞っても、技術の問題・危機管理の問題・疲労・人間関係・勤務態度など、いくつもの問題点を挙げられる可能性がある。いくつもの階層に渡って問題点が明らかになれば、改善すべき点も判るだろう。 いつものことだが、事故の責任は当事者に押しつけ、何ら改善することなく続けられてゆく医療。 命に関わる分野で、医療ほど前近代的な環境が放置されている分野があるだろうか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007.03.17 10:45:17
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