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カテゴリ:医療
遅ればせながらシッコを見てみた。既にご存じの方が多いだろうが、社会主義国であるキューバはもちろん、カナダやヨーロッパの充実した医療制度と、悲惨なアメリカの医療制度を対比させた映画だ。
初めは保険にも入れないアメリカ国民の悲惨な状況が紹介される。でも、監督のムーアが対象にしているのは彼らではない。たとえ保険に入っていても、保険会社の儲け主義のために必要な医療の許可が下りず、切り捨てられる人々などが対象なのだ。 これは他人事ではない。我が国でも、とりあえず75歳以上を切り捨てる制度が始まった。また、医療自体が、医療費削減、司法の介入、医師の逃散などによって崩壊しつつある。この後に来るものは、混合診療解禁から国民皆保険の実質的な崩壊ではないかと危惧する。どのような経過を取ろうとも、医療費削減を目指す以上、国民皆保険は崩壊するほかない。そうなれば民間保険に入らざるを得ないだろう。そして、今のアメリカの姿が日本でも見られるようになると想像する。 社会主義国であるキューバは、確かに医療費は安いだろうが、貧困や医療レベルに問題がありそうだ。映画を見たからといってうらやましいと思う人は少ないだろう。でも、カナダやヨーロッパについては、うらやましいと思う人は多いのではないだろうか。シッコを見る限り、医療は無料で、患者は長く待たされることもなく、医師の収入も十分のようだ。でも、少なくともイギリスでは、アクセスにかなり問題があったように聞いている。日本と同じように、薬を買う代わりに受診するような状況では無料で医療を提供することは無理だと思うので、何らかのアクセス制限はあるのではないかと思う。それが国民の民度の差によるものだとしたら、日本人としてはとても恥ずかしい。 ヨーロッパの医師の待遇について、高級車や高級マンションを買うだけの収入があることは述べられていたが、勤務態勢については触れられていない。私としては、是非触れて欲しかった部分だ。日本の医師のように、不眠不休で働くことはなく、交代性であることを強調して欲しかったのだが、そんな当たり前のことをわざわざ述べる意味はないのであろう。 現在の日本では、国民皆保険でありながら多くの人が3割負担だ。どうしてヨーロッパのような無料で医療を受けられ、必要があれば治癒するまで有給休暇を取れるような体制がとれないのだろう。すぐに思いつく答えが、私には二点ある。 第一は社会保障費の負担である。税の国際比較を見ると、税金と社会保険料などを加えた国民負担率はヨーロッパでは高い。日本より負担率の少ないのは、自己責任の国アメリカだけだ。そのアメリカでも、GDPに占める社会保障給付費の割合は日本より多い。小泉改革を支持する人は多いようだが、改革によって困っている人を切り捨て、濡れ手で粟の税金泥棒を放置しているように思える私はおかしいのだろうか。税金泥棒に奉仕する気はないが、本当に困っている人を助けるためには、税金が高くなっても私は構わない。 第二は、残念ながら、国民の意識の差ではないかと思う。映画の中でも、大戦後の混沌の中で助け合いの精神がはぐくまれたとあった。本当に困っている人を助けようと言う気概が行き渡っているのだろう。だからこそ、困っている人だけが社会保障制度を利用しているのだと思う。制度にたかる人が多ければ、社会保障制度は成り立たないのだ。 我が国でも、戦後の混乱期には助け合いの精神はあったのだろう。でも、その後は何でもアメリカ追随になってしまった。節度を知っていた国民性から、やったもの勝ちの文化になってしまったように思う。だからこそ、税金などの負担が増えるのは問題外。制度があれば食い物にし、救急車はタクシー代わり、自分の都合だけでコンビニ医療を求め、しかも質を保証しろと言う。堂々と乞食自慢をする者までいる。 それぞれが自分の欲望を少しだけ抑え、その分で本当に困っている人が助かる。そんな世の中の方が良いと思いませんか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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