大淀病院の妊婦死亡から二年が経ちました。2周年ということなのでしょう、
産経新聞がこんな記事を書いています。
奈良・妊婦死亡事件からあす2年 遺族は2次被害防止へ活動 (1/2ページ)
2008.8.7 13:42
奈良県大淀町の町立大淀病院で平成18年8月、同県の高崎実香さん=当時(32)=が分娩(ぶんべん)中に意識不明となり、19病院に転院を断られた末に後日死亡した問題の発生から、8日で2年。夫の晋輔さん(26)ら遺族は、周産期医療の充実に加え、ネット上での中傷という“2次被害”を防ぐための活動を新たに展開している。今春には、ほかの医療事故被害者や遺族とともに勉強会も発足。遺族は「いつか残された子に、お母さんのおかげで環境がよくなったんだと言いたい」と心に誓っている。
実香さんは18年8月8日未明、分娩中に突然意識を失い、奏太ちゃんを出産して8日後に脳内出血で死亡した。
悲しみがやまない中、同年秋には、横浜市の医師による医師限定サイトの掲示板に晋輔さんを中傷する内容の書き込みがあることが判明。さらに実香さんの病歴情報、看護記録の流出も起こって、遺族の心に追い打ちをかけた。
カルテ内容を流出させた開業医は今年7月、晋輔さんや義父の憲治さん(54)に直接謝罪。その際、開業医は「医学的な検証をし、産科医を守りたかった」と話したという。
「婦人科のカルテには、親族にさえ知られたくないような秘密が書き込まれており、流出は女性を裸以上にするもの」
本当に医療環境を良くしたいのなら、即座に提訴を取り消すべきでしょう。どうしても提訴したいのなら、相手は国や自治体と言った行政のはずです。救命すること自体は無理だったと思いますが、まともな医療体制があったのであれば、もっと早く治療ができたはずです。貧弱な医療体制の責任は行政にあります。攻撃の矛先を医師や病院に向けるのは筋違いです。
また、「
裸以上にするもの」を見て感じたのですが、「被害者」の憎悪は理不尽なものです。理性をかなぐり捨てたむき出しの感情であることもまれではありません。それ自体は無理からぬものがあるでしょう。でも、それをそのままメディアで垂れ流すのはいかがなものでしょうか。
裸の心は、裸体以上に見ていて恥ずかしくなります。
奈良・妊婦死亡事件からあす2年 遺族は2次被害防止へ活動 (2/2ページ)
2008.8.7 13:42
憲治さんら遺族はやり場のない憤りを抱える中で、ほかにもネット被害に苦しむ医療事故の遺族らがいることを知り、勉強会の開催を発案した。
今年4月、大阪市内で開いた初会合。晋輔さんは「妻を亡くした上、さらに妻を傷つけられた」と悲しい思いを打ち明けた。7月には2回目の会合も開き、痛みを共有しながらさらなる情報交換を進めている。
一方、晋輔さんは周産期医療の充実を訴え、これまで約10回の講演を重ねた。「素晴らしい技術を持ったゴッドハンドと呼ばれる医師がいるが、誰の手でも握ってあげられるような優しい医師が増えてほしい」と各地で呼びかけてきた。
奏太ちゃんは、8日で2歳を迎える。屈託なくすくすくと育ち、自分の意思を伝えたり、はしを使ってそうめんを食べたりできるようにもなった。
ただ、晋輔さんは、奏太ちゃんの成長にしたがって新たな悩みも感じている。「やがて物心つく奏太に、実香の死のことをどうやって伝えようかと…」
遺族はジレンマを抱えながらも、悲しみや苦しみを教訓に、医療の充実やネット中傷防止になお強い思いを向けている。
「自分たちも、医療を改善させる方策を医師や行政と一緒に考えたい」と晋輔さん。憲治さんは「カルテの流出やひどい書き込みは捜査の対象になるほか、医療界の信頼失墜にもつながることを考えてほしい。そして、奏太にいつかお母さんのことを話すとき、お母さんのおかげでこんなによくなったよと言いたい」と話した。
残念ながら、現状は良くなっているとは言えません。完全に方向は逆で、奈良の産科医療を崩壊させてしまったと言って良いでしょう。一度恨みに凝り固まってしまうと、簡単には修正できないのでしょうが、
医療を崩壊させている本当の敵は誰なのか、もう一度真剣に考えて欲しいと思います。