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カテゴリ:音楽
01. Prologue, Silent Night
02. ゴム紐売り 03. 老婦人と見知らぬ人 04. 小舟は、語るよ、珊瑚礁を 05. あたしの故郷は流木なの 06. 物語を書きすぎた男 07. 人間嫌いの日 08. HANEDAFEST 09. 第四地区パーク 10. 流木のうた 11. In Retrospect 12. Witchi-Tai-To 13. ネアンデルタール、JFK、JWL、JLG 14. すべてはジャズと呼ばれていた 15. 回顧録 16. Epilogue, Thgin Tnelis ■たしかにわたしが持っているレコードの多くも真ん中へんが丸く色落ちしている。さすがに土の中から発掘したものは一枚もないが、それが手に入れた時の鮮度を保っているものは皆無だ。 ■でもレコード盤の表面だけはなるべく傷がつかないよう細心の注意を払って聴き続けているつもりだ。時々入るスクラッチノイズの音に音楽そのものをぶちこしてしまうストレスを感じることさえあった。 ■それゆえCDが登場した時の感激は大きかった。半永久的に録音された音そのものがいつでも再生できるその装置の発明はこれまでの再生時の儀式一般を一変させた。 ■そんな現代の音楽事情を逆手にとって、わざわざ土の中から幻のレコードが発見されたという架空のストーリーを捏造してその音楽をCD化したのが今作。あのブツブツとしたスクラッチノイズから始まり、モノラルを疑似ステレオ化する曲も混ぜるといった念の入れようだ。 ■「テープレコーダーに自分の声入れて土の中に埋める」昔からそんな夢想癖のある音楽家は自分の作る音楽の賞味期限ならびに資産的価値について常に考え続けているのではないか。10年単位ではなく100年後の世界で、そこに生きている者にとって今自分が作っている音楽は一体どのように聞こえるのか。 ■文学という形態における「文豪」という言葉にはある共通したイメージが付きまとうが、たとえばロックミュージシャンにおけるそれにはまだ前例がない分、何をもって、どんな音楽をもって「音豪」とするかのパブリックなイメージはない。ただ熟成した表現という意味で年齢を重ねなければ為し得ないロックがこの盤には詰まっていると思う。 ■ゴム紐売りが闊歩し、路地にはイチジクの木がなり、てんぷら学生と呼ばれる若者がいて、歌謡曲以外の洋楽はどれもこれもみんなジャズと呼ばれていた時代。そこから始まった音楽はその人間の成長と共に形を変え、表現を変え、声質を変え、雰囲気を変え、加齢とともに豊穣となる。 ■たとえば5001年のトーキョーで掘り出されたこのCDを未来の人はどう聴くのだろう。もしかしたら文化とか文学とか哲学とか科学とか感受性とか愛情とか憎しみとか、そんなものは何ひとつ残っていない世界がそこにあるのかもしれない。それでもこの音楽が誰かの心に響いていたらすごく素敵だななんて思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011/05/06 11:43:39 PM
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