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カテゴリ:真田丸
■上杉景勝の重臣直江兼続役をキャスティングする際、どうしても声の良い俳優をという条件があったに違いない。ある時は大河の主人公にもなってしまったこの役柄の最大の見せ場のひとつに今回の直江状があった。関ケ原の戦いのきっかけを作った徳川家康を揶揄するかのような内容をもったこの長い長い書状の朗読は村上新悟氏の美声あってこそ。妻夫木君ではああはいかない。
■こうして家康VS三成の戦いの火ぶたが落とされたわけだけど、真田の物語としてはその関ケ原以上にドラマティックなのが次回の犬伏の別れ。公式HPではあと7日というカウントダウンが始まり、PR動画の配信も行われたのだが、ここまでのダイジェストを挟んだこの父と息子たちのこれまでのドラマと、このあと辿ることになるだろうそれぞれの運命が哀愁を煽る煽る。 ■今回、久しぶりに活力を取り戻した父昌幸の家康を討ってかつての領地を取り戻すという野心に兄と弟が結束して追従を約束するシーンに、ああやっぱりこの大河は秀吉や三成や家康のドラマではなく真田一族のそれだったんだと再確認した。そして父の背中を見てきた息子たちは父と同じように食えない策士となっていた。 ■かつて面倒な女になると三成にほのめかされた春の正体は暴露された。わしに惚れてしまったんだと信繁に言った時のジブの表情は今まで見たこともないような勝ち誇った普通の男の顔つきをしており、こんな顔ができるのだったら、もっと仲間たちからも慕われていた可能性があったのに残念だ。 ■ほのめかしといえば、今日のそれは蟄居を言い渡された三成が最後に加藤清正に会いたいと言い、彼の耳元で囁いたセリフが無音になっていたところ。(もちろん字幕でも何も書いていなかった)この時、彼が何を言ったのかは関ヶ原の決着がついた後に何らかの形で氷解するだろう。濃いも薄いも含めて伏線はりまくりの脚本だ。 ■かつて「不思議大好き」というキャッチコピーを考えたのはたしか糸井重里だったと思うが、長澤まさみが堺雅人に言った「不穏大好き」とはこの大河のキャッチフレーズとしてまさに言い得て妙である。このドラマの推進力は内心何を考えているのかわからない人たちの、何が起こるかわからない時代の、誰についていけば一番うまくいくのかを巡る複雑怪奇な人間ドラマである。 ■その時々の流れに身を任せるように飄々と主君を乗り換えているように見えた主人公が家康に向かって堂々と啖呵を切る。また胃の弱いおどおどしているだけに見えた豊臣家の家臣がやはり家康に向かって大声を出す。右往左往しているように見えて、東につくか、西につくかはもう彼らの心の中では決まっている。ただあそこに集まった同士の中にはいまだ心定まらず揺れている人もいたんだという所が、またしても今後のドラマを面白くもするのだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016/08/28 10:20:01 PM
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