ヴェネティアの表玄関に当たるサン・マルコ広場。
サン・マルコ寺院の向かい側にランドマークとも言える鐘楼がそびえ立っている。一度は突然前触れもなく崩壊。奇跡的に死亡者もけが人も出なかった。さすがサン・マルコに守られた鐘楼である。その後新しく建設され,それが現在の鐘楼である。
サン・マルコ寺院でミサが始まるときなど,定時には鐘が鳴り響き,なかなかの雰囲気を醸し出す。この鐘楼の上に上るにはいくらかのお金が必要だが,エレベーターであっという間に上についてしまう。しかしここからの眺めは絶景というしかない。
近くの建物や広場,大小の運河はもちろん,天気さえよければ遠くに位置する島々まで見ることができるのだ。どの方角を向いてもそれぞれが絵になるのであるが,この写真では遠くリドの島が水平線上に見える。
リドって何? そうですアドリア海に面した細長い島で,この島のあちらは外洋なのであります。島のこちら側は潟(内湾)であるから,そのリド島が防波堤になってヴェネツィアを守る形になっている。だから他の城塞都市のようにヴェネツィアには城壁がないのだ。万が一敵が船で潟に入ってきても,船が通ることのできる目印である木の杭を抜いてしまえば,どこを進んだら安全なのか全くわからなくなる。海の水が引いて,やばい,と思ったときはもう遅い。船の底は海底の泥に突っ込んで身動きがとれなくなる。そのときを見計らってヴェネティ側では火矢を放ちたちまちにして敵は泥の中を逃げまどうということになる。
リドと言えば,ヴェネティア国際映画祭の会場になるところ。ビートたけしもここには何度も足を運んだことだろう。写真のこの字型の建物は共和国時代の国会,ドッカーレ宮殿,その向こうの海岸はスキャヴォーニの海岸である。かつては自国の船も,外国の船もここに到着し,ここから船出した,正真正銘の表玄関である。今は多くの人が列車やバスで裏玄関に到着し,ここまで歩くか,あるいはヴォパレットという乗り合いの船で来るわけだ。世界一周の船に乗るか,あるいはエーゲ海クルーズなどの船に乗らない限り表玄関からヴェネツィアに入ることはないだろう。しかし,本当は表玄関側からヴェネツィアに近づくのが一番感動する。ああ,とうとうヴェネティアに来たんだな,と。