高知に自然史博物館を

　選挙が終わった．刻々と民主党の惨敗を伝える報道に飽きてチャンネルをいじったらF1をやっていた．かつてマクラーレン・ホンダがアイルトン・セナという最強のドライバーを得て連戦連勝していた頃のF1人気はすごかった．マスコミが煽り，猫も杓子もF1に群がった．しかし，その後マスコミは手の平を返すようにF1の報道をやめて，ブームは去った．スポーツの人気というものが，いかにマスコミによって影響を受けるかを示す好例である．
　この日は大相撲名古屋場所の初日でもあった．相撲の実況テレビ中継はなく，夜のニュースでは白鵬の健闘ぶりが断片的に流れた．大相撲ダイジェストのような形での放映があったのかどうかは知らない．まさか相撲の人気までもF1と同じ軌跡をたどるだろうとは思わないけれど，マスコミがそうしたいと望めばそうなるだろう．日本人の思考がマスコミに影響されることの大きさ，支配される傾向の強さについて実感せざるをえない．
　そしてサッカーである．深夜のファイナルは 0 : 0 のまま延長へ．スペインのイニエスタ選手がゴールを決めたのは延長後半の終了間際．しらじらと夜があけはじめていた．思うにこのサッカー人気もまた，マスコミによって作られたものである．現に前日の3位決定戦は，じつは非常にエキサイティングな試合だったらしいが，ろくに話題にならなかった．これは一般チャンネルでの放映がなかったことにその一因があると思う．それで特に不満の声が噴出したという話もない．日本のサッカー人気の底の浅さがわかる．

　選挙の話であった．
　今回の民主党の惨敗については，その主要な理由をマスコミに帰することはできない．もちろん民主党の不人気の理由は，その一端はマスコミにある．民主党に対しマスコミが，さまざまなネガティヴキャンペーンを盛り上げてきたことは，このブログでも何度か指摘した．しかし，そういうマスコミに対する対応のまずさ，脇の甘さも含め，政治家としての資質の不足を一貫して露呈してきたのが民主党政権であった．

　そもそも，言うことすることがブレまくり，ズレまくりの政治屋に，選挙で票が入らないのは当然のことである．公約の遵守は政治家として基本の「き」ではないか．その基本を破棄して全く悪びれることがない．いちおう政権交代に成功したものの，その後つぎつぎと連発されたオウン・ゴールの数々．最重要であるべき経済財政政策はそっちのけで取り組んだ大問題は，どれも迷走のあげく自民党と同じ方針に落ち着くという大根役者ぶり．首相が代わり，やっと経済財政に取り組むのかと思ったら，とうとつに消費税の増税を言い出した．それを新首相が，事もあろう時もあろうに，選挙前にいきなり増税を「公約」するというお調子者ぶり．
　昨年の政権交代の立役者だった小沢氏を遠ざけて，さてどんな選挙をするのだろうと思ったら，どうやら特別な作戦はなかったらしい．そして首相が何か言うたびするたびに，国民の支持は急降下して行った．

　選挙が終わってからの話だけど，「世に噛む日々」さんのブログ
http://eiji008.blog19.fc2.com/blog-entry-182.html
に次の記述を見つけて，思わず天を仰いだ．

（以下転載）
金庫番として、選挙資金を管理した小宮山議員が「明朗会計」をモットーに、全候補者に「平等」にカネを分配したことも、大敗の一因であったろう。
何が「明朗会計」だ、キャバクラの呼び込みじゃあるまいし。
171万票を獲得した蓮舫議員と、当落線上であえでいた新人候補が、なぜ、同額なんだよ。
選挙の何たるかもわからないど素人にカネを預けるなんて、家計を小学生の娘にまかせるようなものではないか。
（転載おわり）

　小学生の娘，という比喩の当否は別として，小宮山議員は自分の仕事を勘違いしていたのでないか．私のコトバで言えば，監督とマネージャーは違うのだ．大胆な独裁やルール違反も含め，勝つために決断せねばならない事が監督にはある．そのようなリスクを犯さず，万事支障を来さないよう処理するのがマネージャーである．小宮山議員は監督の仕事を委ねられたのであろう．ところがこの人はマネージャーの仕事をやってしまった．
　とにかく，プロの政治家だろうと思われていた人たちが，じつは全くの素人集団，政治オンチの集まりであったことが判明したわけで，そういう政党が支持されないのは，これまた当然すぎるほど当然のこと．
　そして，あの崩壊寸前だった自民党がみごとに蘇ってしまいました．これが菅直人氏がやった最大の罪である．菅氏は即刻辞任すべきだと私は思います．

　さて，
　これほど露骨に公約を破ってきた，また今後も破ると公言しているような政党を支持できる訳もないので，とにかく民主党にだけは入れまい，と私は決心していた．
　ところが選挙の前日，夕方8時台から9時台のゴールデンタイムにである．選挙運動に走り回る各党の党首を追ったドキュメントをNHKが放映した．見ていて私は大きな疑問をもってしまった．公平を装ってはいるが，この番組は野党，とりわけ自民党のイメージアップに大きく貢献したと思う．
　この番組を見て私の考えは変わった．今は民主党を叩くよりも，自民党を復活させないような投票行動をとるべきだと判断した．そして選挙では民主党に投票した．

　かつて小泉首相がやったような悪政を再現させてはいけないと思う．だから自民党を勝たせてはならない．私は民主党を支持しないけれど，ここは民主党に入れるしかない．そう思った．結果は残念なことになった．しかし民主党のご本人たちは，あまり反省もしてないようなので，これで良かったと言うべきかもしれない．
　勝ちを収めつつあるのは既得権者たち，すなわちマスコミであり官僚である．この人たちの高笑いが聞こえない政治家は，早くおやめになった方が良い．