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8月21日.衛星を使った世界初のテレビ生中継だ,とNHKが息まいている.夜11時から朝5時ころまで.全3幕で,幕間の休憩時間は2回とも約1時間.リアルタイムでの放映だから,幕間の時間を省略することはできない.見る側は夜通し起きていなければならない.いつ眠るんだ?という大問題はあるが,とにかく見ることにした.
で,第1幕.舞台中央にあるはずのトネリコの大樹はなくて,逆さになった電信柱がある.電信柱であらねばならぬ必然性は理解できないものの,あとは「トリスタン」ほどの違和感はない.意表をつかれたのは,フンディングの一族が犬のかぶり物をかぶって登場したこと. この幕の見せ場は,やっぱりジークムントとジークリンデの二重唱,というのかどうか知りませんが,幕の後半ですね.お前は妹にして花嫁,とジークムントが歌う.そしてトネリコじゃなくて電信柱に刺さっている剣を引き抜いて,ワシはジークムントじゃ.お前(剣)をノートゥングと名付けよう,と宣言する.有名な場面だし,演奏も良かった. 第2幕は,ワルキューレが登場する.真っ赤な衣装.予告篇でチラリと見て「火の神ローゲ」だろうと思っていたけど,あれはワルキューレだったんだ! フリッカ役の藤村実穂子さんにさんざん噛み付かれて,ヴォータンがトンデモナイ方針変更をしたあたりで,睡魔が襲ってきた.そしてジークリンデが登場.睡魔はもう完全にワシを支配している.ダメだこりゃ. ブリュンヒルデ(ワルキューレ)がジークムントに「死の告知」をする場面.コーヒーを入れて頑張って眠気を払う.決闘の場面.ヴォータンは自分の槍でジークムントを殺す.そして,逃げたブリュンヒルデを追う. 第3幕.8人のワルキューレたちはブリュンヒルデを匿(かくま)おうとするけれど,ヴォータンには逆らえない.ブリュンヒルデはヴォータンと口論(懇願?)して,どうやらヴォータンは方針変更. そして最後の名場面.横たわるブリュンヒルデに透明なタテ?を被(かぶ)せ,火の神ローゲを呼ぶ.「ローゲよ来れ」.と言ったあとで,なぜか自分で火をつけてまわる.働き者のヴォータンであった. 炎がチラチラと燃え始め,やがて大きな炎となって周囲を包む,というような情景を音だけでみごとに表現している.ワグナーの情景描写の底力を見せつけられる場面です. いっぽう舞台のほうは炎は一切なくて,赤い光が点灯し,舞台全体が赤くなる.そして煙が立ち込める.「ワシの槍を恐れる者は,炎を踏み越えるな」と呪縛をかけて,煙のかなたにヴォータンは立ち去る.う~ん.やっぱり名場面だ.音に感動.良かった! まだ5時だ,さあワシもひと眠り.ローゲよ来れ! というわけで,翌日はほとんど眠りながらクルマの運転とかをするハメになってしまいました. 現地と日本との時差は7時間とか言っていた.ということは現地では夕方4時から夜10時まで.バイロイトは北緯50度.つまり樺太の中央,カムチャツカ半島の南端ぐらいの緯度である.夏の夜10時というのは,やっと暗くなりかけたという程度の時間帯かも.その黄昏(たそがれ)の時間帯.幕間の休憩時間には,聴衆たちは屋外で談笑していたのではないだろうか.そういう場面も見せてこその「臨場感」だと思う.ところがNHKは幕間の時間帯をほとんど解説やら町の紹介(リアルタイムでない情報)で埋めてしまった.せっかくのナマ中継なのに,臨場感を薄めてしまう結果になったと思う. お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 24, 2010 10:38:48 AM
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