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カテゴリ:映画
快作とはこんな映画のことをいうのではないだろうか。
ラッセル・クロウ演じるマックスは、高度資本主義社会の最先端で、日々戦っている豪腕トレーダーだ。 セレブのような生活。女好きの独身貴族。マックスの人生のすべては、ロンドンのオフィスの中にある。そこは現実というより、ヴァーチャルリアリティーと呼ぶ方が相応しい世界だ。羨望、嫉妬、憎悪で敷きつめられた人間関係。それらが醸す空気がマックスのまわりには常に漂っている。 そんな彼のもとへ、名優アルバート・フィニー演じるヘンリー伯父さんの訃報が届く。少年の頃のマックスは、ヘンリーの住むプロヴァンスで夏休みを送っていたのだ。懐かしい思い出が頭をよぎるが、マネーゲームに明け暮れているマックスには、感傷に浸る時間も無い。 彼は、莫大な遺産相続の手続きを済ませるために、陽光の降りそそぐ南仏プロヴァンスを訪れる。 プロヴァンス生まれの画家セザンヌが描いたような、美しい風光の地に独身男がひとりでは似合わない。ここまで書けば、話の筋は見当がつくだろう。 少年の頃、不思議な出会いをした少女と再会し、当たり前のように恋に落ちる。もちろん、ヘンリー伯父さんの娘だと名乗る若い娘も現れる。 そんな場景を、リドリー・スコット監督は、軽快なワインを想わせるようなタッチで爽やかにつづる。 ユーモアだって忘れはしない。天国のヘンリー伯父さんは、10年間も疎遠になっていたマックスにチャーミングな復讐をする。砂と間違い、鳥の糞をつかんだり、犬にはおしっこをかけられる有様だ。しまいには、水の入っていないプールに落ちて泥だらけになってしまうのだから、ロンドンのセレブも台無しだ。 リドリー・スコットは、下品な通俗ドラマになりかねない題材を、カットバックを多用しながら爽やかに織りあげていく。 するとどうだろう。イギリス人でありながら、プロヴァンスで悠々自適の生活を送っていた謎の多いヘンリー伯父さんと、マックスの将来が重なってくるではないか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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