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2011年10月26日
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カテゴリ:文学
★ 『 ハーモニー 』 伊藤計劃 著(ハヤカワ文庫)


早逝のSF作家、伊藤計劃氏の、第2作にして最後のオリジナル長編小説。


以前評した『虐殺器官』で描かれた「虐殺の混沌の世界」後に続く、極端に市民の健康を管理された、一見平和な世界を描いている。

『虐殺器官』に比べると、軍事技術などの細かい描写が減り、読みやすさは向上していると思う。

内容と言うか、文章表現そのものがミステリアスで、工夫があり、ラストには色々な意味で感心させられた。


ただ、私が読みながら感じていた短所(読み手によっては長所であるかもしれない)が、あとがきで著者のインタビューとして紹介されている通り、「ロジックを考えるのは好きだが、エモーションの部分が難しい」という点。

つまり、キャラクターはロジックを語らせる為に捻出された感じがアリアリで、良い意味では無駄が無いが、キャラクターの魅力という点では、少し説得力不足で定型的。これは、『虐殺器官』でも少なからず感じられたことだった。


また、話が核心に近づく度に、特定の事件の回想シーンに戻るという手法は両作品において頻繁に使われているが、これが、私には少々、まどろっこしい。勿論、それ相応の効果はあるとは思うが、時系列に沿ったストーリー運びにしていただいた方が、私的には気が散らなくて良いのだが。


まあ、その分、余計な情景描写が少なくて、文章としては読みやすいとは思う。

セリフや行動描写はそのまま、アニメ映画の脚本に使えそうなくらい、単純明快に目に浮かぶ。まさに、両作品の主人公とも、アクションアニメにしたら、「いかにも」なヒーロー(ヒロイン)が完成しただろう。


最終的にロジックを理解、共感出来るかどうかは別だが…。

正直、ストーリー(ロジック)に感銘したのか、文章表現的な「仕掛け」に虚を突かれたのか、自分でもよく分からない。


もう一度読み返せば、もっと魅力が見いだせるかもしれないと思うのだが、イマイチ、2回読み返す程のモチベーションを持てないところが、私の感じてしまったキャラクターの薄さに起因するのかもしれない。


ともかく、読後には、「やられた(なるほど)」感を味わえるとともに、若干の「鬱」感も残るストーリーだった。(この作品を書き終えて、じきに著者が亡くなったという事実も、こうした思いを増幅させる)


総合的には『虐殺器官』より、私はこっちの方が面白かった。


…ところで、物語全体の価値に影響するものではないが、「いいトシして」とバカにされそうだけれど、私は未だに、ストレート過ぎる性描写(性暴力シーン)が苦手だ。

純文学とか衝撃作とか言われる小説には、しばしば、過激な性描写や暴力描写が見られるが、その辺を描かないと、「哲学性」って成り立たないもんなのだろうか?

しかも、大抵の場合、そういうものは、映像的な描写よりも、文章で読まされる方が却ってショッキングなのだ。…私にとっては。


この作品で描かれる、そうしたシーンは、私が言うほど酷い部類ではないかもしれないが、もしも、映像化(アニメ化)するとしたら、障壁になりうるだろうとは思う。

まあ、実際は、映像化するにあたっては、そのこと以上に、もっと「大きな壁」があるのだが…(読めば分かる)。



<関連日記>
2011.10.7.  SFって何ぞや?・・・『 虐殺器官 』伊藤計劃



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<内容>

21世紀後半、「大災禍」と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した―それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰にただひとり死んだはずの少女の影を見る―『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。第30回日本SF大賞受賞、「ベストSF2009」第1位、第40回星雲賞日本長編部門受賞作。

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最終更新日  2016年10月12日 00時19分15秒
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