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2017年05月31日
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カテゴリ:漫画・アニメ
★ 『 アイスフォレスト 』 さいとうちほ (2007~12年)



電子書籍無料版およびレンタルにて、全12巻読了 (文庫版 全6巻)。


怪我でシングルフィギュアスケーター選手としての道を諦めた少女が、アイスダンスでの世界トップを目指す話。


さいとうちほさんの絵柄・作風は、 『とりかえ・ばや』 のような時代物にはピッタリだと思ったが、スポーツものとなると、ストーリー展開も相まって、若干、古くささを否定できない。

ただ、絵の上手さはやはり際立っている。 同じくアイスダンスを描いた 『キス & ネバークライ』(小川彌生) を読んだ時も、この題材は本当に画力のある作家でないと描けない、と思ったが、リフトの描写の美しさなど、惚れ惚れしてしまうくらいだ。


内容的にも、(アイスダンスの) カップル間、コーチ、ライバルらとの葛藤だけでなく、競技アイスダンス界の実情を赤裸々に描いている (『キス&ネバークライ』 よりも さらに踏み込んでいる) ので、なかなか興味深く読めた。


ただ、どうしても、競技界にまつわる、裏の政治的画策や陰謀などの描写が多くなりがちで、キャラクターの魅力が今一つ描ききれていないのが残念に感じた。

特にヒロインは、スケーターとしての才能があることについては 試合の描写やセリフ等で分かるのだが、人柄的には 「可もなく不可もなく」 という印象で、余り感情移入はできなかった。


恋愛描写も なかなか濃厚と言うか、ドロドロしていて先は気になるが、終始、昔ながらのメロドラマ展開の型を脱しきれない感じで、『サインはV』 やら 『エースをねらえ!!』 の時代まで遡って思い起こされてしまった。

ただ、密着度がスコアに反映され、ムードや表現力が必須なカップル競技である限り、リンク外でも男女の恋愛感情、または葛藤が避けて通れないのは現実だろうと思うので、「スポ根に恋愛は余計だ」 などと批判するのも野暮だ。


ひとつ、気掛かりなのは、この作品中で明かされるアイスダンス界の実態は、嘘や誇張とも言い切れないが、舞台となったバンクーバー五輪の時期からは 改善されてきていると思うし、これを見て、フィギュアスケート全体が 「裏の政治力で順位が左右される 汚い競技」 と信じ込む人が増えないと良いが… 、という点だ。


特にシングルについては、バンクーバー後のルール変更によって、かなり政治力の入り込む余地が少なくなった。

以前は 少しでも回転不足を取られると減点が大き過ぎて割に合わなかった 「4回転ジャンプ (女子は3回転の連続ジャンプ)」 のリスクが軽減されて挑戦し易いルールとなり、今は、どんなに芸術点でスコアを底上げされても、多種の高難度ジャンプを確実に跳べない選手は、世界では簡単には勝てなくなっている。

こうなると、どうしても、体重の差がものを言うようになり、もともと小柄で太りにくいアジア人種が 寧ろ、スタートから圧倒的に有利になってきた。 ロシアの女子選手が、ジュニア時代には強化策の成功と非凡な才能で台頭しても、シニアに上がる16歳を過ぎる頃から 背が伸び体重管理も難しくなるにつれ 調子を崩し、次々新旧交代していく様も、ルール変更以降 一層目立つようになった。


それに比べると、アイスダンスは、採点のポイントが素人には分かりにくい為、旧態依然としているように見えることは否定できない。 世界トップに君臨するカップルが長期にわたって固定化している事実も、「五輪競技として相応しいと言えるのか」 と疑問を感じるところがなくもない。


ただし、仮に裏の政治力がものを言う競技だとしても、有力国の選手たちが、大した努力も実力もなく、見た目の美しさだけでトップに行けると思うのは大間違いだ。

アイスダンスの実力の差は、テレビ画面よりも、実際に会場で観ると歴然と違いが分かる。一時期、日本国内では負け知らずだった リード姉弟ですら、世界メダル級の選手に比べると、スローモーションを観るようなスピードの遅さだった。


欧米のフィギュア界では、ジュニア時代から、容姿やスケーティング技術の高い選手を選び抜いて早々にカップルを結成させ、早くから厳しく鍛練させている。 見た目が美しければ、より、ファンやスポンサーもつきやすいし、練習環境も組織的にバックアップしてくれるから、結果的に強くなる。

シングル指向が強く、ジャンプなどで挫折した選手が、大人になってから やっとアイスダンスに転向するような日本が、一朝一夕に強くなれるわけがないのだ。


アイスダンスに限らず 採点競技で日本人が勝てないと、短絡的に 「八百長」 だの 「人種差別」 だのと騒ぎ立て、外国人選手を個人攻撃する人がいるが、真剣に努力している選手らに罪はない。 いちいち八百長を疑っていたら、そもそも競技として成り立たない。 多少の政治的不公平があることは 選手も覚悟の上で、さらに高みを目指さなければならないのが この競技の宿命、と分かってやっているだろう。


この作品を読むと、そもそも、アイスダンスにおいては 「日本人は見た目のオーラで劣っているから限界がある」 かのような印象を受けるかもしれないが、そうした諦観に支配されていること自体が、選手を育成できない大きな理由の一つになってしまっている と私は思う。

男女のスキンシップの習慣に乏しく、特に、リフトに耐えられるほど体格や運動能力に恵まれた男子がフィギュアより「男らしい」スポーツをやりたがる日本では、よほど、関係者 (日本スケート連盟) が、意識してジュニア時代から選手をスカウトし、金銭面の援助含めて真剣に育成する努力をしなければ、いつまでもアイスダンスやペアの選手は育たないだろう。


現状では、五輪の団体戦など、最初から捨てた方が良い。 無理に出場しても、シングル選手を無駄に消耗させるだけだ。



<関連日記>
2013.8.5. 小川彌生 『 キス & ネバークライ 』…… フィギュアスケート ファンも楽しめる

2014.5.27. 小川彌生 『 銀盤騎士 』…… フィギュア男子の過酷な闘争の内情を ラブコメ漫画で学ぼう

2016.10.14. アニメ 『 ユーリ !!! on ICE 』…… 設定が荒唐無稽なのが良い


2017.5.3. さいとうちほ 『 とりかえ・ばや 』 ・・・ 「性別違和」 の苦悩と孤独を浮き彫りに









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最終更新日  2017年06月01日 21時00分19秒
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