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2017年05月03日
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カテゴリ:漫画・アニメ

★ 『 とりかえ・ばや 』 さいとうちほ (2012年~)



電子書籍無料版およびレンタルにて、既刊11巻中、9巻まで読了。


平安時代後期に成立したとされる、作者不詳の 『とりかへばや物語』 を漫画化した作品。


関白左大臣家に生まれた 「男っぽい娘」 と 「女っぽい息子」 が、それぞれ性別を偽って宮中で生きる中、様々な障害や苦難に対峙する …という波瀾万丈物語。

ストーリーそのもののドラマ性も去ることながら、平安期の貴族の生活や婚姻制度などを何となくも知ることができるので、かなり面白い。


さいとうちほさんの作品は初めて読んだが、作画も非常に良い。 若干、古臭さを感じる絵柄ではあるものの、それも含めて作品世界によく合っている。 非常に線が綺麗で、背景や衣装など細やかに描き込みつつ、コマ割も整理されていて読みやすい。


原作の 『とりかへばや物語』 は、 「性的倒錯劇」 のような扱いをされ歴史的な評価が低いようで、 『源氏物語』 などと比べると、かなりマイナーだと思う (実は、私もよく知らなかった)。

男の目で見れば 「異性装」 という設定は、単なる 「倒錯」 と感じる人が多いかもしれないが、現実社会で差別されがちな女性にとっては、男装の麗人が男社会 (表舞台) で活躍する話は 「痛快」 なものであり、フィクションだからこそ感情移入しやすいのではないだろうか。


原作を読んでいないので、どの程度、設定やストーリーに忠実なのか分からないが、当時の貴族男性が武道や戦闘力など求められず、女性は分厚い十二単に包まれ 余り表に出ずとも済んだ時代なだけに、 「メチャクチャ荒唐無稽な話」 という感じはしない。


主人公らは、 「性別違和」 の問題以外においては 常識的で素直な性格だし、この手の話にしては、 (多少の陰謀はあれ) 極端に性悪 (性格異常) なキャラが少ないので、案外、安心して (?) 読める。

主人公らの両親に理解がありすぎるように感じるのも、特殊な時代背景だから…と、納得できなくはない。


人間関係がドロドロし過ぎないとは言え、主人公の男女のジェンダーの苦悩や孤独を丁寧に浮き彫りにし、男性の (罪悪感なき) 浮気性などを辛辣に描き出しているので、単なるメロドラマにとどまらず、哲学的なメッセージも含んだ内容になっていて、大人向けな作品ではないかと思う。


物語自体は、7巻あたりから、徐々に、行き着く先が見えてしまうし、やはり、この時代の作品だけに、 「性同一性障害」 の本質的な救済を描くには至らなそうだが、面白さは (9巻までのところ) 失速せず、どう まとめるかの興味が尽きない。



<関連日記> ※ジェンダー
2013.8.20. 上田倫子 『 リョウ 』…… 歴史フィクションの限界

2014.7.19. 乃木坂太郎 『 幽麗塔 』…… ミステリーの中で描かれる アウトサイダーな人々の悲哀

2014.7.26. 中村明日美子 『 Jの総て 』…… 映画のように退廃的に 性同一性障害を描く

2016.8.6. 岡本倫 『 ノノノノ 』…… 打ち切りも仕方ない (?) 不運な作品

2017.1.3. 菅野文 『 薔薇王の葬列 』 ・・・ 設定や雰囲気の良さを活かしきれていないのが残念













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最終更新日  2017年05月03日 23時41分01秒
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