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地元紙の記事の転載です。
国産漆の約7割の生産量を誇る二戸市。昨年12月には、漆掻き技術を含む「伝統建築工匠の技」がユネスコの無形文化遺産に登録され、「浄法寺漆」が脚光を浴びた。 長年の悩みである生産体制と、販売力の強化が急務となっている。 漆生産はこれまで、需要量の変動に大きく左右されてきた。2013年以降は、生産量が年間1トンを割り込み続けたが、15年に文化庁が国宝など文化財修繕に、原則として国産漆を使うよう通知すると、状況は一変した。 今後は年間2.2トンが必要となる試算が示され、各地から急増した注文に、供給が追い付かなくなった。 需要に応えようと、市は23年までに生産量を年間2トンに引き上げることを目指した。実現に不可欠なのが、原木と漆掻き職人の確保だ。 17年末時点の原木は約14万本で、職人は26人。2トンを生産するには、原木は最低18万本、職人は40人が必要と試算された。 喫緊の課題は、苗木の供給体制の確立だった。市は、地域おこし協力隊として苗木生産に当たる「漆林フォレスター」に2人を採用した。 19年度から7年間で、計13万5千本を植栽する計画を進める。市漆産業課は「岩手県などの技術支援もあり、今は順調に課題をクリアしつつある」と説明する。 文化庁通知のあった15年以降、生産量は右肩上がりとなり、20年度で1.53トンまで増加した。並行して職人数も増え、現時点で38人に達した。 地域おこし協力隊の漆掻き技術を習得する「うるしびと」として市に採用され、市外から移住する若者も徐々に増えている。 職人数は目標に近づきつつあるが、県浄法寺生産組合のI組合長(72)は「組合員は高齢化が進み、漆掻きをやらない人も出てくる。うるしびとの採用を続け、定住する職人を更に増やしてもらわなければ」と強調する。 これまで、うるしびとの任期を終え、職人として独立したのは4人。一方、独立に至らなかったのも4人いる。中には、漆のかぶれに耐えきれなかったという、仕方ない事情の人もいる。 ただI組合長は「将来は家庭を持ち、長く暮らすことを考えると、やはり安定した収入が必要だ。原木が増えるには長い期間を要するので、作業のない冬場の副収入も大事」と話す。 うるしびとから職人になった、北海道出身の千葉裕貴さん(38)は「移住者にとっては、手ごろな住居や、適性に合った副収入の仕事がないかなど、情報共有ができる支えが欲しい」と訴える。 より広い視点で見れば、漆資源を生かした観光誘客や、まちづくりも重要な課題となる。 20年に「奥南部漆物語」が日本遺産に認定されたことを受け、二戸市と隣接する八幡平市の関係者が協議会を設立した。安比川流域の漆文化の調査研究や、誘客に向けた宣伝に、共同で取り組み始めた。 天台寺周辺の浄法寺歴史民俗資料館や、重要文化財収蔵庫も活用し、地域の歴史と漆生産の結びつきを体感できる環境の整備も不可欠だ。 国内外から評価が高まる浄法寺漆への「追い風」を生かし、地域活性化につなげることが求められる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2022.01.17 00:58:27
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