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カテゴリ:カール・ツァイス
えー、andoodesignさんの周辺がなにやらF0.95でざわざわしています。うーむ。もう少ししたら爆弾を落としに行こうかしら(謎笑) です。それではどーぞ。 写真の世界に大口径レンズが登場することになったのは、どうすれば暗い部屋、夜に三脚を使わず撮影できないのか、といった写真家の願望がレンズ屋の耳に入っていたからでしょう。時は1900初頭、レンズ構成と言えばトリプレットであり、開放値は小さくてもF3.5ぐらいでした。小さいカメラの主流はまだライカではなく、アトム判や6x7、6x9のハンドカメラ(蛇腹付きのスプリングカメラ)でした。もちろんフィルム感度もASA100なんて夢のようなスピードで、6とか12とかだったとのことです。つまり、ちょっと暗い光線状態だと、ブレを覚悟するか三脚を使わなければ撮れない時代だったのです。 1924年にエルネマン(後にカール・ツァイスに吸収される)在籍していたルードヴィッヒ・ベルテレは、24才の若さで「エルノスター100ミリF2.0」を天才的なひらめきによりトリプレットをベースに発明しました。このエルノスターを搭載したカメラが「エルマノックス」であります。 広告コピーが「目で見えるものなら何でも写せる」というこのカメラを使って数々の写真を撮ったのが、エーリッヒ・ザロモンです。彼は暗い議会会場へエルマノックスを持ち込み、議員達の談笑する姿を撮影しました。いわゆるキャンディット・フォトの始まりでもあります。当時暗い場所で写真を撮ることなんて不可能だという認識が一般的にあったのでしょう。最初の頃議員達はザロモンがカメラを持っているなんて思いもせず、写真を撮られたことなど知るすべもなく、ありのままの姿を世にさらけ出すことになったのです。その後「ザロモンが来た」と議員達は逃げる始末。最終的にはアトム判(45x60ミリの乾板)エルノスター100ミリF1.8、あるいは125ミリF1.8を、ザロモンは使ったようです。この話、写真史では必ず通ります(笑) まぁ言ってみれば、ザロモンを「大口径開放スナップ撮影の父」と言ってもよいかと思います。 ザロモンがツァイスの大口径レンズを使い様々な写真を残しました。そのエルノスターを小型化し発展させたのが、ベルテレの次の発明である「ゾナー」です。1934年、いわゆるイチゴゾナーというコンタックス用交換レンズの50ミリF1.5です。ツァイスはゾナーをライカはズミターを開発し、小型カメラ大口径レンズ開発戦争の開戦となったと言っても過言ではないでしょう。 しかしながら、ゾナーは不運の道をたどります。高い工作制度が要求される張合わせレンズの多さ、後ろのレンズからフィルムまでの距離が短いこと、大口径の先陣を切ったのにそれ以上の大口径化が難しかったことなどにより、大口径レンズの地位から失脚してしまいます。 大口径レンズ戦争のもうひとつの相手はライカであり、採用したのはダブルガウスタイプでした。この辺りから大口径レンズを製作するのはダブルガウスタイプが優れているという方向へ舵が切られたのです。 時代を少々さかのぼります。ダブルガウスを開発したのは「パウル・ルドルフ」です。1896年にツァイスへ招かれ、1896年に数学者であり天文学者の「ヨハン・カール・フリードリヒ・ガウス」が発明した「ガウスタイプ」という凸レンズと凹レンズを1組み合わせた構成を元に、絞りを挟んで対称にもう1組逆配置させることで収差補正ができるダブルガウスタイプを発明します。つまり「プラナー」のスタートです。しかしながらプラナーも一旦ツァイスの中で不運なレンズとなりました。球面収差補正に優れているものの、空気接地枚数が多いために他のレンズに比べてフレアが多く、忘れられた存在となったのです。その後ルドルフはトリプレットから発展させた「テッサー」を発明し、そちらが主流レンズとなって行ったのです。 ちなみにルドルフはベルテレの前のツァイス光学設計部長でした。1911年にツァイスを退社してフューゴ・メイヤーへ行き、あのプラズマートを設計したことは有名ですね。どうやらゾナーの登場前にプラズマート50ミリF1.5を設計したようです。 プラナーに再び光りが当たるようになった最大とも言ってよい要因は、新種のガラス開発とレンズへのコーティング技術の開発でした。様々な屈折率のガラスを組み合わせ、ガラスへコーティングをすることにより、収差を減らし反射を減らしフレア発生を押さえることができるようになったのです。そしてプラナーは1953年に、それまでテッサー80ミリF2.8だったAタイプの後継機のBタイプとして、ローライフレックスで復活します。ここからプラナーに怒濤の勢いが付きました。ハッセルブラッドへのレンズ供給、コンタレックスの開発など、ツァイスと言えばプラナーというような看板レンズ構成へと発展していきます。 プラナーには、大口径レンズを設計しやすく、後ろ玉とフィルム面までの距離を確保しやすく、色収差や球面収差を補正することが容易く、いわゆるフィルム面に対する均一性平坦性に優れているという特徴があります。したがって大口径レンズと言えばプラナータイプが増えたのでしょう。ツァイスも標準レンズで言えば、ローライやハッセル用の80ミリF2.8を始め、小型カメラ用として、50ミリF2.0、F1.8、F1.7、F1.4、55ミリF1.4などの優秀な大口径レンズを送り出しています。 ここで疑問を持ちました。プラナーが標準レンズとして大口径化しやすいことはわかった。んじゃ、最高に明るいレンズはどこのなんなのよ? あまりに長文になるので、つづく。 「夕刻の赤い実」 Canon EOS 5D CONTAX Carl Zeiss Planar T* 55mm F1.2 Copyright (C) 2008 GINJI, All Rights Reserved. 「大口径開放戦線」 新サーバで再起動中! やはりプラナーのボケ味は最高♪ & 日記が面白かったという人も、web拍手をクリックしてくださいね♪ カメラ鍋の撮影に成功したら、こちらの画像掲示板へどうぞ コメントや掲示板についてのお知らせがあります。 ご一読くださいませ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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つづきが待ち遠しいですぅ~
(2008.09.25 19:18:53)
特注のZeiss50mm/F0.7が出てきますか?
知っている資料はコレだけ↑なんですが 詳しく知らないし他にもあるなら楽しみ~ 兎も角 でっか 前ガラスは理屈ではなしにカッコエエ ところで 禁止設定は一体どんなものを? アドレスを書いたらはねつけられました (2008.09.25 20:53:45)
の0.7は有名ですね。
調べてみたら、0.75ってのはCANON, KOWA, Rodenstock XR-Heligon & TV-Heligon, WRAY, RAYXAR (150mm !)といろいろあるんですね。 うう、Noctilux 0.95やっぱり欲しくなってきた・・・ (2008.09.26 07:09:35)
今回登場したレンズ史上の登場人物名は「ガウス」氏くらいしか知らない僕ですが、大口径ウイルスで大いに発熱してます。
まだまだ奥が深い大口径の歴史、そしてまだ見ぬ未知の大口径...。 うう、楽しみでもありますが、「爆弾」はそっと落として下さいね...。 (2008.09.26 18:31:59)
GG-1さん
本文最後の「お知らせ」にもある通り、スパム防止のために一時的にコメント欄へリンク表記を蹴っています。ごめんなさいね。 ぜひともその資料を見たいので、トップの「メッセージを送る」から教えてくださいませ。 (2008.09.26 22:28:54)
jujube さん
まだ他にもありますよ( ̄ー ̄)ニヤリ しかし、まともに写真撮影で使えるものはなさそうですね。 まともに使えるラインとすると、やはり0.95が最速 かもしれません。 のくちぃぃ! (2008.09.26 22:34:07)
andoodesignさん
ほらほら。人様とは違う大口径を持ちたくなるでしょぉ~♪ おそらく「まともさ」加減で撮れるのは新ノクチ0.95でしょうなー。 欲しいなー(笑) (2008.09.26 22:40:47) |