血液の鉄人のささやき-1.あなたの知らない「梅毒」の真実:なぜ今、女性の感染が急増しているのか?-
「梅毒」と聞いて、あなたはどんなイメージを持つでしょうか? 古い病気? 自分には関係ない?残念ながら、その認識は今日、大きな転換期を迎えています。国立健康危機管理研究機構が2025年7月15日に発表した最新のデータによると、梅毒の新規報告件数は7,167件に達し、昨年を上回るペースで増え続けています。このままでは、2023年に記録した過去最悪の年間報告数1万4,906件を更新する可能性が高いとされています。かつては減少傾向にあった梅毒が、なぜ今、これほどまでに猛威を振るっているのでしょうか? そして、特に注目すべきは、女性の感染割合が急速に拡大しているという事実です。なぜ今、梅毒が急増しているのか?性感染症専門の医療機関「プライベートケアクリニック東京」新宿院の尾上泰彦院長は、その背景には現代社会の複雑な変化があると指摘します。社会構造の変化:マッチングアプリやSNSの普及: 匿名性の高い出会いが増えたことで、性的な接触の機会が広がったと考えられます。女性の社会進出と性的選択の自由: 女性が経済的に自立し、自身の性的選択に対してより自由になったことで、性的な交渉の機会が増加した可能性があります。未婚者の増加: 1980年には男性2.6%、女性4.45%だった50歳時点での未婚率が、2020年には男性28.25%、女性17.81%にまで急上昇しています。尾上院長は、独身者の「さまよえる性欲」が影響している可能性を示唆しています。性機能改善薬の普及や訪日外国人の増加も、性行動の活発化に拍車をかけていると言われています。予防意識の低下と検査機会の増加:性感染症全般に対する予防意識の低下が見られます。一方で、妊婦健診の普及などにより、これまで気づかれなかった潜在的な感染が顕在化しているという側面もあります。特に、経済的に余裕があり性活動も活発な現在の50代においては、女性が性的パートナーを見つけやすくなっている傾向が指摘されています。また、女性専用の風俗利用も増加しているとのことです。梅毒の現状と、私たちへの警告梅毒は、1970年代に年間6,000件を超えていたものの、1980年代以降は激減し、1993年からは年間1,000件を下回る状況が続いていました。しかし、2013年に再び4桁に達して以降、増加の一途を辿り、近年は年間1万件を超える水準で推移しています。これは、決して看過できない状況です。世界の現状に目を向けても、梅毒の流行は深刻です。世界保健機関(WHO)の報告によると、2022年には15〜49歳の年齢層で800万人の新規感染者が確認され、梅毒に関連する死者数は23万人に達したとされています。特にアメリカでは、2022年に新規感染者数が20.7万人を超え、3年前と比較して80%も増加。さらに恐ろしいのは、先天性梅毒(母子感染)患者が3,700人を超え、231件の死産、53人の乳児死亡が報告されている点です。アメリカでは、性感染症専門医の減少や検査体制の脆弱化が「医療崩壊」を引き起こし、梅毒流行に拍車をかけていると考えられています。尾上院長は、「日本でもいずれ米国と同様の状況が現れる可能性がある。流行は今まさに始まったばかり」と強い危機感を表明しています。私たちにできること梅毒は、早期に発見し適切な治療を受ければ完治する病気です。しかし、放置すると心臓や脳に深刻な合併症を引き起こし、命に関わることもあります。また、妊娠中の女性が感染すると、お腹の赤ちゃんに感染し、重篤な障害や死産につながる先天梅毒のリスクがあります。この状況を食い止めるためには、私たち一人ひとりの意識改革と行動が不可欠です。性感染症予防の徹底: コンドームの正しい使用など、基本的な予防策を徹底しましょう。定期的な検査: 性的な活動がある方は、定期的に性感染症の検査を受けることが重要です。特に、パートナーが変わった時や、気になる症状がある場合は、すぐに検査を受けましょう。正しい知識の習得: 梅毒だけでなく、性感染症全般に関する正しい知識を身につけ、周囲の人々にも共有しましょう。「自分は大丈夫」という思い込みが、感染拡大を加速させている可能性があります。今こそ、私たち全員が梅毒に対する意識を高め、自らと大切な人を守るための行動を起こす時です。この現状について、あなたの周りの人と話してみませんか?