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カテゴリ:舞
歌舞伎座さよなら公演『五月大歌舞伎』
自分が観る夜の部は、4つの演目を上演する 近松門左衛門作の『恋湊博多諷』、清元の舞踊『夕立』、心温まる佳品『神田ばやし』、華麗な舞踊劇『鴛鴦襖恋睦』 途中何度かの休憩を挟みながら、終演まで5時間弱という、とてもボリュームのある構成となっている 人生初の歌舞伎鑑賞の作品は『恋湊博多諷(こいみなと はかたのひとふし』 毛剃九右衛門が持ち主である船に乗り合わせた小松屋宗七 ふとしたきっかけから、毛剃たちが密貿易の悪行を働いていることを感づいてしまった宗七は、口封じのために海に突き落とされてしまう ところは変わって、博多の郭 九死に一生を得た宗七は、恋仲の小女郎と再会を果たす 何としても宗七と一緒になりたい小女郎は、自分の馴染みの客に金策を頼むことにし、宗七とその馴染み客を引き合わせる ところがその馴染みの客という男の顔を見て、宗七は驚く その男とは、自分を海に突き落とした毛剃だったのだ… (公演チラシより引用抜粋) さてさて、肝心の舞台だが… ????? やはりセリフが独特の言葉なので、何を言っているのかさっぱり分からない 耳にすんなりと言葉は入ってくるのだが、それを現代風に訳す力を自分は持ち合わせていないのだ だからといって、作品から置いてけぼりを喰っているわけではない チラシや公演の粗筋を読んで、物語の内容はある程度頭に入っているし、近松門左衛門の作品はなかなか劇的な展開が繰り広げられて引き込まれるものがある だから、“こんなこと言ってるんだろうなぁ…”と、一人勝手に解釈 言葉が理解できなくとも、舞台を観ていれば、なんとなくは分かるものである あくまでも、なんとな~くね 名優でもある市川團十郎氏や坂田藤十郎氏が要所要所でキメると、客席から、 「成田屋!」 「山城屋!」 という掛け声が威勢よく飛ぶ それを聞いて、あぁ…歌舞伎っぽいなぁ…と、歌舞伎独特の空間に一人酔いしれる それと、歌舞伎の舞台は実に独特で、裏方さんが堂々と舞台上に登場するのが面白い 全身を黒い衣裳に身を包んだ黒子さんや、小道具を渡したり早替えなどをサポートする介添の人 歩く音やミエを切るときの効果音を出すための“ツケ打ち”と呼ばれる人など、歌舞伎役者だけではなく、様々な人たちが舞台を彩る 作品を楽しむと言うよりも、歌舞伎の雰囲気を楽しんだ だからこそか、退屈知らずで、あっと言う間に時間は過ぎていった 1つ目の演目が終わると、30分間の休憩 客席を見渡すと、皆弁当を広げているようなので、自分も広げることにした 劇場に入る前に、隣の弁当屋で買ってきたのは、ぎんざ日乃出の“あけぼの” 海老やサーモンといった小さな手まり寿司などが入った、可愛らしいお弁当である 食欲が旺盛ではない自分には、これぐらいの大きさが丁度いい 普段あまり口にしない煮物や山菜、鳥の照焼きなど、雰囲気に飲み込まれているせいか、美味しくいただいた 舞台観て、弁当食べて… なんかね、自分なりに歌舞伎鑑賞を満喫しています 清元の舞踊『夕立』は、申し訳ないがところどころで眠気を誘われてしまった 『神田ばやし』は、無くなったお金の騒動のなか、疑われた優男をめぐっての心温まる作品 市川海老蔵氏がのらりくらりとしたハッキリしない男を演じているのだが、勇ましいイメージを抱いている自分としては、少々物足りなさを感じてしまった 3つ目の演目が終わると、ここで25分間の休憩が入った さきほどの長い休憩のときは、お弁当を食べただけで終わってしまったので、この休憩時間を利用して、歌舞伎座を探索することにした 劇場内には、食堂はもちろんのこと、甘味処など、いくつかのお店が入っている また、お土産も充実していて、舞台写真や手拭いなどといった歌舞伎に関連したものから、櫛などの和装小物、菓子に煎餅、和菓子、地方の名産品など、色々なものが取り揃っている その数々のお土産目当てに、休憩時間ともなると、大勢の観客で賑わう そんななかに揉まれていると、劇場の中に居ることを忘れてしまいそうになる 劇場の壁には、歴代の名優たちの写真が飾られていたり、歴史的建造物を見て回るだけでも興味深いものがあるが、お店など色々と見所は沢山あって、あっと言う間に休憩時間は経ってしまった いやぁ…歌舞伎座って面白い! 大人たちが喜ぶ玉手箱って感じ 初めて来たけれど、この空間好きだなぁ さて、夜の部最後の演目は『鴛鴦襖恋睦(おしのふすま こいのむつごと)』 殺された鴛鴦が、その恨み重なる思いから化けて出る舞踊劇 市川海老蔵氏、尾上菊之助氏、尾上松緑氏の華も実力も備えた若手3人が演じる 長唄、常磐津と、独特のテンポのせいか、これまた、うつらうつらと眠気に誘われてしまう が、後半になって目が覚めた 着物から、鴛鴦の羽を描いたような鮮やかな衣裳への早替わり 舞台上で繰り広げられた、見事なまでのその華麗な技は実に見事だった こうして、初めての歌舞伎鑑賞は終わった 劇場を出たのは、21時過ぎ 正味5時間弱という時間ではあったが、まったくその長さを感じることは無かった 正直言って、歌舞伎の台詞は、何を言っているのかわからない 平坦な場面が続くと、眠くもなる やはり、何の知識も持っていないと歌舞伎は難しい しかしながら、決して退屈ではなかった 難しいし、眠くもなるのに、こんな感想を持つとは自分でも意外 きっと、見るものすべてが新鮮に映ったからだろう 初めて覗いた歌舞伎は、とっても興味深い世界だった 歌舞伎に惹かれたのか? いや、この歌舞伎座という空間に漂う独特の雰囲気に惹かれたのだろう 機会があったら、是非また、この歌舞伎座で歌舞伎を観てみたいと思った 歌舞伎座さよなら公演 『五月大歌舞伎』 5月2日(土)~26日(火)まで 夜の部 演目…恋湊博多諷/夕立/神田ばやし/鴛鴦襖恋睦 出演/市川團十郎/尾上菊五郎/坂田藤十郎/坂東三津五郎/市川海老蔵/尾上菊之助/尾上松緑 ほか お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年09月19日 09時45分36秒
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