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カテゴリ:舞
毎年8月に公演がある、五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』
今年も13日から16日までの4日間、横浜赤レンガ倉庫で公演が行われる 横浜のとある雑居ビルの7階エレベーターホール その廊下の一隅にいつからか住みついた一人の老女 彼女は「横浜ローザ」の名で知られた外国人専門の娼婦だ 昔こそ華やいだ暮らしを送っていたものの、今はやむなく雑居ビルのエレベーターガールとして、酔客の僅かなチップで飢えをしのぐ毎日だった 忍び寄る老いの孤独と死の恐怖、眠れぬ一夜 いたずらに救急車を呼んでは寂しさを紛らわせている そんな彼女が問わず語りに激白する涙と屈辱の人生は、そのまま日本の戦後史であった… (公演あらましより引用抜粋) 「横浜ローザ」という作品に出会ったのは、三年前の夏 うまく言葉では言い表すことのできない、とても激しい衝撃を受けた それからは、公演が行われる際は見るようにしている ところが、毎年の事なのだが、この時期は、自分は仕事がとても忙しい 去年はなんとか時間を無理矢理空けて都合をつけたのだが、今年はどうしても無理だった なので観劇は泣く泣く諦めていたのだが、急遽今日仕事がキャンセルになり、偶然にも自由の身となったので、横浜へと足を向けた 横浜は今年開港150周年を迎え、街では色々なイベントが催されている 今は夏休みということもあり、みなとみらいの地区は大勢の家族連れやカップルで賑わっていた 公演が行われる横浜赤レンガ倉庫は、大好きなスポットの1つ いつ訪れても、旅愁を誘う 今日は快晴 空を見上げれば青々とした空が広がっている 歩いていると、うっすらと汗が滲んでくるが、海から時折潮風が吹き、とても心地がいい 当日券があるかどうか分からなかったが、幸いにも桟敷席なら空いているとのことで、チケットを確保することができた 席は舞台正面の前から2列目! 中途半端な低さの席で、しかも背もたれがないのが辛いところだが、舞台を間近で観ることができるのなら、それも苦にならない 1996年の初演から、今年で14年目を迎えた「横浜ローザ」 自分としては、三年目三回目の観劇である 五大氏の代表作とも言うべき作品なだけに、終始気迫が籠もっていて、まぎれもなく横浜ローザとして舞台上で息づいている 戦争によって自分の人生を大きく狂わされた一人の女性 運命を呪いながらも、時代の流れに必死になってしがみつき、逞しく生きたその姿は、眩しいまでに輝きを放つ “生きる”ということの素晴らしさ、過酷さ、残酷さがストレートなまでに自分の心に突き刺さった 折りしも、観劇した今日8月15日は、終戦記念日 終戦から64年が経ち、今では戦争を知らない世代の方が多くなった そのことが幸なのか、不幸なのか 戦争を題材にした舞台を観終えたばかりのせいもあってか、青空の下でのんびりとした空気に包まれていると、なんだか居た堪れない思いでいっぱいになっていた 戦争の悲劇は語り継がれていくべきものなのか それとも忘れられるべきものなのか 平和色に染まった休日で賑わう人々とは相反して、なんともいえない苦々しい思いで横浜の街を去るのであった 五大路子ひとり芝居 『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』 横浜赤レンガ倉庫1号館 8月13日(木)~16日(日)まで お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年09月19日 09時59分32秒
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