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aituに乾杯

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2018.12.18
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カテゴリ:おもひでぽろぽろ

                                                                              
五・六年前
めずらしく風邪で寝込んだ年の暮れ
大掃除どころではなく
一日 ふとんの中で夢を見た
それがまた不思議な夢で「釜」の夢ばかり見た

田舎にいた子供の頃
学校から帰ると竈(かまど)の大きな釜に
カライモがたくさん蒸かしてあって
それを二つ三つ手に握り遊びに出るのが常だった
その釜はちょうど僕の目の高さくらいにあって
釜の中は覗けないけれど 蓋をずらし上から手を差し入れて取っていた

それから
村の神社のうす暗い境内に
気味の悪い地獄絵図がかかっていて
ウソをついた者の舌を抜くもの 血の池地獄 針の山
そしてたくさんの赤鬼が罪を犯した人間を
煮えくり返る大きな熱湯釜に放り込んでいた
その釜の中で悶え苦しむ人の顔を見ていたら しばらく
家の釜のカライモを食べたくなくなった そうでなくとも
何かに噛みつかれそうな気がして 釜の中に手を差し入れるのが怖くなった

そして
雨月物語にある吉備津(きびつ)の釜
今も岡山の吉備津神社に残っている鳴釜神事
神官の娘と農家の長男との結婚を鳴釜で占う
釜が鳴れば吉 鳴らなければ凶
その神事では釜は全く鳴らなかった それでも結婚は進められた
その末の恐ろしき結末は・・・
恨み 怒り 嫉妬といった感情が怨念に化ける時
 
この三つの釜の話が
ふとんの中でグルグルとなんべんも渦巻いて
夢か現実かわからなかった
すると
トントンと誰かがふとんの肩口をたたいた
ビクッとして目が覚めた

「おかゆさん作ったけど食べられる?」

妻だった

「ダイジョウブヨ」

僕の声は少ししわがれたオカマさんみたいな声になっていた
妻の顔が福の神に見えた
 





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最終更新日  2018.12.18 06:00:06
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